日本のゲーム会社最大手の一つであるスクウェア・エニックス、ゲームディレクターに「ソニック」の生みの親である中裕司氏、キャラクターデザインは『ナイツ』などで知られる大島直人氏という豪華メンバーが手を組んだ『バランワンダーワールド』
ただ、本作は3月26日に発売されたものの、恐ろしく空気である。「えっ本当に発売されたの?」って言いたくなるぐらいである。
一番の原因は『モンスターハンターライズ』と発売日が被った事だと思われるが、正直、モンハンと発売日が被らなくても空気だった気もする。やはり、体験版がネガキャンにしかならず、『ナイツ』好きの人ぐらいしか残らなかったのが空気となった大きな要因だと思う。
ただ、世の中には埋もれた名作と呼ばれる作品も数多くあるため、空気=駄作ではない。
今回、僕はモンハンを買わず、本作をプレイし一応クリアまでいけたので、『バランワンダーワールド』の感想を書いていきたい。
名作ではない
残念ながら隠れた名作ではない。
概要
まだ誰も体験したことのない、「ワンダーアクション」の舞台が、ここに開演!
『バランワンダーワールド』は、舞台ミュージカルをモチーフとした3Dアクションゲームです。主人公は、ステージ上にある個性豊かな衣装能力を駆使しながら、現実世界での思い出や風景、大切なものなどが入り混じった不思議な心象世界「ワンダーワールド」を冒険します。
「ワンダーワールド」に存在する12の物語は、それぞれ違った特徴を持って主人公を待ち受けています。迷宮のように入り組み、様々なギミックが配置されたステージをすみずみまで踏破することで、物語は核心へと迫っていくでしょう。ここは、心のワンダーワールド ───
物語の舞台は、人々の心の中の幸せな記憶や想い(ポジティブ)と、満たされない悩みや不安(ネガティブ)とが入り混じった、不思議な心象世界「ワンダーワールド」。謎のマエストロバランによってワンダーワールドへと導かれた少年レオと少女エマは、この世界で「大切なモノ」を探す旅に出ます。
失われた「心のバランス」を取り戻し、現実世界へと帰るために……。80種類以上の衣装が、あらゆるアクションを可能にする ───
ワンダーワールドの住人たちが持つチカラを、主人公は「衣装」としてまとうことができます。その数は80種類以上!エネミーを倒す、空を歩く、時を止める、ギミックを扱う・・・新たな衣装を手に入れることでステージ攻略の可能性は広がります。(公式HPより)
微妙にずっとイライラする
面白いゲームなら「うぉおおお!!!」ってテンション上がるし、
クソゲーなら「なんなんこれ!!!!」ってテンション上がるけど
本作はそうではない。
決してクソではないけど、面白くもない時間がずっと続いている感覚。
困惑。
一つ一つ解説していきたい。
- コスチュームアクション
操作説明画面を見て貰えれば分かりやすいが、物凄くシンプルな操作である。
移動とカメラ操作、衣装チェンジ以外である△〇×□R2L2は1つの操作が割り当てられている。どれを押しても同じアクションをする。
本作は80種類以上の衣装があり、ステージごと、ギミック毎に切り替えていく必要がある。
ただ、問題は基本のアクションボタンが1つしかないから、ロケットパンチや弾を撃つなど攻撃アクションがある衣装はそれ以外の事が何一つ出来ない。箱庭3Dアクションゲームの基本操作とも言えるジャンプすら出来ないのだ。
その為、上記のようなほんのわずか段差すらのぼる事が出来ず、わざわざ衣装チェンジしなければならない。
「ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛」と内なる藤原達也が叫ぶ。
また、80種類以上の衣装が本作最大の売りだが、
- ジャンプの飛距離を伸ばす
- 遠距離攻撃
- ブロック破壊
- 氷の上を滑ったり、水中を泳ぐといったステージ固有能力
- 透明化など他に類のない特殊な能力
- サッカーや野球などミニゲーム系
の6つにカテゴリ分する事が出来る。
ここでの問題は、カテゴリ内で上位互換が存在すること。例えば「ジャンプの飛距離が伸びる衣装」と「ジャンプの飛距離が伸びるし、更に高くも飛べる上位互換の衣装」が出て来たりする。
80種類以上もあるので仕方ないかもしれない。見た目が変わるのは確かに可愛い。
ただ、衣装がストック制なのが本当に面倒でストレス。
敵のダメージを喰らったり、落下してしまうと着ていた衣装のストックが減っていき、0になるとその衣装を着る事が出来なくなる。
ストックを増やすにはその衣装をゲット出来るステージに再度行き、初見時と同じようにゲットするしかない。ホーム画面でお金と交換といったショートカットが一切ないのだ。
これで問題になるのはステージごとに配置しているバランスタチューのゲットである(これを一定数ゲットすると次にステージに行ける)
バランスタチューのゲットには攻略している以外のステージの衣装も必要になる事があるのだが、ミスってダメージを受けてしまい、ストックが0になってしまったら、わざわざ前のステージを攻略していかないといけない。令和とは思えない不便さである。
ストック制は上記で書いたような上位互換がある衣装を使ってもらうためのシステムなのかもしれないが、快適性が消えてしまった。
他にも問題はある。拾える衣装アイテムの復活が時間制ということだ、
衣装アイテムをゲットした直後に死んでしまった場合、中間地点からやり直しだが、衣装アイテムが復活していない事が多い。新しい衣装の場合、その衣装じゃないと先に進めないギミックが多いので、衣装アイテムが復活するまで待つ必要がある。完全なる時間の無駄である。
この時間制は雑魚敵も同じで、雑魚敵を倒してバランスタチューをゲットするためにはどうしたらいいのか考えている内に雑魚敵が復活してしまうのだ(しかも結構早い)
滅茶苦茶邪魔
このゲーム、バランスタチューをゲットするために色々試行錯誤するのは楽しいのに雑魚敵がイチイチ湧いてきて
「ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛」と内なる藤原達也が叫ぶ。
一度倒した敵はステージやり直すまで復活しなくていい。お願いします。
- バランチャレンジ
本作最大のストレス要素「バランチャレンジ」
これはステージごとに配置してある大きなシルクハットを見つけると始まるミニゲーム。
タイミング良くボタンを押したり、ボタン連打するという内容(QTEである)
まずこのミニゲーム自体がクソツマラナイのだが、それは良い(良くはない)
一番の問題はミニゲームでPerfectを取るとバランスタチューをゲットできるということ。これが本当に要らない。
このバランチャレンジ、ミニゲーム自体をリトライが出来ないし、スキップも出来ない。
例えば、ミニゲーム一発目でミスるとバランスタチューゲットできない事が確定するが、当のバランは気にしないのでそのままミニゲームは続き、プレイヤーはスキップや早送りすら出来ずに3,4分ぐらいミニゲームを眺めるしかできないのでモチベーション維持が大変厳しい(一応、missが続くとリザルト画面はスキップできる)
しかも、ミニゲーム自体をリトライは出来ないのでミスるとステージごとやり直し。
ミニゲームはミニゲームで終始してくれたらいいのに次のステージに行くためのバランスタチューが報酬の為、やらないといけないと感じるプレイヤーの義務感を利用した悪質なストレス要因である(ゲームをクリアするだけならバランチャンス以外のバランスタチューを集めるだけでも出来るが、他のバランスタチュー集め大変)
しかも、このバランチャレンジ、後半は1つのステージに3.4普通にあるので「もういいよ…」感が凄い。
リトライ機能だけ本当にお願いします。
↑『バランワンダーワールド』やった事がある人なら分かってくれるグロ写真。
- 世界観
『ナイツ』が好きな人はハマりそうな独特の世界観である。
心象世界を冒険ということでステージ上に巨大な人がいたり(攻撃してこない)
フラッシュモブが起こってプレイヤーをお祝いしてくれたりしてくれる。
↑どう見ても敵にしか見えないモブもいて困惑する 。
あと、ボスを倒すと始まる「急に歌うよ」展開
曲は本当に良いんだけど、突然始まるミュージカルに困惑。僕もトラウマを乗り越えた成長したら踊ろうと思う。
細かい所
- 滑る
走り出しがスッと行かないし、止まりたいのにちょっと滑る。そのせいで細い所などは良く落ちる。
- カメラワーク
少し遅いぐらいだけど、たまにガッタガタになる。
- ヒントが少ない
例えば最近の3D箱庭マリオだと、コインで誘導とかしてくれるけど本作はそうではなくバランスタチュー集めが大変
- あまりにも過疎ってて攻略サイトが死んでいる
のでバランスタチュー集めは自力で頑張るしかない。そういう意味でもPS2時代を思い出す。
- ボス戦が簡単
子供向けなのでこのぐらいが良いのかもしれないが、滅茶苦茶簡単。それでも苦戦する人は衣装チェンジに無敵時間があるから敵の攻撃は衣装チェンジを永遠繰り返して回避するというテクニックを覚えていた方がいいかも。
- バグ
衣装変えの画面で、衣装変えたくても強制的に右端までカーソルが動いてしまい衣装を変えれないのが続いてそういう仕様かと思ったけど、再起動したら直ったので恐らくバグ。周りにやっている人がいなさ過ぎて僕だけのバグなのかどうか不明。
- この子可愛い
可愛い。
最後に
このゲームは最後に「人生に無駄はない」というメッセージが流れるが、それを見た僕は「このゲーム遊んでいる時間は無駄では…」という想いが一瞬でも駆け抜けてしまったのが全てだと思う。
ただ、勘違いして欲しくないのは本作はクソゲーでは決してないという事だ。
少なくとも僕は 『マリオオデッセイ』では3d酔いが酷くて恐竜が出てくるステージでやめてしまったが、本作はクリアまで出来た。僕の中ではバラン>>マリオかもしれない。
また、不満点をアプデで修正したらそこそこ面白いゲームになると思う。多分。
最近のスクエニは鍋島俊文氏との「フロントミッション」の精神的続編である『レフトアライブ』でもやらかしているし
「テイルズ」シリーズの馬場英雄氏は結局何も作れずに辞めてしまったし、
有名な人を呼んでいるわりにはうまくいっていない印象がある、ゲーム制作の大変さが分かる。
アクション部分の不便さがPS2とか思い浮かべながら10年前ぐらいのゲームだなぁと思ってたのだが、実際に10年前のゲームを調べてみると『テイルズ オブ エクシリア』とか『DARK SOULS』とか『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』が出てきてヒェってなったので、この記事はこれで終わりです。時が進むのは思っていたより早かった。