社会の独房から

映画やゲーム、漫画など。

犬を飼う。そんな・・・

犬さんと同じゲージに入って寝食を共にしたい。

生後2か月の時に買ったゲージだから成犬になった今では広いとは言えない空間なんだけど、そこに僕もお邪魔してギュとした所に2人抱きついて寝たい。

 

犬種は柴犬。飼い始めて5年になる。名はbusy(ビジー)「名前は「忙しい」なのに全然動かないな!ビジー!!」ってなるのが面白くて好きな名前だが、ビジーって音の響きがあまり良くないし発音も活舌の悪い僕としては難しくうまく言えないので、呼ばれてもビジーは「?」ってリアクションをいつもとる。お前を呼んでいるのだぞ。

 

 

夜のルーティンはこうだ。20時ぐらいに仕事を終え帰宅すると留守番していたビジーを一通りわしゃわしゃする。その後、食器に高級な肉を乗せて食べて頂き、僕は隣で肉を豪快に食べる柴犬の咀嚼音ASMRを堪能しながらどん兵衛を食う。その後は散歩だ。

ビジーは僕の事は大好きだが、子犬という大事な時に1匹だけの留守番をよくさせていたので、社会性が低い。学校でも誰とも喋らず青春を引きこもりで過ごした僕が社会にうまく出れないのと同じである。だから他人が近づくとよく吠える。この点に関してはビジーに本当に申し訳ないことをした。ごめん。たまに女子高生が「可愛い~~」と近づくか「woof woof 」と吠えて威嚇する。犬を飼うと女子と会話する機会が増えるというが残念ながら僕の場合は増えてない。ただ悪いことばかりじゃなくて、犬飼ってる人って「飼い主同士でもっとつながりたい」欲が強いのか「あら~~~柴犬飼ってるの。大変でしょ~~私も3匹飼っててね。それはもう大変で…」みたいな世間話攻撃を出会い頭に仕掛けてくるおばちゃんとかもビジーの煩い吠え声に去って行くので人付き合いが楽だ。

1時間ほど散歩した後、家に入る前にビジーの脚を拭く。そこからワチャワチャタイム。ぬいぐるみを持った僕をビジーが全力で追いかけてくる、ワンルームの狭い部屋を縦横無尽に走り回る。疲れた後はゲージに一緒に入って何もしないのに何故か懐かれて一緒にごろごろして、寝っ転がってると上に乗ってきて顎を胸板に乗せて撫でろコールしてきたり、そして共に寝る。そんな一日。宝石の日々。如何でしたか、ビジーと僕の夜は。全部妄想である。

 

 

犬を飼ったことがない。親は動物が苦手な人達だったし、1人暮らしした後もペット可な環境ではなかったしそもそも犬を飼いたい欲もなかった。でも、4月から東京に引っ越して。正直な話、寂しい。かなり寂しい。家庭を持ちたがる人の気持ちもよく分かった。そんな時、あるワンちゃん動画を見て心を掴まされた。か……可愛い。

そこからはもうワンちゃん動画を見まくりである。桜木花道が1週間2万本シュートの練習と同じ勢いでワンちゃん動画見まくりである。

ただ、1人暮らしでワンちゃん買うのはやはりワンちゃんも可哀想な気がしてしまい中々気が引ける。そもそも寂しいという理由でワンちゃん飼っても良いのだろうか。

 

ならば妄想である。人は無限の夢を描くことが出来る。

だから、今日も妄想する。ビジーと楽しく遊ぶ。でも初めの犬飼いだし、今まで犬と触れてこなかったし、そもそも子供の頃柴犬に追いかけられたり噛まれそうになったり泣かされた記憶しかないので、慣れるまで触れる気がしない。スキンシップ不足。指示するのも苦手なので何かあっても「ビジーちゃん♥だめよ~~~~~ん」と全然ダメじゃない声色で指令を出しているフリしかできない。主人から恐れられていると感じ取ったビジーは段々と僕を格下だとなめるように。ビジーによる恐怖政治。

朝はどとうのひつじのような甘噛み攻撃で起こされ、「10万あげるから許して」と寝起きから首を垂れる僕。安い肉を買うと思いっきり吠えられて泣く僕。遊んで欲しいとぬいぐるみを僕に思いっきり投げつけてくる。いつの間にか僕はゲージの中で寝るのにビジーは5万のマットレスで寝るように。僕は勝手に動く玩具、ビジーに尽くせ。

僕はゲージの中で哀しくて泣く泣く。ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛

 

 

そんな生活をして15年。

僕もしっかり従順になりビジーに今日も高級な肉を届けながら自分はモヤシ炒めを食ってゲージの中で大人しく生きる。ただ、最近ビジーの調子が悪い。獣医にみてもらっても「歳だからねぇ。覚悟をしていてください」と阿呆みたいな高いお金払って気休めのような薬しかもらえない。

日に日に弱っていくビジーを見て僕は心をかきむしられる。

 

ある日、僕はいつものようにビジーの目の前でバナナの被り物をしてバナナダンスをしていた。いつもなら「ruff ruff 」と喜ぶビジーだがその日は目を瞑って膠着したまま動かない。イヤな予感がした僕はバナナの恰好のまますぐにビジーに駆け寄る。

い、息をしていない……。

そ……そんな……

「名前は「忙しい」なのに全然動かないな!ビジー!!」

 

妄想を終えて目を開けた時、僕の瞳から一筋の涙がこぼれました。

おわり。