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虚無百合サバイバルゲームの爆誕!『じんるいのみなさまへ』レビュー

あーこのゲーム面白かった~、他の人の感想覗いてみるか~

滅茶苦茶叩かれてるやんけ! 

 

と驚いてイスから転げ落ちる経験、みなさまも1度や2度あると思う。

確かにこのゲームはファミ通クロスレビューでオール6点という実質0点を叩き出したりして発売前から一部界隈では噂になっていたゲームではあるし、実際に遊んでみるとどう考えても手抜きとしか考えられない要素など盛りだくさんで、酷評されるのもまぁ分かる所はあるが、しかし、輝くポイントもあって何だかんだ結構楽しめた私がいる。

という訳で今回は『じんるいのみなさまへ』の感想書いていきます。

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荒廃した街と様々な百合模様

最初にこのゲームの説明をしよう。

最近何かと話題の日本一ソフトウェアがおくるガールズアドベンチャーであり、

あらすじは

主役である榛東 京椛が目覚めるとそこは秋葉原にあるホテルの一室だった。

仲間達と外に行くと目の前に広がる秋葉原はとても、荒廃した街。
草木は自由に伸び、荒れ果て、人の気配なんて、全くしない。

街のみんなはどこへ行ったの?秋葉原は、こんな感じだった…?
何が何だか分からないけど、とりあえずみんなとの旅行は、楽しもう!

と言った話である。この時点でユルさを分かってもらえると思う。

全編こんな感じである。

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凄くポジティブな主人公と個性豊かな四人の仲間達のお陰で作中で起こる食べ物問題や水問題、電気問題など様々なサバイバル的問題に対して、そんなに暗くならずほのぼの百合百合しているのが本作の最大の特徴であり、全体的に『がっこうぐらし』からシリアスだけを取ったような雰囲気である(あまりにも荒廃し、秋葉原に人が誰もいなかったり、秋葉原の外が海になっていたり、町中で魚が釣れたりする異常事態な秋葉原に対して主人公達は余りにもゆるゆる過ぎて明らかに「何か」あることはプレイヤーなら何となくわかり、常に一定の緊張感を持てる作りに一応なっている)

また、サバイバルといえば吊り橋効果により「恋愛」も無くてはならない重要な要素である。ただ、作では男が存在しないので必然的に女性同士、即ち、百合を堪能する事が出来る。

『じんるいのみなさまへ』を一番オススメ出来る層は百合好きの人達だと思う。最初こそ控えめ百合だが、途中から結婚という言葉が出てきたり、相方のことを様付けで呼んだり、人前でも普通にイチャイチャしだすので大変ニヤニヤ出来る。殆ど百合のノーストップ展開である。

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人間やっぱりサバイバルすると恋に目覚めるものなんだなぁ。ただ、主人公の相手は有料DLCを買って一回本編をクリアしないと出てこない為、注意が必要だ!

 

終盤、一気に世界の謎が判明し、うおおおおおおおこれからどうなるだ!と思っている内に本編が終わる。分かりやすく言うとテレビアニメ版『がっこうぐらし』の1話が終わった所で本編が終わるような感じである。1話以降蛇足!という感想をもった人には大変オススメ出来るが、そうでない人には賛否両論な終わり方だとは思う。

ちなみに有料DLCを購入して2周目をすると結構話が変わってくるので、1周目がノーマルエンド、2周目の有料版がトゥルーエンドのような感じであるが、正直、決して安くないフルプライスなゲームで有料DLC買わないと主役の相手とトゥルーエンド観れないって一体どうなんだ問題はある。

 

あまりにも虚無なゲーム要素

恐らく、本作の評価を著しく下げているのがこのゲーム要素である。

まずこの画像を見てもらいたい

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これが荒廃した解像度が低い秋葉原である。

問題なのがミニマップが存在しない事と、

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マップを開いても現在地と目的地が出てこない所である。

2019年8月1日、ついにここがアップデードで直りました!

このゲームをやるなら今だぞ!

ただ、そもそもこんなモノ、ゲーム開始して1分ぐらいで気付く問題点である。

もしかしたら開発陣全員が秋葉原に精通していて、秋葉原を知らい人達の気持ちが分からなかったのかもしれない。それなら仕方ない、いや仕方なくはない。

恐らく秋葉原をよく知っている人なら、現代の秋葉原とゲームの秋葉原の違いなども楽しめる要素だとは思うが、ニッチ過ぎる需要である。

また、荒廃しているため、視認で建物の区別がつかないのもストレスの大きな要因だと思うし、少し遠い所はやたらぼやけるのも終始意味が分からなかった。

 

そして、ストーリーの8割が「○○へ行って○○を探そう」で進行し、同じ場所を何度もたらい回しにされたあげくホテルから一番遠い場所まで誘導されて「ホテル」に戻ろうと言われるので虚無感を体全体に感じる事ができる(初見だと絶対にホテルの入り口が分からず迷う)たまーに優しさを見せてホテルまでワープしてくれる事があるのだが、あまりにも感動して涙が出てきそうになる。不意に優しさを見せてくるDV男との関係性みたいなもんである。

ちなみにストーリーの残りの2割は「ノーヒントで○○を探そう」と「夜まで探索しよう」である。

そして操作性にも難があり、通常の歩きが左スディックで移動なのだが速度が大変遅いのにダッシュがR1に配置されている為、移動だと常に両手を使わないといけないのが大変辛い。全身全霊で『じんるいのみなさまへ』に集中しろと日本一ソフトウェアの気概を感じられずにはいられない。

 

無意味なゲーム要素

サバイバルゲームなので当然、釣りや、野生動物捕まえる罠、採取、料理要素があるが、これら全てメインストーリーには全く関与しないので、なにもしなくていい。メインストーリーは「○○へ行って○○を探そう」だけだ。

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この画像を見て貰いたい。左上に時計と残り時間が見えるだろう。

しかし、基本的にこの時間はメインストーリーには一切関係しない(2,3回ぐらいあった夜まで探索しようだけ活かされる)

この時間はメインストーリーには一切関係ない釣りや、野生動物捕まえる罠、採取、料理要素に関係している。料理を食べればメインストーリーには無意味な探索時間の補助効果がある。探索時間が伸びると釣りや、野生動物捕まえる罠、採取をする時間が増え、料理や罠をより作成する事が出来る。そのループである。それら要素はメインストーリーそっちのけでそこだけでウロボロスが完成している。

ここでもう一つ重要なのは別に時間が経過しても一切デメリットがない所である。

主人公達は百合に夢中な青春を謳歌している女の子なので、どれだけなにも食べなくても問題なくメインストーリーを進める事が出来るし、日が経ちすぎるとゲームオーバーするといった要素もない。

まったり自由にゆるやかにサバイバル体験する事が出来るのだ。

時間はMUGENにあるのだから。

 

この一見虚無に見えるゲーム要素、しかし、本来ゲームとは虚無なのではないだろうか。昨今ではeスポーツと呼ばれ、ゲームをする事で地位やお金を得たり、また、自己承認を得たり、ゲームを通して仲間作りや、知識の上昇など多岐多様に渡り、ゲームをすることに意味が出てきた。しかし、私たちは本当にそんなモノの為にゲームをするのか、答えはNOである。

意味なんてなくてもゲームをするのである。そこに意味も意義も目的も存在しなくて、例えゲームが終わった後に虚無を感じられても、ゲームをしている間の刹那な楽しみ。それこそがゲームの本来の魅力なのではないだろうか。

そしてこのゲームはそんな虚無感をもう一度ゲーマーに伝える為に日本一ソフトウェアが果敢に挑んできた意欲作なのではないだろうか。

虚無こそゲームの本質なのだと

 

「青春とは無意味の積み重ね」という言葉がある

本作は主役含めて5人の女の子がいる。彼女達は「旅行」と称して荒廃した秋葉原を楽しむ。ゲームも出来ないし、観光名所も寂れている。それでも彼女達は楽しんでいる。

なぜなら、彼女達は最高の仲間であり、かけがいのない青春を堪能しているからである。

仲間達で遊ぶ時間、それは人生の邪魔だと言う人もいる。

確かに受験勉強やスポーツにくらべてそれらは大人になる為の人生には無意味な要素なのかもしれない。ただ、それでも仲間達といる時間、それはどんなモノにも負けず輝いているモノだ。宝物だ。無意味なモノこそが何よりも大切だったのだと大人になった

今なら分かる。

 

そして『じんるいのみなさまへ』のゲーム要素にある「虚無」と「無意味」一見これは制作者の手抜きのように見えるが、実際にはゲームの本質と青春の本質の両方を私たちに伝える為の遠回しなメッセージだと言うことが分かる。

 

じんるいのみなさまへ

虚無で無意味で無駄なゲームシステムは、ただのノベルゲームでは感じる事は出来ない、それらは『じんるいのみなさまへ』の一つのゲーム性、荒廃した世界観の個性の獲得に成功していると言わずにいられない。

人はどんな時だって百合を生み出せるのだ。

我々はどんな時だって百合を楽しめるのだ。

 

ただ、以前書いた面白いクソゲーこそ『レフトアライブ』とはまた違った楽しさであり、ゲームの虚無感に合わないと全く楽しめないと思う。

www.shachikudayo.com

 

あと、やりこみ要素であるこのゲームの世界観をしる事が出来るアイテムが入っているコインロッカーを開ける為に必要な100円玉は普段から集める事が出来るのだが、実際にコインロッカーが使えるタイミングで今まで集めていた100円玉が全て消失するという鬼のような仕様も確実に心を折ってくる。完全に嫌がらせ。しかも、周回してもその仕様が変わらない。まるで鬼。

『じんるいのみなさまへ』は今の所、正直あんまり多くの人にオススメも出来ないが、それでも春夏冬ゆう先生デザインによる可愛らしい女の子達の会話劇と終盤のストーリーは素晴らしく魅力的なので、虚無に対する抗体がある人やどんな時でも百合を一番に考える人、『がっこうぐらし』的雰囲気が好きな人には是非1度手にとってもらいたい。

最後に私が『じんるいのみなさまへ』を遊んで学んだ事を書いて終わりにする。それは

 

人生で困ったときは同人ショップに行けば大体何とかなるという事

 

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↑このゲーム、パジャマ姿がえっちいと思うのに全然共感してもらえない