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『龍が如く7 光と闇の行方』感想レビュー。パンツ一丁おじさんは重ね着姿の夢を見るか

ここで問題です。

片思いだった先輩が留学することが決まり、見送りがしたくて駅の改札まで来たけれど、勇気がなくてホームまで行けない女子高生がいたらどうするのが正解だと思いますか?

 

 

 

 

答えは、思わず走りたくなるほど辛いキムチを食べさせるです。

 

意味が分かりませんよね。私もゲームしていて意味が分からなかったですし、文章にしてみて更に意味が分からなくなりました。でも、これが『龍が如く7』の魅力と言えます。

ちなみに、あまりに辛いキムチを食べた女子高生はそのあまりの辛さにそのままホームまで走り、ついでに告白も大成功!って感じです。はい。

 

本作は街並みもリアルで、キャラクターも安田顕さんや堤真一さんなど、本物の俳優を使う現実と遜色ない出来になっています。

 

その最先端技術の結晶から生まれたリアルなグラフィックを利用して、考えうる最高で、正気を疑う頭のおかしい事を惜しげもなくやってるのがこの『龍が如く7』であり、ハッキリ言って異常なゲームです。だからこそ面白い。だからこそ熱中できる。そんな『龍が如く7』の感想を書いていこうと思います。

本記事にはメインストーリーは出来るだけ配慮していますが、サブクエストはネタバレに繋がる記述やスクリーンショットを含みます。閲覧の際にはご注意ください。

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乳首とパンツと魑魅魍魎

年末のガキ使で草彅剛さんがパンツ一丁となり、話題を独占したように、意外性のある男から織りなすパンツ一丁姿って老若男女問わず爆笑を取れる無敵の行為だと思うんです(草彅剛さんと同じく警察が弱点)

 

そして、『龍が如く』スタッフは強面のおっさんがパンツ一丁になるだけで面白いという事を知っており、隙あらばパンツ一丁の男が出てきます。警察が基本的に役に立たないので、変質者が我が物顔で歩いていても説得力ある世界観になっていて強いです。

 

パンツとかそういう事だけ書いていくと『龍が如く』スタッフはふざけ過ぎ、遊び過ぎと偏見を持たれてしまいますが、実はこのゲーム、真面目な側面も沢山あります。

例えば、昨今問題になっている父親が子育てを避けてしまい、母親が育児ノイローゼになってしまう問題にも独自の視点で切り込んでいます。

 

決してふざけず真剣に熱く子育て論を語り、社会問題にも一石投じるゲームになっているのです。

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また、ローションぬるぬる男に、ごみ袋男など現代における魑魅魍魎が跋扈しているのも特徴です。

ドラクエ」がベースになっているのでドラクエ現代社会が悪魔合体したような敵がよく出てきますが、酒乱の戦士が「酒臭い息」を吐いてきたり、ローション使いがぬるぬるアタック使ってきたり、露出狂がオープン・ザ・ドアしたりしてきたり、想像し易い分、かなり生々しい戦いになります。

そういう生々しさがあるからこそクレーン車や虎やクマが敵として出てくると、そんなん卑怯やん、勝てないだろ感が強くなります。いや、クレーン車相手に生身で勝つ主人公たちいったい何なんでしょうか。

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↑クレーン車が怒るという意味が分からないことも起こります。

 

そんな魑魅魍魎なキャラクター達に負けず、サブクエストも異常で異様な展開の連続です。

こういう勢いだけのイベントや

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ソープで遊んでいる最中に母親が入院したと連絡がきたから早く病院に行きたいのに着る服がなく泡でかろうじて大事な部分が隠れているが、水にかかると泡が流れてしまう男を、水撒きババァに気を付けながら洋服屋まで連れていくという徹頭徹尾意味が分からないクエストや

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ドMを極めすぎてどんな肉体的ダメージも受けなくなった男に、母親から「これから先あんたどうするんだい」と普通の説教を食らい、プレイヤー諸共精神的ダメージを与える奴から

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↑マゾおじさんの母とかいう不名誉過ぎる呼び方

 

募金している少女を助ける心温まるクエストまで多種多様なモノがあり、プレイヤーを飽きさせません。

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↑立ちションしてる男を見つけろというイベント。あなたは分かるかな!?

 

基本的にサブクエストは頭のおかしい展開の畳み掛けによる勢い重視ですが、最終的にみんなハッピーになり納得しており、何よりハッタリの力がすごいので「ツッコミを入れるのは野暮だな」状態になります。

 

こういうサブクエストをやっていくと魅力を増していくのが本作の主人公である春日一番です。

 

 春日一番と仲間たち

龍が如くと言えば、桐生一馬

それが歴代のシリーズを遊んできたファンの想いであり、主人子交代と情報が出た時は結構叩かれたりしました。

しかし新しい主人公である春日一番の魅力が本作の見どころの一つと言って過言でありません。

まず、会話が通じない事も多々あり、取り合えず拳で語り合うかのように暴力に行きがちな桐生一馬よりかなり頭が良いです。

春日一番も頭悪い設定ですが、桐生一馬より地頭の良さが随所随所で光り、物語展開がストレスにならない。これが思っていたより大きいと感じました。

 

 

阿保な展開が多いサブクエストとは違い、メインストーリーは異様にシリアスで温度差が凄い本作ですが、重厚な演技からパリピなことまでどんと来いな春日一番にユーザーは心掴まれてしまいます。

 

 この春日一番ですが、まず性格としては熱血バカで子供っぽいという少年漫画の王道を走っています。

 

こういう熱血バカキャラって一歩間違えれば善意の押し付けなどにイライラしてしまう事になりますが、春日一番は冷静なところは冷静で、困ってる人がいると放ってはおけませんが、決して押し付けがましくなく「無理にとは言われねぇが」と言葉を添えるなどの一定の配慮を払うバランス感覚が全体的にあり、とても良かったと感じました。

 

 春日一番は子供の頃からドラクエをプレイしており、義理人情に厚いヤクザです。

ただ、どうしてもヤクザなので知らず知らずのうちにクスリをやっているのか、時折現実とドラクエの境が混じることがあり(特に気持ちが高騰する戦闘になると顕著)周りを心配させるのが玉に瑕です。

そして本作ではそんな春日一番の生い立ちから「春日一番の物語」としての軸がブレることなく、一本の作品として完成度がとても高くなっていて、プレイヤーの想像は裏切っても期待は裏切らない展開の連続で唸ってしまいます。

 

また、そんな春日一番を支える仲間達もみな個性的で魅力的です。

特に安田顕さん演じるホームレスの「ナンバ」は、春日一番と共に成長していく相棒的な存在として印象深い人物です。

ダイの大冒険におけるポップ的存在です。貴重な常識人ポジションでありながら、ホームレスであり、餌巻いてハトを召喚したり、戦闘中に寝て体力を回復したり、敵に土下座してアイテムを恵んでもらったり、アルコールを口に含んで火を噴いたり、純粋に息が臭かったりします。

 

龍が如く』シリーズは芸能人が演じたキャラは一作だけの出番が大半ですが、春日一番の物語を続けるならナンバは必須だと思いますので、そこんとこよろしくお願いいたします。

それに足立さん含めた無職三人組が素晴らしいですね。

 

歳をとるとどうしても自分の加齢臭が気になり、キラキラした若者が世界を救う物語が辛くなる時がありますが、『龍が如く7』では限界中年の金のない無職たちが中心のため、感情移入度も半端ないですね。無職でもこんなに前向きで楽しそうに生きれるというのは希望だと思いませんか?

 

また、韓国人組織「コミジュル」のヒットマンであるハン・ジュンギや中国マフィア「横浜流氓」のリーダー、趙天佑も良いですね。とくに趙天佑(CV岡本信彦)は終盤仲間になるのでストーリーではイマイチ活躍の出番がありませんが、喰えない奴系だと思わせておいて情に厚く、めちゃめちゃ美味しい中華料理を作ってくれるキャラクターは私にはドンピシャでした。一家に一人欲しいタイプです。

 

食事中など、仲間達の小粋なトークイベントが発生する場合があるのですが、皆んな良い感じに残念な所もあり、大好きになります。もっとこのメンバーでゲームを堪能したいと思ってしまいます。好き。

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戦闘

 

戦闘はアクションから「コマンド選択式RPG」に変わったのは良いのですが、正直まだまだ調整不足を感じてしまう出来です。

個人的には倍速モードや戦闘演出OFF機能なども欲しいと思いました。いったい何度露出狂のオープン・ザ・ドアを見たことか。

また、こちらは数百のダメージしか与えられないのにボスになると一万超えのHPもあり、長期戦は避けられません。しかも雑魚キャラでも本当の雑魚に紛れてやたらと硬い奴がいたりします。

一応、オートモードはありますが、私は序盤で死んだキャラを全快で復活させる超貴重なアイテムを勝手に使われたのがトラウマでそれ以来、オートモードは使いませんでした。令和最大のショッキング映像でしたねあれは。

 

また本作のバトルシステムは「ライブコマンドRPGバトル」と呼ばれており「街も人も常に動き続けている」というのが売りとなっています。

落ちてる物や敵との距離や戦ってる場所の広さなどが反映されるのはいいのですが、このシステムを採用しながら操作キャラは自由に動かせないのは嘘だろ!?と思いました。意識はあるのに身体だけ「ザ・ワールド」を受けているような感覚です。

 

ドラクエ」を参考にしたみたいですが、『ドラクエ11』のあの無駄に動ける戦闘システムも参考にして欲しかったですし、『ドラクエ12』は『龍が如く7』の場所が反映するシステムを参考にして欲しいですね。

 

また、挙動が不安になりがちで、自分と敵との間にある壁があると、それを避けずに一心不乱に壁にぶつかり続ける春日一番。クスリやり過ぎて頭おかしくなったのかと不安になった事も多々あります。

同じような事は他にもあり、敵との間にガードレールがあると、どのキャラも敵に向かって一直線にガードレールを飛び越えるのではなくてわざわざ所定の位置まで移動してそこでガードレールを飛び越えて敵に向かう姿は、どんなにリアルで人情味溢れる彼らもプログラムで動いているだけなんだなと実感してしまい悲しくなってしまいました。

 

あと、撃破した後の敵がそのまま車に轢かれると「俺は悪くない!前方確認していない運転手が悪い!」って気持ちになり罪悪感を無駄に感じます。

本作は信号を無視したり、車道を走ると普通に車に轢かれますが警察は何もしてくれません、泣き寝入りです。修羅の世界です。

 

他にも、主人公である春日一番がHP0になるとゲームオーバーになるのですが、上記で書いたようにやたらHPの高いボスをもうすぐ倒せそうなぐらいまで追い詰めた時に、即死系の技を使ってきて春日一番が死んでゲームオーバーになった時は流石にストロングゼロ飲みました。

 

このように色々問題点も多い戦闘システムですが、改良すれば完成度が凄いことになりそうな未来が見えるので、是非諦めずRPGを続けて欲しいなという気持ちがあります。

 

いかにも春日一番がタイマンしそうな演出でも、実際のバトル画面になると味方4人VS敵1人のイジメバトルになったり、デリバリーヘルプという所謂召喚システムでベイビーヤクザや冬のソナタ、猫(虎)、ザリガニ、歴代の登場人物のチカラを借りて数の力でボコボコにしたり、

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↑絵面が汚いが敵全体にデバフ効果を与えれる使い勝手の良いベイビーヤクザ

 

最終的には衛星のチカラも借りて、サテライトキャノンブッパするのは面白くてよかったと思います。やはり『龍が如く7』は理屈ではなく勢いが肝なんだなと思います。

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ミニゲーム

ポケモン集めや、マリオカート、空き缶集めやパチスロなどミニゲームも数多くあり、いい感じに浅いので遊びやすいですね。

特にオススメなのが「会社経営」です。

ムショ帰りで時代について行けてない春日一番が社長になるというのは理解に苦しみますが、どうしても資金難になりがちなこのゲームにおいて必須ともいえるミニゲームです。

内容は街の菓子屋である「一番製菓」を成長させ大手企業にするというもので、楽しい経営シミュレーションに仕上げられています。

あくまでミニゲームなので基本的に簡単ですが、それ故にストレスを感じるほどの面倒さがなく、ドンドン資金が増えていくのが見ていて単純に楽しく、意外とハマってしまいます。負けがないパチンコをやっているような気分です。

 

会社経営には株主総会という茶番があり、そこで怒れる株主を春日が雇った社員と一緒に説得しなければならないのですが、この社員に人外もいるため

株主「経営は遊びじゃないんだ!!!!!」

鶏「コケコッコー」

株主「一理ある」

説得成功!!!

という頭がおかしくなるようなことが多々あり、株主になるほどの人間になるためには言語学まで長けていないと駄目なことがよくわかりますね。

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最後に

発売日に『龍が如く7』買ったのですが、感想を書くのが遅くなってしまった理由が「銀庫」という宝箱的なモノを開けるためのカギが手に入らず、後から開けるのかなと思っていたらそれがただのバグだったと判明して、アプデを待っていたからなんですよね。

 

私はRPGでダンジョンを攻略していて、分かれ道があったらまず行き止まりの方を先に見届けてから正解ルートに進みたいタイプなので回収不可能なアイテムがあると滅茶苦茶萎えてしまうんですね。

普段なら萎えたまま辞めてしまうのですが、本作は1からやり直しました。

なぜなら面白くて、クリアしたいと思ったからという凄く単純な理由からです。

 

 私もおっさんと呼ばれる年齢になってしまいましたが、ゲームのコントローラーを握った時はまだまだ童心に帰れます。

そんな童心モードの私には小学生が考えたような頭のおかしいセンスの笑いが大好きで、パンツ一丁が大好物であり、それらを堪能できる『龍が如く7』を嫌いになる訳がないですね。

今回書いたこと以外にも細かなネタが多数仕込まれており、プレイヤーを楽しませたいという開発陣の心意気に感動してしまいます。

 

また、ネタバレになるので書きませんでしたが本作のメインストーリーは『龍が如く』シリーズの中でもトップクラスに出来が良いので小学生的お笑い嫌い!パンツ一丁嫌い!というあなたでも楽しめるハズです!

最後になりましたが、やたら若い堤真一さんを見ながら終わりにしたいと思います。

 

読んでいただきありがとうございました。

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第1話 月は出ているか?

第1話 月は出ているか?

  • 発売日: 2016/06/17
  • メディア: Prime Video