関西圏に住んでいる私は東京都練馬区にある遊園地「としまえん」に馴染みが全くない。
私が印象に残っている「としまえん」とは『水曜日のダウンタウン』の人気企画「真・モンスターハウス」でモンスターこと安田大サーカスのクロちゃんが檻に入れられ、22時間にわたり来場者に一般公開される罰ゲームの舞台になったことだ。
多数の人がクロちゃん目当てに「としまえん」に詰めかけてパニック状態になり、周辺での渋滞や騒音で110番通報が相次ぎ、警察官が現地に出動するという事態に発展して罰ゲームが中止になり「モンスターより人が怖い」という事を教えてくれた印象しかない。
そして今回そんな「としまえん」を舞台にしたホラー映画を観たので感想を書いていきたい。ネタバレあるので注意して欲しい。
2019年公開 【監督・脚本】高橋浩 【出演】北原里英、小島藤子、浅川梨奈、松田るか、さいとうなり、小宮有紗、國島直希、鈴木聖奈、沖田×華、吉川美結、三嶋悠莉、河瀬祐未、YOUNG DAIS、中山峻、中島ひろ子、竹中直人
あらすじ
東京都の老舗遊園地「としまえん」で囁かれる都市伝説を、としまえん全面協力のもと映画化したサスペンスホラー。大学生の早希(北原里英)は、高校時代に仲の良かった友人、杏樹(小島藤子)・千秋(浅川梨奈)・亜美(松田るか)・かや(さいとうなり)たちと一緒に、かつてよく遊びに行ったとしまえんを訪れる。ネットで噂になっていた「としまえんの呪い」があるという古い洋館を見つけた早希たちは、軽い気持ちで噂を試すが、その直後から恐ろしい現象に次々と襲われ、メンバーが1人また1人と姿を消していく。友人たちを必死に捜すうち、早希は呪いの誕生にまつわる恐ろしい秘密にたどり着く。
<としまえんの呪い>
- 古い洋館の扉を叩くな
- お化け屋敷で返事をするな
- ミラーハウスの秘密の鏡を覗くな
それを破るとどこかに連れていかれる。
呪われるハードルが結構低いけど、よく利用する練馬区民の方々には常識みたいなので普段からうまく回避しているのだろう。流石都会指数殆どZ組。
残念ながら「としまえん」は今年の8月末から段階的に閉園して跡地に人気映画「ハリー・ポッター」のテーマパークが建つらしい。この場合、呪いはどうなるんだろうか。
呪いという存在は土地に根付く風習もあるからテーマパーク自体が潰れた後も残るかもしれない。そうなると新しくできる「ハリー・ポッター」のテーマパークにそのまま便乗する可能性も十分考えられる。
- スリザリン寮の扉を叩くな
- 屋敷しもべ妖精の忠告に返事をするな
- みぞの鏡を覗くな
のように都市伝説は受け継がれていくのだろうか。
怖くはない
本作はニコ生演出からスタートする。
最近のホラー映画、冒頭で犠牲者になる人のニコ生主とyoutuber率がやたら高い気がする。
製作陣もこいつらなら危険な場所に行かせやすいし、気軽に殺せるとか思ってそう。
(C)2019 東映ビデオ
YOUNG DAISさんがこのシーンで出ているのも無駄に豪華で良い。ただ、冒頭の犠牲者の中に女性がいたせいで、本編で出てくる主人公の幼馴染で行方不明になってしまったという女性がこの冒頭の女の子なのかなと無駄なミスリードを食らい、全然関係ない事が判明し、全然関係ないんかい!ってなってしまう。
そして残念ながら本作はホラーとして見たらまったく怖くない。映像があまりにもチープ過ぎる。それ故にホラーではなく「復讐モノ」と認識してもらった方が良いのかもしれない。
今回の怨霊は高校時代に陰キャで疎まれていた小林由香(小宮有紗)であり、主人公グループから「としまえんの呪いを試せ」と言われ、実際に試し、呪われてしまった事への復讐が物語の大筋なのだ。
(C)2019 東映ビデオ
主人公グループはどいつもこいつも性格が悪く、頭が悪いので死んでも全く可哀想だとは思わないし(いい感じに仲間同士で言い争いになったり、裏切ったり、ビンタして仲間割れが起こり観客に負の感情を与えてくれる)その結果、「由香頑張れ!そこだ!呪え!ざまぁぁぁぁぁ」って気持ちになる。
今までの「ホラーもの」って基本的には理不尽で、なぜビデオを見たり、他人の敷地に少し入ったぐらいで殺されなければならないのかと憤りを感じてしまう事がある。
あまりにも幽霊側の一方的な八つ当たりであり、その自己中心的発想にイライラしてしまう事があるが、本作では完全に因果応報なので全くそんな事はない。
ノーストレス、ノーホラー
が本作の特徴だ。
終始、主人公の早希だけは良い奴のように見える。
だが実は由香失踪の最後の引き金を引いたのは他でもない幼馴染の早希だった事が判明して、呪われて終わるも良い。
ただ、1926年からの歴史がある老舗遊園地なんだから
なぜ「としまえん」に呪いが存在するのか?
という説明が全くなかったのが勿体ない。
「としまえん」が閉園する前に『犬鳴村』のスタッフでもう一度映画撮って欲しい。
百合映画でもある
本作の主人公である早希と、怨霊になった由香は幼馴染でずっと仲が良かったが、2人は成長していく内に「みんなに好かれたい早希」と「早希だけいればいい由香」という決して交わらない考えを持つようになってしまう。
この「早希だけいればいい」という感情がクソ重たく、早希が自分以外の子と仲良くるのが段々我慢できないようになっていき、どうにかこっちだけを見てもらおうと「幼い頃、二人で『としまえん』で遊んだ写真」を早希にプレゼントする。
そんなプレゼント、怖ってなる。
早希も「なんだこのプレゼント」みたいな顔をする。当たり前だ。結局、由香はプレゼント作戦が失敗し、自暴自棄になり「としまえん」の呪いを試してしまう。
そして怨霊になった由香は早希を呪い、2人は誰の邪魔も入らない「秘密の場所」に行くのであった。
お化けよりその一方的な感情の方が怖い。
最後に
この映画を観ると「としまえん」にあるメリーゴーランドが110年前のドイツで作られ、そこからアメリカへ行き、1971年に日本に来たこと。2010年には機械遺産に選ばれた事など、「としまえん」の豆知識を得る事は出来るが、問題はこの映画を観ても「としまえん」に行きたいと思わない所だろう。
また、この映画の1番怖いポイントは怪奇現象ではなく、結構序盤に出てくる竹中直人の顔芸である。
本当にこれはインパクトがあって、後の心霊要素が全て霞んでしまったのは問題があると思う。
しかも、竹中直人の存在が別に怨霊という訳でもなく、ただ愛想が悪い「としまえん」のスタッフであり、本編に全く関係ないのもズルい。見終わった後に竹中直人は一体何だったんだとなる。
「としまえん」はいつでも僕らに「モンスターより人が怖い」という事を教えてくれる。