美術展とか好きだけど、人間ベルトコンベアになって「さっさと次に行けよ」の圧を感じながら作品を見たくない。
眼前に広がる作品に「飲まれる」感覚が好き。時間を忘れて1つの作品を眺めていたい。見ていたい作品を見飽きるまで見ていたい。
ただ、人気の美術展になればなるけど人間ベルトコンベア式になってしまうし、逃れようと後ろの方に行くと、作品を見たいのか人の後頭部が見たいのか分からなくなってしまう。サノス早く指パッチンしてくれぇぇぇぇぇぇと願ってやまない。ドクターストレンジはクソ。
しかも今回行く「庵野秀明展」といえば僕なんか想像できない濃いファンたちが沢山参戦してくるのでますます足取りが重い。熱心な人が多いので平日だろうと開催直後は行列になりそうである。せっかく有給とったのに濃いファン達を堪能できても満足に作品を見れないなんて泣いちゃう。
そういう訳で「庵野秀明展」は2022年4月16日(土)~ 6月19日(日)まであべのハルカス美術館で開催しているが僕は行くのをずっと我慢した。そして、5月も終わりの平日、流石に空いているだろうとようやく行くことにしたので、今更ながらレポを書いていく。
あべのハルカス。
僕は関西に住んでいるものの「絶景」に興味が無さ過ぎて初めて来た。
「絶景」に興味はないがハルカス300(展望台)のセットチケットを買うとシンウルトラマンのてぬぐいをプレゼントしてくれるみたいなのでセットを買った。天気は生憎の曇り空である。
中に入ると狙った通り、人は少なめ。月曜一限目の大学校内よりも少ない。
自画像や安野モヨコ先生が描いた庵野監督から始まる。
ちなみに写真撮影は基本OKで映像作品と東映など著作権的に厳しいモノのみNGマークがついている。写真は基本ダメな美術展が多い中、これは助かる。
「いきなりなんだコレ」と多くの客を困惑させるだろう庵野監督の実家にあったミシンで出迎えてくる。
この足踏み式ミシンは、庵野監督が初めて機械を意識した存在であり、幼い庵野監督はこのミシンの構造と動きを見て、メカに興味を持ったというのだ。
そして最初のエリア、1章「原点、或いは呪縛」
『ゴジラ』や『ウルトラマン』『仮面ライダー』といった特撮や『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』などのアニメやマンガ本の数々。少年・庵野秀明が目を輝かせて楽しんだ作品たち。
庵野監督自身が制作に関わっている訳ではないが、多数の原画などが展示されている。
これは何か。
かつて庵野監督自身が語っていた「僕らは結局コラージュしかできないと思うんですよ」のそのコラージュ先。先のミシンと同じく今の庵野監督を形作っている存在。これから庵野監督が作ったモノを見る前にその元をみんなで共有する空間。
そして2章「夢中、或いは我儘」︎と3章「挑戦、或いは逃避」︎は「庵野秀明がつくったもの」を展示している。
学生時代に自主制作した映画『ナカムライダー』『ウルトラマン』(ウルトラマンのオマージュ)やDAIKON Ⅲ オープンアニメーションなどなど。
またアニメーターとして参加した『風の谷のナウシカ』『火垂るの墓』、監督作の『ふしぎの海のナディア』『新世紀エヴァンゲリオン』など、庵野監督がこれまでに手掛けた作品を映像や絵コンテとともに紹介。
庵野監督は色々な事をインプットしていく中で、心を動かされた要素を具体的に追求し次々にコラージュしながら自分の形にしアウトプットし続ける。
それを圧倒的な量で。
コピー世代の在り方をまざまざと見せてくれる。
庵野監督が初めて挑戦した油絵もある。
この時から電線と電柱が好きだったのか、庵野。
それにしても「よくここまでの資料を残したな」とも思う程の凄い量の作品を展示している。才能の一言で片づけられない努力の結晶。
中学生なのにこんな絵うまいの!?と驚くし、
大学生でこんな映像作れるの!?と驚くし、
アマチュアでこんなアニメーション作れるの!?と驚く
驚きっぱなしの時間だった。
社会現象を巻き起こした『新世紀エヴァンゲリオン』の後、アニメによる表現に限界を感じた庵野監督が手がけた実写映画『ラブ&ポップ』をはじめ、多岐にわたる作品を紹介している。
『式日』『美少女戦士セーラームーンS』『キューティーハニー』など。
『シン・ゴジラ』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズも本章で紹介しており、NHKのドキュメントでも登場した模型の実物を見る事ができる、
4章「憧憬、そして再生」︎ではこれから庵野秀明がつくるものを展示している。
公開したての『シン・ウルトラマン』と来年公開予定の『シン・仮面ライダー』
仮面ライダー楽しみ。
最後の5章「感謝、そして報恩」︎ではアニメ特撮アーカイブ機構の活動の紹介など、アニメと特撮などの文化を後世に残すための活動を紹介している。
感謝、そして報恩。こっちこそ言いたい。
最後に
庵野監督ほど有名になると所持していたモノ全てに価値が生まれてくるので、彼の死後、滅茶苦茶PCの中見とか見られそうである。他人事ながら心配しちゃう。
「富野由悠季の世界」でもそうだったように作品単体ではない演出家・監督の展覧会は「概念の展示」の挑戦という趣があるが、「庵野秀明展」もその流れがありつつも所謂「コピー世代」を表す展示会にもなっていて6時間ぐらいゆっくり見ていても見飽きなかったです。ありがとう。ちなみにあべのハルカス展望台は無料で写真を撮ってくれて現像もしてくれるが、おっさん1人でピースしながら「あべのべあ」というゆるキャラと2ショット写真撮ってしまった。大切にしよう。
人混みも少なく、ゆっくり「庵野秀明展」を堪能した後、近くの喫茶店に居座り30分ぐらいでこの記事を書いた。久しぶりに大阪の深い所に来たのだし、これから地下鉄御堂筋線にのって動物園前駅で夜の大阪に飲まれようかなと思う。「飲まれる」感覚が好き。