社会の独房から

映画やゲーム、漫画など。

FF15イズムなロードムービー『バースデー ワンダーランド』感想

アベンジャーズエンドゲーム』と公開日が被ってしまったため、恐ろしく空気なアニメ映画『バースデー ワンダーランド』

監督は『クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲』や『河童のクゥと夏休み』などの色々な作品を世に送り出してきた原恵一監督。キャラクターやビジュアルなどのデザインを担当したロシア出身の新進気鋭イラストレーター、イリヤ・クブシノブさん。

そして原作は柏葉幸子さんの名作児童文学「地下室からのふしぎな旅」

 

正直、親の顔より見たありきたりなストーリーと眠気を誘う丁寧で遅い展開。独特な間とリアルすぎて逆に不気味な身体の動き、小学生にはまるで聞こえない松岡茉優さんの声など問題点も大変多いのですが、一瞬の感動もあって愛すべき作品だと思います。

感想書いていきます。

バースデー・ワンダーランド オリジナル・サウンドトラック

 

あらすじ

ある日、アカネは学校で友人が仲間外れにされているのを見て見ぬふりして傷つけてしまう。

そんな自分への罪悪感で一杯になってしまった彼女は、誕生日の前日に学校を仮病で休みました。

すると、アカネの母は彼女に友人で雑貨屋を営んでいるチィの家を訪れて、予約しておいた誕生日プレゼントを受け取ってきてほしいとお使いを頼む。

そこでアカネは謎の大錬金術であるヒポクラテス(あだ名は無能ヒゲ)とその弟子の小人のピポに出会う。彼らアカネに「色が失われつつある私たちの世界を救って欲しい」とお願いし、ほとんど強制的にアカネを連れて行く(チィは勝手について行く)

その世界でアカネはスペシャルでワンダーな誕生日に感動な冒険が始まる。

 

美しい風景を見ながらのロードムービー

あらすじで世界を救って欲しい的な発言はあったもののそんなスケールのある物語では全然なくて、正直、なんでアカネが選ばれたのか最後まで謎ですし(あのくらいの歳の女の子なら誰でも良さそうだし、恐らく母親も昔選ばれているので、血が一番の要因かもしれなない)、そもそもアカネの役割自体が地味過ぎるのも問題で、異性界が舞台なのに派手なシーンが本当に少なく、そういう世界を救う事に興味があってこの映画を観てもあまり満足する結果にはならないかもしれない。この作品の最大の見所は車で旅する中で目にするあまりにも美しい風景です。

特に

  • 夜の砂漠で星空を眺めるシーン
  • 王子が雫斬りを行うシーン

の二つがあげられると思います。

まず、砂漠で星空を眺めるシーンは定番中の定番なんですが、あのシーンって小学生で小学校の世界が全てであるアカネが世界の広さを知る重要なシーンでもあったと思うんです。世界には自分の知らない美しいモノに溢れていると気付くシーンです。

また、miletさんの楽曲「wonderland」をバックに行われる雫斬りのシーンは本当にその映像美を含めて最高で、この映画はこのシーンの為にあったと言っても過言ではないです。ただ一言、美しいです。

車で世界を楽しむ所などFF15イズムが随時にあると思いますのでFF15楽しめた人は楽しめる作品かと思います。

 

前のめりになる一歩の大事さ

この映画のテーマは「一歩を踏み出す勇気」だと思います。

あらすじでも書きましたが、冒頭アカネは学校で友人が仲間外れにされているのを見て見ぬふりして傷つけてしまう事を後悔するシーンからこの映画は始まります。

そして道中、風景や、人を知ることで自分の中の世界を広げていき最後には自分と同じように不安や恐怖から目を背けようとしていた異世界の王子に出会い、彼と共に「前のめりに」勇気を出して1歩を踏み出します。

そして異世界は色を取り戻していき、救済されます。

エンドロールではアカネが学校に戻り、仲間外れにされていた友人に手を差し伸べるのです。

誕生日を迎え、大人へと成長していくアカネ。その成長の過程を、世界の広がりを異世界という比喩で例えているとも言えます。

恐怖や不安に対して逃げるのではなく「前のめり」で一歩踏み込む事を真摯に伝えるという物語の構造はとても良かったと思います。

 

正直、劇場で観た時は観客は私だけというガラガラ具合だったので、是非劇場に足を運んで頂けると劇場を独占出来ますよ。

 

『バースデー・ワンダーランド』公式設定資料集

『バースデー・ワンダーランド』公式設定資料集

  • 作者: パイインターナショナル編集部
  • 出版社/メーカー: パイインターナショナル
  • 発売日: 2019/04/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る