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『ホグワーツ・レガシー』感想レビュー。このゲームで一番尋常じゃないのは主人公だと思います!

出るか……!転入生考案の……
敵1人を樽爆弾に変身させて投げつけ集団殺戮!!
呪い撒きインペリオからの拡散アバダケダブラで周囲一帯を即死コンボ!!!!!

敵は死ぬ。そこに慈悲はない……。

 

 

『ホグワーツ・レガシー』は、「ハリー・ポッター」シリーズでお馴染みのホグワーツ魔法魔術学校を中心に、禁じられた森やホグズミードなど周辺地域をオープンワールドで冒険するアクションRPG。

本作の特徴は、映画・小説版「ハリー・ポッター」とは異なり、1800年代のホグワーツを舞台としている点だ。とはいっても、アバダケダブラはこの時点ですでに違法だし、箒で空は飛べるし、ホグワーツの施設は映画や小説でワクワクしたあのままである。

 

↑スリザリンは嫌だ……スリザリンは嫌だ……がネットのノリだが、トロフィーを見ればスリザリンが一番人気である。ネット民とスリザリンの親和性の高さ。

 

本作は言ってしまえばハリーとかが出てこないキャラゲーである。日本人はキャラゲー=クソゲーという刷り込み教育を幼少期にバンナムから受けているが、安心して欲しい。本作はキャラゲーとしてもオープンワールドのゲームとしても良く出来ている。

発売前から原作者J・K・ローリングの言動で活動家が購入のボイコットを呼び掛けたり、色々な意味で話題騒然だった本作だが、メタスコアが90点前後だったりと評判も良く、売り上げも発売2週間で出荷1200万本を超えたらしい。

実際に遊んでみると評判が良い理由も分かる。J・K・ローリングが創造し、僕らが何度も何度も妄想したホグワーツを脅威の作り込みで再現していて、そこに天才的な魔法ポテンシャルと極まった戦闘センス、いつでもどの猫でも撫でることが出来る技を持ち、その実力から周囲の尊敬を集める出自不明、異例となる5年生からの転入生である主人公が練り歩くゲームになっていて滅茶苦茶面白い。こういうキャラゲーを待っていた。

 

 

本作の特徴は作りこまれたホグワーツ、圧倒的ビジュアル、「長距離のフェンシング」の戦闘、そして何よりも主人公のヤバさである。ここでは分かりやすく主人公をレベリオ=サンと呼ぶことにする。

本作ではゲーム性の面白さを優先してレベリオ=サンの倫理観が滅茶苦茶になっている。普通なら「これやるとゲームは面白くなるけど、レベリオ=サンがヤバい奴になるよなぁ」と天秤にかける所を「ゲームの面白さ!!!」だけ選んでいくような感じである。一応バランス取ろうとしてそんな倫理観バグってるレベリオ=サンに対して苦言を呈するNPCがそこら辺を歩いている。バランス取れているか……?

ホグワーツとは思えない程、スリザリン生とは思えない程、皆の仲が良くて民度が良い環境の中でレベリオ=サンだけが異質なので余計目立つ。遊べば遊ぶほど、このレベリオ=サンヤバくね……!?となる。

選択肢でよりレベリオ=サンをヤバい奴にさせる事が出来るのでプレイヤーも同罪なのである。

ここからはそんなレベリオ=サンを中心に本作の感想を具体的に書いていきたい。

 

 

友人のセバスチャンを堕とす

 

本作ではメインクエスト以外に人間関係クエストが存在する。キャラはスリザリンのセバスチャン、グリフィンドールのナティ、ハッフルパフのポピーの3人。それぞれ固有のストーリーがあり、メインクエストと連動しながら物語が進んでいく。レイブンクローはなぜかない。一応アミットというイケメンは登場するが……。

 

その中で特筆すべきはセバスチャン・サロウだろう。スリザリン生なので邪悪で偏見と差別の掃き溜めのような性格かと思いきや、皮肉屋ながら友達のために自己犠牲をいとわない精神と家族想いの最高の友。彼の存在によってプレイヤーが持つスリザリンへの偏見が消えていく。

生徒は立ち入り禁止の「禁書の棚」にレベリオ=サンと共に忍び込んだ後、先生にそれがバレた時にまだ会ったばかりのレベリオ=サンを身を張って逃す。捕まって「共犯者はどこ!?」と問い詰められると「僕一人です。他に誰もいません」とレベリオ=サンを庇ったシーンで多くのプレイヤーの心を掴んだだろう。

 

セバスチャンには妹のアンがいる。しかし彼女は敵に呪いを受けている。呪いの後遺症で彼女を絶え間なく苦しでおり、セバスチャンは妹をなんとか治療させたいと想い、その過程で闇の魔術こそ希望であると考えるようになった。それ故にレベリオ=サンと行動することになる。

ここで問題なのがレベリオ=サンが悪気なく善意に邪悪だということだ。

セバスチャンが妹のアンを救うため闇の魔術を求めることに伯父や親友のオミニスは危険だから止めてもレベリオ=サンだけは「キミは悪くないよ仕方ないよ」と肯定する。本当に心配する者とは距離を取り、甘い言葉に唆されてレベリオ=サンに依存していくセバスチャン‥。

 

HなASMR聞いていて、設定が主人公とハグリッド(隠語)なことすると授業と単位が貰えるという嘘を信じた女の子が主人公とハグリッドしながら「これで単位貰えるんだよね……ありがとう」と言っているのを聞いた時のような罪悪感がある。

 

セバスチャンの手伝いしつつ後押ししてセバスチャンからインペリオやアバダケダブラの闇の魔術教えてもらいながら要所要所でセバスチャンをいさめて周囲には「私は闇の魔術には反対なんですがセバスチャンの気持ちも分かるんですよ……でも頑張ってセバスチャンは抑えます……」ってスタンスのレベリオ=サンが1番凄い男である。

最終的にセバスチャンはどうなるのか。どこまで堕ちるのか。それは是非プレイして自分の目で見て欲しい。というか全体通してセバスチャンルートだけやたら出来が良い。次回作あるならこのルート書いた人がメインもやって欲しい。

 

↑ポピーも性格はヤバ目だが、最終的にレベリオ=サンと良い関係になるので好き

 

 

密猟者、そして狂戦士レベリオ=サン

本作の序盤は兎に角、お金が足りない。

授業やクエストを進めるのに必要な植物やアイテムを購入するのに金が必要なのにそこらへんで拾える金は微々たるもの。

その結果、サブクエストをクリアした後に依頼品持ち逃げしようとしたり、「これが欲しければ金を寄こせ」とせびったり、「頑張って働いたのだからお駄賃くれるのは当然ですよね?」とNPCの好感度とプレイヤーの良心を引き換えに金を稼いだりする。または手に入れた装備を売ったりする。

しかし、本作の金策で一番効率良いのは魔法動物を捕まえて売ることである。中盤で解禁されるニュートン・スキャマンダーのように魔法動物を「保護」する要素なのだが、レベリオ=サンはニュートン・スキャマンダーではないので捕まえた魔法動物を正規の店で売ることが出来ちゃうのだ。

 

 

密猟者から「保護」するという名目で魔法生物を片っ端から捕まえてそれを売ってお金に換えるのである。

檻に囚われたやつを捕まえて売るのはまだ分かるけと、野生の魔法動物許可なく捕まえて片っ端から売る人は、俗に言う密猟者では???と僕のようなマグルは思ってしまうけども、どうせ密猟者に捕まるなら先に「保護」しておけの精神である。

なぁ、密猟者を皆殺しにし、保護した動物を売っぱらって懐を温め、他人のを勝手に飲むバタービールは美味いか?

 

 

金を稼ぐためにレベリオ=サンは24時間中休みなく飛び回って密猟者やゴブリンを殺しまくる狂戦士なのはゲームなので仕方ないが、100人以上の密猟者を殺しても、感想が「密猟者が減ってよかった」と素朴な感想を持ち続けるレベリオ=サンが怖い……。

そうかと思うとゴブリン殺した後に急に「間違いに気づくのが遅すぎたんだよ!」って強めに言ってて怖っ!となる。完全に感情がおかしくなっている。

 

 

レベリオ=サンはまさに狂戦士という呼び方が相応しい精神と強さである。

後半になるとクルーシオやアバダケダブラなど使えるようになるので完全に無法。

原作小説5巻「不死鳥の騎士団」でハリーがベラトリックス・レストレンジに対してクルーシオを使用しているが効果は十分に発揮できなかった。なぜならこの呪文は相手を苦しめることを楽しむぐらいでないと真価は発揮されず、ハリーにはそれがなかったからとされている。すると、本作でクルーシオを唱えまくって呪いを振りまくるレベリオ=サンは、かなりの愉悦者といえる。

また、明確に相手に本気の殺意を抱かないと発動しないアバダケダブラを何の躊躇も無しに撃つレベリオ=サンがヴァルデモート級なのは理解してもらえると思う。正義のためなら何をしても良いと思ってるよこの子……。

 

レベリオ=サンが凄いのは魔法だけではない、身体能力もずば抜けている。魔法使いは体力勝負。当たり前の常識である。

まず、最終的にエルデの王を超えるローリング機能。魔法使いとは思えない程に前転回避する。流石、原作者の名前を冠した防御方法、弱いわけがない。

そしてジャンプ力も凄く、ダンジョンでプレイヤーが「あの崖まで飛び越えられる訳ない、別の道探そう…」と探しても別の道がない時、大体飛び越えていける。たまに「なんでその出っ張り超えれないの!?」と思うこともあるがゲームの制約である。

そして泳ぐ能力も凄い。重そうな服着たまま泳ぐのは当然で、潜水までしてしまう。潜水して海底に落ちてる装備品まで軽々しく持ち上げてきた時は何のゲームしているのか分からなくなってしまった。

こんなにも強いのにの時々戦闘中にルーモス唱えて殴られて死にかけてる可愛い所もあるレベリオ=サン。

 

 

それにしても、少し茂みに踏み入ったら闇の駄犬か蜘蛛か密猟者がいるこの時代のホグワーツの治安はクズ底だし、ハリーの時代に禁じられた森に密猟者がいない理由はハグリットがグロウプを放ったのが6割だけど4割はレベリオ=サンの影響だと思う。しかし、そんなレベリオ=サンの名前が後世に残っていないのヤバすぎて完全に歴史から消されている……。

 

 

結論、レベリオ=サンとは何者なのか

5年生になるのにほとんど呪文覚えてなくてお恥ずかしい
ちょっと呪文見せてくれませんか?
出来ました。ありがとうございます

のスピード感で呪文を覚えていくの周囲からしたらコワ過ぎる。

 

僕はレベリオ=サンがホグワーツの実際の生徒ではない可能性を考える。レベリオ=サンは明らかに魔法省の祓魔師で、ホグワーツで勃発したゴブリンの反乱に対処するために潜入してきたのだ。

そう考えれば、見かけは若い学生であるレベリオ=サンが、本来なら出席すべき授業をほっぽり出して、何百人もの人間を楽しそうに殺しているのも、納得がいく話である。彼は頑なに自分の出自のことを語ろうとしないのも怪しい。

そして任務が終わり、彼は自分の痕跡を全部消して再び魔法省の暗部に帰っていったのだ……。

 

↑下手な魔法より強い噛み噛み白菜を完全に使いこなす所もヤバい。強さランキングがあるとするとSS 噛み噛み白菜 S レベリオ=サン C密猟者などそれ以外の魔法使いって感じである。


 

 

ホグワーツ・レガシーのゲームとしての良さと次回作に期待すること

 

ホグワーツ自体が非常にリアルに感じられ、外から見えるものと内部で探索できるものが一致しているように感じられる。こうした細部の作り込みは見事で、ホグワーツの探索は楽しい。ただ70時間ぐらい遊んでも結局はホグワーツ全体の構造を覚えきることが出来なかった。僕が理解出来たのはホグワーツには階段がやたら多いということ。このゲームほど、ホグワーツの階段の多さを実感できるものはない。みんなも実感して欲しい。僕はゲロゲロに酔った。

 

 

呪文学とか防衛術とかに比べて占い学とか数占いは教室が見つけにくいわ行くの面倒だわでそりゃハリーも文句言うわな…ってなるので本作を遊ぶことで原作に対する解像度も滅茶苦茶上がるだろう。

 

↑日刊予言者新聞など本筋とは関係ない所もやたらこだわっていてビビる

 

 

本作はキャラゲーとして滅茶苦茶素晴らしいが、次回作に向けて言いたいこともある。

 

物語が進むにつれ、ホグワーツ城にいる理由がなくなり、ホグワーツの生徒として1年を過ごしたいという願望が満たされなってくる。授業はほとんど意味がなく、他の生徒との交流も最低限。

折角ここまでのホグツワーツを作り上げたのなら、ハウスカップを争奪したい、授業で学ぶか、探索で学ぶかのジレンマに立ち向かいたい。友達を作ったり、敵を作ったり、どの先生と仲良くなるかを選択をしたい。ホグツワーツ生としてもっとシミュレーションゲームみたいになっても良いなと思う。

 

↑先生もみな魅力的なのにあまり交流なかったの勿体ないな~~と思う。

 

あと、本作はやたらとパズルをさせられるけど*1、一部のパズルが難しくてビビる。

 

持てる装備は初期だと20と少ないし、拡張できるマーリンの試練は数が本当に多くて面倒なのだが、装備の見た目は記憶されいつでも見た目だけ変えることが出来るFF14でいう所のミラプリ形式なのも本当にありがたい。ゲーム全部この仕様になって欲しい。

 

↑ダークソウルみたいな雰囲気でも遊べる

 

あとはまぁ、フォトモードだけ本当にお願いします!!!!

 

 

最後に

オープンワールドゲームなのに発売直後でもバグが少ないのも本作の凄い所だろう。

たまに話しかけるべきNPCが消えたり、NPCが突然に空高く飛んで行ったり、メニュー画面で決定ボタンが押せなかったり、屋敷しもべ妖精がこぼすお菓子の量が尋常じゃないレベルだったりするのだが、これは魔法である。間違いない。

 

 

いくつかの不満点などあったしても、本作の楽しさ、満足度は非常に高い。本作は別に最先端のオープンワールドのゲームではないのかもしれない。しかし、「ハリーポッター」の世界をオープンワールドゲームに落とし込もうと試行錯誤の上での最高のハリーポッター」のゲームになったことは間違いない。他のキャラゲーも参考にして欲しい。

 

例えばワンピースも何回もアラバスタ編を再現するんじゃなくて、原作が完結した後で良いのであの世界を自由に航海するゲームもいつか作って欲しい。ボムボムの実で街を襲いながら海軍に賄賂渡したいものである。

頑張れバンナム!!!!

 

 

 

 

 

*1:難易度ストーリーにすると飛ばせる