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アマプラ猛プッシュ『ザ・マスクド・シンガー』感想。君はWHOO!と叫び、ノリノリで踊る空間に耐えれるか

 “Amazon Prime Video(以下アマプラ)” が『ザ・マスクド・シンガー』を超プッシュしている。特にここ1週間ほどはアマプラを開くと、高確率で同番組が広告として表示される状況だ。

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一時期、「松本人志を表示しない方法を教えて 」騒動があったけれど、同じ問題だろう。一介の大泉洋ファンとしては「大泉洋を表示しない方法を教えて 」騒動に発展しないかビクビクしてしまう。

 

この『ザ・マスク・ド・シンガー』は覆面マスク姿で誰もが知っているヒット曲を熱唱し、誰が歌っているのかを推理するというエンタメ音楽番組。

パフォーマンスのあと「もう一度見たい人」をパネリストと観客が投票して、票数が少なかったパフォーマーは敗者となり、ステージの上でマスクを脱いで正体を明かしていく。

そして優勝者の1名だけが獲得できるゴールデンマスクを目指すという趣旨の番組。

 

調べてみるとオリジナルは韓国で2015年から放送されている人気番組『ミステリー音楽ショー覆面歌王』。

abema.tv

これを2019年、アメリカがリメイク。

よりエンタテインメントショー化した『THE MASKED SINGER』は、全米トップの高視聴率を獲得する人気番組になり、いまでは世界50ケ国でリメイクされている。

 

日本版では番組のMCに大泉洋を迎え、パネリストにMIYAVI・Perfume水原希子バカリズムら豪華キャストという力の入りよう。テレビCMも滅茶苦茶放送していて物凄く推しているのが分かる。正直、この過剰広告が嫌われる令和ネット時代に猛プッシュ戦略って悪手では……?という想いはあるが、アマプラもお金が余っているだろう。僕にください。

 

取り敢えず今配信されている3話まで見たので、感想を書いていきたい。

 

コロナ対策

まず、本題に入る前にこれだけは書いておく。

恐らく何も知らずにこの番組を見ると「これ撮影したのコロナ前?」という雑念が頭に入って来て全然楽しめないと思う。

 

なぜなら観客同士の距離がかなり近いという密状態であり、更に観客たちは目元を隠すアイマスクしているのに口にマスクはしてない。更に更に観客は大声でパフォーマーに歓声をあげたり、意味不明なぐらいオーバーリアクションしているのだ。

波物語2021の炎上もあったタイミングでこれを楽しむのは中々難しい。

当たり前だが炎上して、アマプラは釈明した。

映画やドラマで密状態になっている事があるが、事前にエキストラや役者、スタッフはPCR検査しているから安全と同じ理屈だろう。

こんな炎上、少し考えると事前に気づきそうなものだし、冒頭に注意書きがあるだけで全然違ったと思うが、そういうのに気づかない人達が制作している番組というのは実際に見るとある意味納得してしまう。

 

パネリストが見どころ

先述のように『ザ・マスク・ド・シンガー』は韓国やアメリカ番組の日本版であり、何を考えたか日本的バラエティ風に落とし込まずに、素のままで来てしまった。日本流のアレンジしてない本場の料理を食べているようなもである(調理する人も腕もよくない……小声

つまり我々日本人には馴染みにくい独特の空気が流れている。

 

大泉洋さんもパネリストたちも、そして観客たちも異常にテンションが高い。わざとらしいでもいい。外国人のオーバーリアクションをそのままやる。

 

例えば「BGMに合わせてノリノリで踊る水原希子」や「WHOOOO!と叫びながら腕を回すMIYAVI」など、日本人が必死にアメリカズ・ゴット・タレントの審査員のマネしている!(勝手なイメージ)感じで頑張っている所が凄い。みんなで良いモノを作ろうと団体芸をしている姿に感動してしまう。WHOOOOという人生において熱いモノを食べてる時にしか声帯を振動させたことがない言葉を叫びまくってる空間は違和感が凄いが、段々慣れるか麻痺してくる。

こういうのってみんな真面目にやるから独特の空気が形成され面白いのであってそういう意味ではMIYAVI・Perfume水原希子の人選は完璧ともいえる。

 

そんな圧倒的な陽の空間の中で、陰の者であるバカリズムだけが微妙にノレていないのも見どころだ。

 

衝撃的な事があったりするとパネリストは席に座っていられずに立ち上がるのだが、バカリズムだけがオリンピック開会式の菅総理並に立ち上がるのが遅かったり

そもそも皆が立っていても1人だけいつまでも座っていたり

周りがノリノリで踊っている中、1人だけ座っていつものスマイルで手拍子しているだけだったり

3話でアンジャッシュ児嶋と交代してしまったり

存在感抜群でした(アンジャッシュ児嶋はぎこちないながらもちゃんと立って手拍子してた。見栄えがよくなったのかあからさまにパネリスト全体を撮る構図が増えたのが面白かった

 

小林幸子が見どころ(仮)

ネタバレかもしれないが、マスクドシンガーの中に明らかに小林幸子がいる。3話の時点ではまだマスクを脱いでいないのであくまでも僕の予想だが、歌い声が明らかに小林幸子である。

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記念すべき1話で小林幸子と思わしきマスクドシンガーが出てきて紅蓮華を歌うので取り敢えず是非見て欲しい。「小林幸子やんけ!」ってなると思う。

歌を聞いた後にパネリストによる「マスクドシンガー中身当てコーナー」があるのだが、明らかに小林幸子と皆が分かっている中で、「空気読んで小林幸子と言わないように頑張るパネリスト」が面白い。

 

まずMIYABIが「演歌のこぶしがあるように感じた。藤あや子さん、石川さゆりさんかな」という絶妙な外し方。テクニシャンである。

Perfumeあーちゃんの「大御所さんかな、杉田かおるさん」

からの

バカリズム「声が小林幸子だったので小林幸子さん」

流石、バカリズム。そういう事言ってしまう。ここで真面目なMIYABIが「でも小林幸子さんがこの(こんな)番組に出るのか」という指摘。この指摘は藤あや子さん、石川さゆりさんなら出演するレベルなのかって言われそうなギリギリ感があるが、番組を真面目に成立させようと頑張っている姿を見てしまうとそんな野暮な事は言えない。応援してしまう。

 

この問題は小林幸子が一番顕著だが、他の話でも明らかな人は何人かいてみんな頑張っている空気を読んでいるだけでヤラセでない。その独特な空気が美味しい。そしていつも絶妙に外すMIYABI。

小林幸子は3話の時点でまだマスクを脱いでないのでこれからも小林幸子ドシンガーとしてステージ上で歌い、パネリストがどうテクニックを駆使して答えを避けるのか。これこそが本作最大の見どころと言っても過言ではない。

 

口パクじゃね?疑惑

この記事作成にあたってオリジナルの韓国版を何本か見たが、顔を隠すマスクは最低限で生歌による圧倒的歌唱力が最大の魅力として成立している番組に思えた。

 

アメリカがリメイクした『THE MASKED SINGER』ではグラミー賞受賞の大物実力者が出たりしている。

正体を隠して歌うとなると、真の意味でアーティストとしての実力が試されると思う。

どうしても実績のあるアーティストだとファンが贔屓目に見ている可能性は否定出来ない。誰か分からない状態でパフォーマンスした際に、本当にそのアーティストが優れていると自信を持って答えられるだろうか。その点に切り込んでいるのがアメリカ版の人気要素の1つだと思う。

 

ただ、『ザ・マスクド・シンガー』だとマスクというより「着ぐるみ」レベルなのでステージ上のパフォーマンスに録音音声を流しているように僕は思ってしまった(中にインカムをつけて歌ってる可能性も勿論ある)

特に負けて素顔のまま歌っている時もバリバリ声に加工しているのがやはり気になる。

まぁこれはあくまで勝手に口パク疑惑だと僕が思っているだけなので、「違う!」って怒られたら素直に謝ります。そもそも日本では口パクを嫌がっている人が少ないので問題ないのは真実かもしれない。

日本版では金のかかった着ぐるみで歌いながら演劇仕立てしていく総合エンタメを楽しむ番組なのだろう。

 

最後に

1話の最後で負けてマスク脱いだ人は「ある特定の業界では滅茶苦茶有名で実力者だが、テレビ的には知名度低い人」だったので、事前の予想で有名人の名前が上がり過ぎてハードルが上がったのも相まって、顔出した時の「あー……」感が凄くて面白いので、そこも見どころだろう。悪い番組。

 

衣装がみんな上質で、舞台セットも豪華。

海外で人気あるから企画も問題なく通りました!って感じの番組である。
パネリストと一緒に「WHOOOO!」と叫べる人は絶対にこの番組を楽しめるだろうし、斜め上目線から見ても結構楽しめると思う。良くも悪くも地上波バラエティ、音楽番組にはない雰囲気なので新鮮だ。

 

というわけで、長々と『ザ・マスク・ド・シンガー』の3話までの感想を書いてきた。

合う人には合うが合わない人には地獄のような時間だと思うので是非一度見て、自分がどっち側が確認して欲しい。

『ザ・マスクド・シンガー』は初回3話配信済み、以降は毎週金曜日に順次配信予定だ。

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