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【ネタバレ】映画『貞子DX』感想。川村壱馬くんの為だけのMX4Dライトを堪能して欲しい

ログインボーナス途切れると死ぬ世界

監督: 木村 ひさし 脚本: 高橋悠也

全国で「呪いのビデオ」を見た人々が突然死する事件が発生する。IQ200の大学院生である一条文華(小芝風花)は、妹がそのビデオを見てしまったことを知り、ビデオにまつわる謎の解明に挑む。

 

“見た者は1週間以内に死ぬ”という都市伝説的な「呪いのビデオ」を軸に置き、その謎を解くべく奔走する1組の男女を描いた『リング』は、ジャパニーズ・ホラー=Jホラーという新たな潮流を生み出した。

そこから20年、貞子はJホラーのシンボル的存在になり、ハリウッドに海外遠征に行ったり、時代の変化と共にビデオテープという手段からインターネット動画へと変わったり、見た目がカマドウマみたいになったり伽椰子とタイマンしたり合体したりした。また作外では野球の始球式に出たり、政見放送をしたり、女子会したり、とにかくネタ化が止まらなく、怖いというよりちいかわ的ユルキャラ化しているのは否定出来ない。逆に今の世代が『リング』観たら真面目な貞子に驚きそう。

 

 

そんなリング・ウイルスを現代でアップデートさせたのが本作『貞子DX』である。

正直前作の中田秀夫監督作品『貞子』があまりにも酷い出来だったので本作も期待してなかった。もはや貞子でホラーは無理だろと高を括っていた。そんな中で『貞子DX』を観た。

 まずあらかじめ言っていくと本作を「ホラー」だと思うとガッカリすると思う。何だこれは!!となると思う。

本作はホラーではない、クソ阿保映画である。しかも、これは大傑作のクソ阿保映画である。

ここが前作の『貞子』とは違う。ここから内容に踏み込んで書いていきたい。

 

 

コロナ禍でウイルスを描くにあたって

IQ200の主人公文華が呪いのビデオ見て10分もかからず『らせん』でのリングウイルスの真実に気づく。

リングウィルスは、呪いのビデオを見た者に感染する架空のウイルスで、人間によって滅ぼされた天然痘の怨念と貞子の怨念が共鳴して誕生した。リングウイルスの目的は人を呪うことではなく、「増殖」である。自分が助かるためにはウィルスの増殖に手を貸さねばならない。それを原作小説3作目の『ループ』でどうやってリングウイルスを死滅させるかという話になるのだが、本作『貞子DX』ではリングウイルスと人類は新しい関係となる。つまりwit貞子である。

 

新型コロナウイルスにより世界的なパンデミックの現代。

そんなコロナ禍だからこその貞子に新たな側面を覚醒させるのは必然なのだろう。

 

今までは“見た者は1週間以内に死ぬ”だったウイルスが“見た者は24時間後に死ぬ”の現代らしいスピード感を持ち

そしてリングウイルスを死滅させるのでなく、24時間に一度映像を見る事によって生き残る事が出来る、感染し続けなければいけないウイルスだった事が判明する。

呪いと共存して生きていくラスト。

そんな中で今回、色々な人の姿になる貞子の特性を利用して、亡くなった夫(貞子)を見て主人公のお母さんが「これからずっとお父さんと居れるのね~」の強者感、好き。withコロナも一方的な不幸せじゃないんだなという救い。このオチ本当に好き。

みんなで呪いのビデオウォッチパーティするの最高にイカレてて最高。

 

ホラー映画ってどうしても余韻が湿っぽくなりがちだし、そういう作品も好きだけど本作の爽快感は凄かった。今年観た映画で一番元気よく映画館を出ることが出来た気がする。ホラーなのに。

少なくとも最後に少しミスリードとかあって全員死ぬみたいなありがちはホラーエンドじゃなくて良かったと思う。

 

 

細かな所

  • 本作の監督、木村ひろしはTRICKシリーズの助監督も務めていたので、ああいう雰囲気のシュールギャグや癖強キャラのやり取りが好きな人は楽しめるだろう。というか主人公と売れない占い師のコンビなんてほぼTRICKである。
  • 本作で一番怖かったところ、ビデオデッキの存在を知らない高校生。その割にはビデオデッキ持っている人が意外に多い、令和やぞ。
  • 本作で一番怖かったところ、「返信キボンヌパート2」とか呟くインターネット老人
  • 貞子というタイトルの映画だが、貞子の存在感は薄い。静岡のおじさんの方が存在感ある、というかあのおっさんなに!?
  • 今回の貞子、最終的に物理の筋肉勝負なのでドウェイン・ジョンソン相手だと普通に負けそう
  • 感電ロイド君は萌えキャラ。潔癖症で部屋から出れないので主人公達を遠隔でサポートしたり、ヒントをくれたりする椅子の男なのに後半で尺がなくなったのか、突然現場にやってくるのもポイント高いし。ビデオ映像見る必要ないのにうっかり見てしまうのもポイント高い。
  • 主人公、文華の両手を耳の後ろで広げる「耳をすませばポーズ」。パンフレット読むとなんか耳の後ろのツボを押さえて頭の回転をよくさせる効果があるとか書いてるけど、あそこまで効果ないだろ。
  • 逆に騒ぐ役割は川村壱馬演じる前田王司が担っている。人によってはイライラするかもしれないが、個人的には「ポンコツかわいい」で落ち着いた。好き。リボン推し洋服コレクションの恰好も好き。決めポーズする時にMX4Dだと専用のライトがつくのか面白過ぎた。世界一無駄な電気である。正直本作はあまり4Dの恩恵はないのだが、王司の決めポーズは4,5回あって毎回専用のライトがピカッと光るのが滅茶苦茶笑えてくるのでそれだけでも観て欲しいので是非MX4Dで。

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  • 川村壱馬くんは本作でやたらキビキビ動くけど、パンフレット読むとハイローを経験して殴られ慣れしたおかげだという。殴られ慣れなんて初めて聴く言葉である。
  • 渡辺裕之の遺作の1作がこれでいいのかとは思う    
  • ラストの映画を観ている観客の映像が映るメタ展開、これ自体はいいけど、映像では満席になってたのに僕がいた回は2、3人しか客がいなかったのでさみしい気持ちになりました

 

最後に

2022年は『きさらぎ駅』『呪詛』『X エックス』『NOPE/ノープ』『ブラック・フォン』『女神の継承』など日本だけに関わらず滅茶苦茶クオリティの高いホラー映画を観続けたので、〆はこういうホラー映画でも良いと思う。心がホッとなる。ホラーなのに。