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【ネタバレ】ホラー映画『忌怪島』感想と解説

奄美大島に伝わるとされる「いまじょ」と言う怪談をご存知だろうか。

 

昔、奄美大島の用心棒に金持ちの家で働くヤンチュ(債務奴隷のようなもの)に「いまじょ」という娘がいてかなり美人だったという。 
その家の主人もいまじょの美しさに惹かれていて、ある日むりやり手篭めにしてそのまま囲いものにしていた。
そのことに嫉妬したその家のおかみは、ある日主人の留守中にいまじょを納屋に呼び出して色々な拷問を加えた末にそのまま殺してしまった。
一方的に手篭めにされて、勝手に嫉妬で殺されたいまじょは怨霊となりこの男の家を祟り、程なくしてその家に連なるものは全員死に絶えたと言う、そういうお話。

 

これは昔、掲示板に書き込まれた真偽不明のオカルト話。

そんな話をベースに「恐怖の村」3部作を成功させた清水崇監督が"村”から"島"へ。今やトップアイドルになったなにわ男子の西畑大吾を主演に描く。

ここからはネタバレありで感想を書いていきたい。

未だシャーマニズム信仰が残る島。そこでは「シンセカイ」と名乗る最先端VRプロジェクト研究チームが島全体をスキャンし、丸ごとデータ化することで「現実世界」とそっくりの「仮想空間」の開発をしていた。しかし、その開発の途中で人が死んでしまう……。

そんな中、島の霊能者は言う。

「イマジョの呪い」

イマジョの影響でVR世界と現実世界が曖昧となり、島は地獄の様相となっていく……。

 

 

テクロノジーと因習

清水崇監督のホラーといえば、因縁ドロドロ系悲しい田舎の因習。特に9割ぐらいの確率で酷い目にあう昔の女性。なにわ男子目的っぽい若い観客多かったので、男達に暴行されるシーンとか別の意味でハラハラしてしまった。

 

古い因習の残る寂れた小さな島で、封印された過去の怨念が甦る…という基本的な構成は「恐怖の村」シリーズを踏襲しているが、そこへメタバース、VRといったテクロノジー要素を絡めているのが本作最大の特徴だろう。

ただ、まぁその絡まり方がうまくいっているかといえば、いってないと思う。

結局は忌まわしき過去からの怨念が襲い掛かってくるいつもの奴だし、VRやメタバースを使ってのホラー要素が少ないのもガッカリ。イマジョも、これから暴れまくるのではないかと思ったら、暴れなくて終わってしまった。

結局は色々詰め込み過ぎで物語が交差し過ぎてどれも中途半端になってしまった印象である。「ミラーニューロン」とか「ボディ・シェアリング」みたいな難しいワードもぽんぽん出てくるし、「ブレイン・シンクロニシティ」という造語まで出てくる割に本筋にあまり絡まないのでよけい混乱する。

清水崇監督や関係者が色々アイデアをならべたのを整理できず寄せ集めたので、支離滅裂な映画になってしまった印象。

ただ、まぁ終わり方はセカイ系みたいで結構好き。「現実世界」とそっくりの「仮想空間」で自分は意外に人が好きだと知った主人公がヒロインと2人きりで世界でいきていくの良いよね……(イマジョはみない事にする

 

 

解説とか細かい所

上映終了後「どういう事‥?」と周りの観客はざわざわしてたし、僕も「どういう事‥?」と仲良く困惑してしまった。

という訳で小説版を買って読んだので「どういう事‥?」ポイントを解説していきたい。

  • ラストの後、霊能者のトキは死に、島は事故死、病死、自殺、不審死などが激増、人死や不幸に溢れている。そして、死ぬのは殆ど男性で、若い女性は島の外へ出て行くことが増えた。そうイマジョがあっちの世界からこっちの世界にやってきてしまったのだ。そしてイマジョに感染していく若い女性……。目的はイマジョの血を拡大させること。本編で男性陣が死に、女性陣はほぼ生き残ったのも同じ理由だと思われる。(故に男と交じわろうとする)(島は既に殆どがイマジョの遠い血縁)(ちなみに本作のヒロイン園田さんもイマジョの血がわずかに流れているらしい)最後の最後で少女のリンが海の中に入っていったが、彼女もまた本土を目指す。
  • 似非関西弁の人は「シンセカイ」の情報を他社に売るスパイ
  • 「恐怖の村」シリーズからのお馴染みアッキナーナが本作でも登場してくれて良かった。ただ、過去一地味である。
  • 鳥居がマッチ1本は全焼したみたいに見えるけど、一応後ろの方にガソリン入れる容器あったね。
  • シゲルが折り鶴を山の上から飛ばしたのは呪いとかでなく、自殺する前の身辺整理に近いっぽい。
  • 當真あみ可愛い。『サマータイムレンダ』が実写化した際は澪を演じて欲しい。
  • 西畑大吾さん、最初はいけ好かない奴だなと思ったけど、段々可愛いなと思っていったので優勝。

 

最後に

スパイダーマンとフラッシュのアメコミ2大映画と公開日が被ってしまい、凄い影が薄い感じだけれども、個人的にはホラー映画がもっと元気になって欲しいと常々思ってますので応援しています。打倒スパイダーマン!!!

 

 

あと

「恐怖の村」のお決りといえば、ハッピーエンドと思わせておいての実は解決してませんでした!!エンド。

本作はハッピーエンドで終わりそうでハラハラしていたのに「ハッピーエンドじゃありませ—ーーーーん」エンドになってくれてホッとした。ルーティンをこなすだけのワンパターンなテレビ時代劇感こそが本シリーズの魅力である。

いつか犬妖怪三吉彩花VSコトリバコ山田杏奈VS牛首Kōki(芋生悠)VSメタバース西畑大吾VS多次元アッキーナの村島アベンジャーズが見たいな~~~~~~~~