前作の『じんるいのみなさまへ』がファミ通のクロスレビューでオール6点という実質0点を叩き出したりしてゲーム界を震撼させたのは記憶に新しい。
確かに『じんるいのみなさまへ』はお世辞にも出来の良いゲームだったとは言えない。
一目で予算がないとわかる解像度の低い3Dグラフィック、あまりにも無意味で虚無過ぎるゲーム性、不親切なマップ(アプデで解消済み)、フルプライスなのに物語の真相を知るためには有料DLC必須という糞要素……とクソゲー呼ばわりされるのも仕方のない出来だった。
それでも、僕は『じんるいのみなさまへ』が好きだった。
ゲームって完成度が高いから好きになる訳じゃないと思う。
オール8点のゲームより3点のゲームの方が愛着湧くことだってある。
僕にとってそれが『じんるいのみなさまへ』だった。
今回、まさかまさかのそんな『じんるいのみなさまへ』の続編である。正直そこまで売れているとは思わなかったので大変驚いた。奇跡ってあるんだね。
『こちら、母なる星より』を発売日に購入し、クリアしたので、今回は前作からどう変わったのかを重点的に感想を書いていきたい。
概要
舞台は池袋。ある朝、6人の女の子たちは無人のクルーズ船で目を覚ます。朧気に覚えているのは、お互いの名前と、6人で旅行に来ていたことだけ。人影のないクルーズ船を探索していた彼女らはサバイバル生活が始まることに。
「こちら、母なる星より」わたしたちは今日も大丈夫です!」
本作を手がけるのはデイジーワールド。代表の植木直敬氏は、アクワイアにて『じんるいのみなさまへ』を手がけた後に同社を設立。本作でもディレクターを務める。プロデューサーは日本一ソフトウェアの菅沼元氏、キャラクターデザインが前作同様、春夏冬ゆう氏が担当する。
虚無なゲーム性がなくなり、虚無が増した
『じんるいのみなさまへ』では 3Dで表現された解像度の低い秋葉原をフィールド探索し、
ストーリーの8割が「○○へ行って○○を探そう」と表示された目標をクリアして、ストーリーを進めていくのが主な流れだった。
秋葉原中に存在する探索ポイントで素材を集めたり、
野生の動物を捕まえる罠を作ったり、釣りをしたりも出来る。そして、そんなサバイバル要素を一切やらなくてもクリアできてしまうゲーム性。
操作性にも難があり、通常の移動が左スディック操作なのだが、移動速度が大変遅いのにダッシュがR1に配置されている為、移動だと常に両手を使わないといけないのが大変辛かったりした。恐らく『じんるいのみなさまへ』がクソゲーだと叩かれた要因の8割がフィールド探索だと思う。
それではそんな反省を生かしつつ、池袋が舞台となった『こちら、母なる星より』はどうだろうか。解像度が上がったり、移動速度が上がったりしたのかなと思ってワクワクしていたら、
なんと、本作ではフィールド探索要素が全てカットされてしまった。
行きたい場所を選んで決定ボタンを押すだけで終わり。
↑自動で移動してしくれる
それはもう、ただのノベルゲームなのよ。
場所を選択して、永遠とガールズトークを聞くだけ。
確かに『じんるいのみなさまへ』で
これは探索要らなくて、ノベルゲーでもよかったのでは??
という意見があったのも知っているけど、なかったらなかったで寂しい。
あんなに叩かれたフィールド探索こそ、僕が愛した『じんるいのみなさまへ』の核心部分だと気付かされた。
本当にガールズトークだけで本編が進んでいく。
それではノベルゲームとして上質かと言えば、そうでもない。
BGMの種類も、背景画も乏しい。選択次第で展開が変わるようなこともない。
なんなら口すら動かない時があるので、6人のメインキャラの中で誰が喋っているか、混乱する時があり、更にこれは主人公の思考なのか、実際に喋っているのかさえ分からない時もある。
↑特に最初の顔合わせのシーンなんて、こちらもキャラクターを把握していなのにここが一番口が動かないので(衣装のせい?)誰が誰なのか本当に分からない。
また、メッセージウィンドウの非表示が無いのも非常に辛い。
春夏冬ゆう氏による魅力的なCGも異様に透過度が低いメッセージウィンドウのせいで画面が切り替わる一瞬しか足元が見えないことが多々ある。
ファミ通にプロデューサー、菅沼元氏のインタビューが記載されていた。一部抜粋する。
『じんるいのみなさまへ』は売上は良かったが、ゲーム性はボロボロでよりシンプルなゲーム性に落とし込むことで快適に遊んでもらえるようにした。そもそも『じんるいのみなさまへ』は制作予算の規模に合わなかった。
と仰っており、本作は確かに快適なのだが、味が独特だった個人の料理店が潰れて全国チェーン店が出来てしまったような寂しさがある。
↑イラストの中の文字が誤字っていたり、あらゆる所に低品質さがある。
百合要素
百合は『じんるいのみなさまへ』同様にある。イチャイチャしている。
↑キャラクターはみんな個性的で可愛い。並んでいる同士がカップル。
フルプライスなのに物語の真相を知るためには有料DLC必須という糞要素もなくなっている。
がっつりSFしながらサバイバル×百合していて、中盤とか必死に米作りに勤しむ姿はまるでDASH村。百合DASH村が本作と言っても過言ではない。
CGも全部で29枚以上と前作のCGも18枚(DLC入れても25枚)より増えている。
米作りしながら2人×3のカップルのイチャイチャを楽しむ感じになっていて、世界にたった6人だけ放り出された女の子たちは、サバイバル生活の中でさまざまな愛を育んでいく。
そしてラストのある展開、百合好きとしてこれやりたかっただけだろ!!!
があって、それを読んだだけも満足である。
↑中盤以降、どのカップルで進めるかの選択肢が発生する場所がある。三分の一の選択と思いきや、また同じ場所を選択することで、他カップルのイベントも見ることが出来る。
最後に
正直、僕が望んだ続編の形ではなかったが、それでもサバイバル百合ADVの名に恥じない出来になっているし、前作同様に世界観が面白いので永遠続く6人の女の子たちのゆるいガールズトークを「スキップしたい」と捉えるか、「微笑ましく、女の子達の事がドンドン好きになる」と捉えるかで評価が変わるだろう。大体クリアまで10時間ぐらいで未見でもR2を押しながら◯を押せば、超高速でトークを送れる。
「あなたがいれば、みんながいれば、大丈夫」というキャッチフレーズ通りの、繋がり、関係性のゲームなっていると思う。
↑前作同様にロッカーがあり、そこの文章でより世界観を知る事が出来るのだが、メッセージ操作できず、一気に表示もされないので、全文出てくるまでじっと待つしかない。しかも、そんな文章が大量にある。読ませたくないのか。正直、ここが本作の1番のクソ要素だと思う。早くアプデで直して欲しい。
前作ほどの欠点はなくなり、前作ほどのインパクトもなくなってしまったが、低品質でよくまとまっていると思う。
『じんるいのみなさまへ』をやってない人は出来ればそちらをやってから『こちら、母なる星より』をプレイするのも勧めたい。百合好きなら間違いなく笑ってしまう展開があるのでオススメだ。