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アニメ映画『バブル』はデッカイ画面で鑑賞しても傑作ではなかった

記事タイトルで完結してるから本文読まなくてもいいやつ。f:id:Shachiku:20220514085219j:image【監督】荒木哲郎 【脚本】虚淵玄 大樹連司 佐藤直子

アニメ映画『バブル』は、4月28日よりNetflixで配信され、5月13日より劇場公開された。「劇場公開より配信が先」という珍しい商業展開。

僕は劇場公開まで我慢できずNetflixで見たのだが、期待していたほど面白くはなかった。

 

制作陣には荒木哲郎虚淵玄佐藤直子小畑健、WITSTUDIO、澤野弘之

そしてプロデューサーに、ヒットメーカー川村元気

ここまで揃った豪華な座組でこの微妙さ。

 

「崩壊寸前の東京で若者たちがパルクール」というコンセプトは分かる。ただ、なぜ主人公のヒビキたちがパルクールを選んだのか、イマイチ深掘りされない。

「なんでこの人たちは跳んでいるんだろう」という動機が薄くイマイチ物語に入り込めないのだ。

 なんか主人公チームの仲間をさらう敵チームがいるけど、なぜ大人は止めないの?試合は中止にならないの?聴覚過敏の主人公が仲間と打ち解けたからってヘッドホン外したらダメじゃね?

そもそも知的生命体だった泡たちは本編を通して何がしたかったのか。

僕が知りたい事は最後まで説明されないまま、ただただダイナミックなカメラワークによるパルクールアクションが描かれていく。ゲーム版だと「QTEがクソ!」と言われまくるようなアクションの連続である。

そもそも「重力は壊れた、好きに跳べ。」というキャッチコピーなのに意外とみんな重力に縛られた動きなのも結構ガッカリである。アニメの強みを使った無重力パルクールだと映画を見る前は思っていたので。

 

 

Netflixで見た時はイマイチに感じられた本作だが、映画館で観るとまた違った印象になるかもしれないとも思った。

映像美を売りにしている事は分かったのでデッカイ画面向き、すなわち映画館向けの作品だからだ。

 

デッカイ画面と腹に響く音、スマホから強制遮断され作品に集中できる環境。これこそが映画館の強み。例えストーリーが微妙でも映像が凄い作品だとアトラクション的に楽しむ事が出来るのだ!個人的には『マッドマックス怒りのデスロード』が大好きで劇場で5回ぐらい観たけど、家では1回しか見てない話と同じだと思っている。映像に飲まれる感覚が好きな作品がある。

逆にこの前公開された劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM』のようなテレビ版の総集編みたいな作品だと、内容は良くても映像はデッカイ画面で観るには情報量が少なくて物足りない事にもなる。

 

そしてアニメ映画『バブル』はデッカイ画面で見ると実際にどうだったか。

映画館効果増し増しで家の小さい画面で見るより1.5倍ぐらい面白さ*1だが、結局イマイチ物語に入り込めないのは同じなので、アクションの気持ちよさが半減している。「良い作品みた!!」という高揚には程遠い感じ。決して傑作ではない。『鹿の王』とか『ひるね姫』など製作陣は豪華だけど出来た作品は心に響かないって映画あるあるだと思う。

 

しかし、同時にネットのおもちゃにされるほどの駄作ではないと劇場で観て確信した。少なくとも『君は彼方』レベルではない。

パルクールアクション自体は見ていて楽しいし、10分に1度ぐらいの頻度で起きるキャラクターが少女漫画みたいなキャラデザになる現象もデカい画面だと面白さが凄い。

(C)2022「バブル」製作委員会

 

何よりもラスト、ヒロインのウタが四肢欠損した上で泡になって溶けていくんだけど、そこの力の入れよう。かなりニッチだと思うが、僕はかなり興奮した。それをデッカイ画面で観るとさらに興奮する。

 

 

バブルはなぜ失敗扱いされているのか

アニメ映画『バブル』は評判がすこぶる悪い。虚淵玄新海誠のマネさせていると叩かれている。

確かにパンフを読んでも

「今までのいわゆるアニメファンと言われるお客さんから、女性や子供たちを含む一般層に届けるにあたり、青春ラブストーリーをやろうと早くに川村元気たちと合意した」

荒木哲郎が言っているように

第2の君の名は。ネクス新海誠を狙ったのが明白過ぎてその安易さにガッカリとしてしまう。

そんな企画に虚淵玄呼ぶのも間違っているだろとも思う。

ただここまで酷評が流れているのは可哀想。オタクは数字が作品よりも大好きだから興行収入で苦戦している映画には容赦もないだろうし。

 

 

そもそも、なぜバブルをNetflixで先行配信にしたのか。これに尽きる。*2

『地球外少年少女』みたいにNetflixと劇場公開を同時公開にするけど、劇場は2週間だけの限定で、公開規模も少ないなら理解できる。基本的にNetflixで見てもらうけど一部のでっかいスクリーンで鑑賞したいオタクの需要にも応える商業展開。

スタッフの思い出映画公開、もしくは賞レースに参加するための映画公開レベルなら全然分かる。

 

ただ、『バブル』は公開規模300館越えの力の入れようである。

宣伝も力を入れているのでテレビや街角でよく見るのだが、大体は映画よりNetflixの宣伝なので、「Netflixでこういうのやるんだ~」と思ってもらえても劇場へと足を運んでもらえる宣伝なのか不明である。逆に配信作品だと思われてマイナスな気すらしてくる。映画配給のワーナーがNetflixに札束の殴り合いに負けた結果なのかもしれない。

本来はNetflixで先に見た人が「面白れぇ~」と絶賛し、それが拡散、気になった人でNetflixに入っていない人や、デッカイ画面で見たくなった人が劇場に足を運ぶ。そして映画館で観た人が細かな所などを一時停止しながら見直そうとNetflixで更に見る。そういうシナジーを狙ったのかもしれないが。そもそもそんなシナジーって本当に存在するのかて話である。

これは完全な偏見だが、月額料金が劇場チケット1枚分より安いNetflixの作品をわざわざ映画館で観る人、よほどの物好きしかいないと思う。そもそも同じ映画を何度も見る人なんて狂人ぐらいだろうし。

 

劇場でもNetflixの文字が最初流れたし、Netflixなしでは本作が制作されなかったと思うとNetflix様様だと思うが、そのNetflix様も会員数が減少しているというニュースも出ているし、いつまでNetflixの支援を受けてアニメ映画が作られるのか心配。

 

君の名は。』から生まれたオリジナルアニメ映画ブーム。『君の名は。』以降も様々なアニメ監督が青春ラブストーリーを作ってはコケて。人知れず爆死して。中々大ヒットも生まれない中『鬼滅の刃』のような原作をそのままアニメ映画にした作品が大ヒットしてしまうと、いよいよオリジナルアニメ映画ブームが終焉に向かいそうで辛い。僕は映画だけで完結してくれる作品が好きなんだ。

 

色々書いたが、本記事で言いたい事は1つだけ。

 

そろそろ大傑作アニメ作品作ってくれよ、Netflix

 

 

 

 

*1:当社比

*2:金のためは知ってる