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【ネタバレ】映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』感想。悟飯とピッコロさん、その関係

 鳥山明「悟空は子育てに興味がないんですよ、多分。父親としては完全に失格(笑)。働いてもいないですからね。悟空はただ強くなりたいだけで、他の本能はない感じなんですよ。だから興味のないことには本当に何の興味も示さない。きっと結婚も興味なかったんだと思います」

引用元『ドラゴンボールガイド 孫悟空伝説』

 

よく孫悟空は父親失格論が話題になる。

悟空は血の繋がった両親は生まれてすぐに死んでるし、育ての父も小さい時に失くしているので「両親」という役割を知らないのかもしれない。

そんな悟飯にとってもう一人の父親代わりになったのがピッコロさんである。

 

 

サイヤ人編において、まさに父親代わりのように、サバイバル術や戦士としての心構えを教えて、悟飯の成長をサポートしたピッコロさん。

 

悟飯に向けて放ったナッパの強烈なエネルギー波に対して自分の身を挺して守ったのは印象深いだろう。

(C)鳥山明ドラゴンボール』(集英社

 

これ以降、ピッコロさんが父親代わりとして、悟飯の成長を見守る存在になっていく。

 

特に興味深いのは、セル編における悟空の父性とピッコロさんの父性の対比。

(C)鳥山明ドラゴンボール』(集英社

バトルマニアである悟空は戦士としての戦いを要求するのに対して、ピッコロさんはまだ子供である悟飯の不安な気持ちを代弁する。

悟空もピッコロさんも、ベクトルは違えども悟飯をとても信用してるのは同じだが、悟飯の機微の感情まで読み取れないのが悟空らしいといえばそうだが。

 

鳥山明先生もパンフレットでこう言っている

悟飯は幼少期をピッコロと共に過ごし修行を受けてきた関係で、誰よりも強い絆で結ばれてきました。そしてビーデルやパンも、ピッコロは誰よりも頼りになり信頼の置ける家族の一員のように思っているのです。

 

そんな悟飯とピッコロさんの関係性を注目したのが本作『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』。

悟空を活躍させないとダメ!と言われ続けてきたシリーズだけど、原作者の鳥山明が「ドラゴンボールには他にも魅力的なキャラはいるし、これからも生まれる」と証明してくれたような作品でもあり、全編を通してピッコロさんが大活躍!ある意味悟飯より主人公しているそんな本作の感想をここからはネタバレありで書いていきたい。

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魔貫光殺砲は誰でも一度は練習する(断言)

  • ピッコロさんが「かめはめ波でもなんでもいい」と言い出した時点で、ピッコロさん由来の技を使うなとは予想していた。しかし、閃光の方だと思ってたらまさかの魔貫光殺砲である。ピッコロさんが「撃てたのか?」と聞いたら悟飯が「こっそり練習してました」って返した所、大好きである。言われてみれば悟飯はピッコロさん大好きなのに魔貫光殺砲練習しないわけない。僕ですら練習してんだから。しかも、弱点の一点を貫くのが目的ならかめはめ波より魔貫光殺砲のほうが適しているというエモさ以外の理由付けもしっかりしていて偉い。
    悟飯の魔貫光殺砲のとこ、ラディッツ戦の所とか思い出してピッコロさんは避けて!って焦ったけど無事でよかった。流石悟飯とピッコロさん。

 

  • ラストでピッコロさんが可愛らしいぬいぐるみが実は好きで愛でる描写あるのかなと思ってたのになかったの結構がっかりしたんだけどパンフで鳥山明先生がピッコロはパンからぬいぐるみを貰って気を使って喜んだところ、悟飯とビーデルに好きだと勘違いされたって言ってるんですね。本当にピッコロはぬいぐるみ自体は好きではなかった。パンが好きで無為に傷つけなくなかっただけだったという100点の解答。そして好きじゃなくても捨てずに家に律儀と置いてある健気さと悟飯一家との絆の象徴って感じで本当に良いよねってなる。

 

  • 本作の事実上の主人公であるピッコロさん、潜在能力解放前の時ですらガンマと戦ってかませになる前に的確に判断して倒された振りをして敵のアジトに潜入する機転の良さ。これこそが第7宇宙の知恵者。悟空とベジータがいないと分かると現状で何が最適か判断する力もある(悟空とベジータドラゴンボールで呼ぶ発想がなかった愛嬌もある

CMで事前に告知されていた潜在能力解放。

f:id:Shachiku:20220611162644j:image(C)バード・スタジオ/集英社 (C)「2022 ドラゴンボール超」製作委員会

あまりにも微妙過ぎる変化で戸惑っていたが、これは観客を油断させるための餌。本命である神龍によるオマケ変化のオレンジピッコロさんもあるし、巨大化も拾い初めて、宣伝広告のうまさと設定忘れることに定評がある鳥山明先生どうした!?という思い。鳥山明先生はキャラクターの中で一番ピッコロさんが好きだと言っていたが、本当だと確信。

 

 

今回、ピッコロさんの口から悟空という言葉はあっても悟飯からはなかったのが印象深い。パンが誘拐されても、セルが登場しても、お父さんの力を借りましょうという言葉はなかった。自分たちで何とかしなければならないという親離れ。そんな中でピッコロさんは実際の親ではない。それでも悟飯一家とは家族のような関係性なので甘えたり、頼ったりすることも多々ある。ピッコロがボロボロになるとブチ切れて覚醒する(悟空がボロボロにされても「お父さんなら大丈夫」と別の信頼感からあそこまでブチ切れないと思う。これは悟空から悟飯も同じ

親子ではないけど家族の一員。そんな悟飯とピッコロさんの関係性って珍しいし、本当に良いよねってなる。

 

その他

  • スーパーヒーローというタイトル。スーパーヒーローということはグレートサイヤマン絡めて悟飯が地球救う話になりそうと思っていたし、実際に娘を救う悟飯はスーパーヒーローだが、同時にガンマ2号のことでもあった。あいつ滅茶苦茶好きなので死んで悲しい、正直1号よりかなりキャラクター性あったよね……
  • ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』タイトルでスーパーが被っている件、何か凄く深い意味があるのかと思ったら、パンフレで鳥山明先生がタイトルにスーパーが含まれているのを忘れてたので、スーパー被りになったと言ってて笑った。誰か止めろ。
  • 悟飯がキャッチ下手なの、ポタラキャッチミスを思い出して笑う。ドラゴンボールで近視直した方がいい
  • 予告でセルを大体的に宣伝しないの正解だった。セル目的に映画館行った人がバイオブロリー*1したセルみて切れそうである。たしか鳥山明先生はセルは第二形態が一番好きだとコメントしてたので好きなように作らせてもらったんだなと思う。個人的なことをいえば、完全体のデザインがカッコイイと思ってるのだが、ゲームとかで登場しそう。あと、声優の若本則夫さんのブルワァァァァ問題の解決にもなったなと思う。
  • 正直、冒頭の車の中で長々と会話するパートで大丈夫かこの映画となったけど、杞憂だった。
  • 何年も修行している悟空たちに覚醒するだけで追いつき、追い抜く悟飯。才能って恐ろしい
  • レッドリボン軍、ボスたち以外は良い人ばかりだったけど、多分結構な人数死んでるよね。コメディありで温かいけどどこかドライな世界がドラゴンボールだなと思う
  • カプセルコーポレーションは悪の企業。悪の宇宙人を飼って世界征服を企んでる。ホイポイカプセルを代表する超技術、宇宙人の技術を取り込んだと考えるしか説明できんと言われてたけど、あながち嘘でもない。今回で更に天才科学者までスカウト成功したし。あながち間違えじゃないんだよなあ

 

最後に

初報があった時は3DCGを使ったビジュアルに「大丈夫か」という不安しかなかった本作。原作が鳥山明先生なのも「大丈夫か」という不安もあった。

しかし、CG臭い違和感が一切ないままドラゴンボールのアニメとして動くバトルが本当に良かったので、日本の3DCGも驚くし、運転が下手なピッコロさんというアニメ要素まで引っ張ってくる鳥山明先生の脚本にも驚く。前作の『ブロリー』とはまた違ったZ時代のアニメ映画の進化版のような本作も凄い傑作だった。

 

最後に一言

今回、悟天とトランクスによる失敗したフュージョンと、EDでの再フュージョンの姿を見せなかったのは次回作の布石だと思うので、ゴテンクスとブゥ(悪)が次のメインになりそうな気もするが僕はここでクリリン&18号が主人公にかけるぜ!!!!!

 

 

 

 

*1:悟天、トランクス、18号、クリリンが戦闘に参加、悟空が蚊帳の外なのもバイオブロリーのリメイクっぽい要素