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『メイドインアビス 闇を目指した連星』レビュー。アビスの地獄さを利用したマゾゲー

理不尽でストレスフルなゲームバランスが「まぁ原作通りかぁ」となるから企画の勝利だよ

プラットフォーム PS4・switch・STEAM
ジャンル 度し難いアクションRPG
発売日
PS4・switch 2022年9月1日
STEAM 2022年9月3日
価格 7200円+税
プレイ人数 1人
クリア時間 約20時間(トロコン約40時間)
メーカー スパイク・チュンソフト

 

メイドインアビス』といえば人類最後の秘境とされている未だ底知れぬ巨大な縦穴「アビス」を探検する「探窟家」たちが命がけの危険と引き換えに、日々の糧や超常の「遺物」、そして未知へのロマンを求め、奈落に挑み続ける物語である。

 

原作者・つくしあきひと氏による可愛らしい絵柄から描かれるアビスの地獄さに、多くのファンを持つ人気コミックをゲーム化したのが本作『メイドインアビス 闇を目指した連星』である。

筆者はヒィヒィ言いながらようやくクリアしたのでレビューを書いていこうと思う。ちなみに本作を購入できるのは18歳以上のみという年齢制限があるので子供はでっかくなってから購入してくれよな!

 

 

 

本作のゲームモードは

主人公のリコを操作して原作の物語を追体験できる「HELLO ABYSS」

オリジナルキャラクターである新米探窟家となって、アビスの真相に挑む「DEEP IN ABYSS」の2つがある。

しかし、「HELLO ABYSS」モードは2層クリアまで、アニメでいうと1期8話の「生存訓練」までなのでボリュームはない。

 

↑恐らく原作では最終回まで見る事は出来ないだろうリコの死など体験できる。

 

2時間程度で「俺たちの冒険はここからだ!!」と終わってしまうので、あくまで「上昇負荷」など本作の独特なゲームデザインを知る上でのチュートリアル的存在でしかない。原作の追体験は期待するな。

 

 

本番はもう1つのモードである「DEEP IN ABYSS」から始まる。

 

↑私服選択で原作者の欲望叶えすぎじゃねと思うゲームも中々ない。

 

自分でキャラメイクした主人公を操作し、リコたちがいなくなった後の孤児院で新米探窟家として「白笛」を目指す物語。

妥協のない首チョンパや踏み潰されての圧死など一瞬の油断も出来ない多様な死に方博物館みたいな状況の中、レグがおらず主人公補正のない探窟家がアビスを冒険するのがどれだけ過酷かを身をもって実感出来るゲームモードだ。

行き帰りのルート計画を練り、各種ゲージのリソース管理しながら探索&サバイバル感を味わう。レグがいないのと、無事に地上へ戻ることが前提だとこんなにもマゾいのかと辛くなる。食料や重量のやりくり、上昇負荷とスタミナ残量などを意識していても、一瞬の判断ミスで簡単に詰んでしまうのだ。

 

 

何よりも辛いのは、本作最大の特徴でもある原作再現の「アビスの呪い」だろう

アビスには「上昇負荷」が存在し、下がる分には問題ないが上がろうとすると体に異常が発生する。

リコは母親であるライザの白笛を手に入れたので地上には戻ってこない覚悟でアビスを進んでいくが、オリジナル主人公は白笛を持っていない為、アビス探索にはランクを上げていく必要がある。

依頼など目的を達しつつ地上に戻って成果の報告をしなければならない。

地上への帰還までが冒険なのである。

故に「上昇負荷」を耐えなければならないのだ。「家に帰るまでが遠足だよ」をこんなにも肌身で実感することもないアビス遠足である。

本作のリソース管理で一番大変なのが満腹度なのだが、「上昇負荷」の限界を超えるとゲロを吐いて大幅に満腹度ゲージが減るので、ゲームオーバーではないのだが実質ゲームオーバーになってしまう。下りるだけの奴は良いよなぁという気持ちである。

ここから更に詳しく書いていく。

 

 

ルート管理とリソース管理

このゲーム、キャラゲーとしては出来は良いが、ゲームとして考えるとかなりの過酷で理不尽なマゾゲーである。常にジリ貧さを味わうゲームバランスだからだ。

 

まず武器。

 

 

本作はピッケルなど武器の消耗は激しく原生生物など雑魚を何体か倒すだけで壊れしまう。ボス戦でも大量に必要になるので基本的に雑魚を無視したいのだが、「獣の肉」など満腹度を回復する料理においてメイン食材は基本的に原生生物を倒さないと手に入らないのでそこの判断をプレイヤーは常に迫られる。

大量に武器を持ち込めたら良いのだが、意外と武器は重たいので荷物の重量オーバーになってしまう。

現地でクラフトしようと思っても武器クラフトには原生生物を倒さないと手に入らないアイテムが必要なので「武器がもうない!作ろうと思っても作る手段がない!」になりがち。

アビスはギリギリの武器クラフトを許さないのだ。

結果、素手で殴れよ!!!ってコントローラーを投げることになる。

個人的オススメはピッケルより攻撃範囲など狭い代わりにクラフト時に要求素材が軽いナタ。

 

 

満腹度

これから始める探窟家に言いたいのは本作で最も大事なアイテムは「塩」である。

3層など冒険していると満腹度ゲージが異様なスピードで減っていき料理を食べないとダメだのだが、現地では「塩」が手に入らない為、前準備で「塩」の用意を怠ると最悪ゲームプレイやり直しになってしまう。

なぜなら雑魚原生生物を倒して手に入る食材を料理するには「塩」が必要不可欠だからだ。

完成した料理をリュックに入れて冒険することはできるが料理は中々重たいのでそんなに持っていけない。長距離での冒険には現地で食材を手に入れて調理するのが必要不可欠なのである。

 

↑こうなるともう終わり

 

素のままで食えよ!!!ってコントローラーを投げることになる。幸い「塩」は軽いので20~30個用意しておこう。

また、エリア移動する毎に体力と満足度が一定数減っていくのだが、行ったことない場所だと???表示になっており「行ったはいいが行き止まりで戻ろうにも満腹度が足りなくて移動できない、詰んだ」という状況になりかねない。

さらに罠なのがエリア移動するたびにオートセーブがかかるので、エリア移動前に巻き戻ることが出来ない。一応手動セーブも出来るのだが、消耗品アイテムなので使える回数が限られている。

基本的にエリア移動ごとにオートセーブしてくれるのは有り難いのだが、致命的な時に詰む。これがアビスの罠である。

エリア移動したが最後、数時間のプレイ時間が消失してしまうのだ。

 

 

無限に湧く原生生物

本作をプレイしていて「頭イカレテいるのか?」と思うことは多数あるが、個人的に一番「頭イカレテいるのか?」と思ったのが無限に湧いてくる原生生物である。

特に3,4層。

基本的に自分の視覚外からいきなりプレイヤーの近くに沸いてくるのだが、3.4層で湧いてくるクワガタは湧いてきて2秒で攻撃してくる。こっちは周りを注意しながらアイテムを使って回復していても「出会って〇秒で合体」シリーズみたいなノリで攻撃してくるので回復の邪魔されて「くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」となったことが何回もあった。しかもアイテム使用中は動けないのである。早くアイテム使い終わってくれぇぇぇぇと祈るあの時間。

後で詳しく書くが「プレイヤーが嫌がること全部やる」みたいなノリで3層を作ってると思う。

 

 

また、壁を登ったりロープ使っていると蝶々型の原生生物が無限に湧いてくる。

基本的に無視して移動すれば問題ないのだが、「上昇負荷」でゲージが回復するまで上に登れないという状況が多々ある。その場で待機するしかないのだが、大体このタイミングで蝶々が湧いてくるのである。

 

 

放置していると鱗粉攻撃をしてくるのだが、当たるとダメージをくらうだけではなく毒状態になってしまう。しかもこのゲーム、毒は自然治癒しないため回復アイテム持ってないとHPや満腹度ゲージが無限に減り続けるのである。

そうなると圧倒的不利な状況になってしまうので倒すしかないのだが、上記で書いたように敵を攻撃すると武器が消耗していくため、無駄に攻撃すらできない。蝶々用に一番初期のナタ用意してた方がいい。

しかもこの蝶々を倒しても下に落ちていくため、剥ぐことすらできない。プレイヤーにとって何の得もないのだ。しかもしかも倒しても倒しても無限に湧いてくるし、結構早く湧いてくる。ストレスチェックしてんのか?

更に更に崖登りはスタミナを消費するのだが、蝶々の対処に無駄にスタミナ消費もしてしまう。結果、落下死である。ストレスチェックしてんのか?

 

 

そして本作最大の難関にして「戻ることの大変さを知る」本作の真骨頂が3層である

リソース管理ゲームで「武器も食い物もアイテムも何もなくなった」という恐怖。

この3層、初見攻略時はまじでアイテムを予測の2倍は用意しておけ、それでも足りないから。

 

下りるのも大変だが、3層でもっとも大変なのは地上に戻ること。

なぜならマトカジャクの存在である。

↑プレイヤーのトラウマ的存在

 

3層は崖登りが地上に戻るのに必須なのだが、このマトカジャクが攻撃してくる。

特に初見時ではほぼ一撃死なので何度も何度も死ぬことになる。

しかもこいつ1匹ではないので何度も何度も何度も何度も攻撃される。

しかもしかも崖登り中は基本的に視野が崖しか見えないので視野外からの攻撃に対して避けなければならない。

しかもしかもしかもマトカジャクだけでなくスタミナ管理もシビアなため、何度も落下死してしまう。

 

マトカジャクに気づかれるとBGMが変わるので警戒を強めて鳴き声でおおよその場所を特定し、視点移動しながらマトカジャクの攻撃を避ける。後は何度も死んで経験するしかない。

 

原作だとリコたち、ここどうやって切り抜けたんだっけと思って読みなおしたら

 

 

レグをフル活用するという強者の道を選んでさらっとチートクリアしてた。
空も飛ばぬ壁も走れぬ真の弱者であるプレイヤーか死にまくるのは当然か。

ただ、3層クリアすると4,5層は意外と優しく感じられると思う。3層だけおかしい。

 

 

細かな所

  • NPCの挙動がおかしい

レグとかちょっと入り組んだ所入ると引っかかってカタカタカタカタ言い出す。怖い。

 

  • 死に方が多彩

特に準ボスみたいな原作生物に殺されると特殊演出が入るのでかなり力が入っていることが分かる。これがZ指定である。

 

  • バグがある

3層で死んだと思ったら持っていたアイテムとかレベルが出発前に戻るバグにあたった。しかし攻略フラグは戻らないので貴重なアイテムとかゲットしているとやり直すハメになる。あと、細かな挙動的バグは一杯。

 

  • 監視基地や前線基地で回復できない

本作は監視基地や前線基地といった場所に入ることもできるのだが、ベットで寝たり食事をごちそうになってHPや満腹度が回復できるのかな?と思いきや全く出来ない。オリジナル主人公はリコではないのでお前なんてなんの義理もないしさっさと出て行けの雰囲気すらある。ちなみにオーゼンと戦うこともできるが普通にラスボスや裏ボスより強いので注意だ。

「DEEP IN ABYSS」は5層クリアまでなので皆さん大好きアイツも出てくるよ。

 

  • アクション部分やUIは酷い

一応フルプライスのゲームではあるが、モンハンみたいなアクションを期待したらダメだ。モーションはもっさりしているし、操作性も悪い。気持ち良いアクションでは少なくともない。

ボス戦も、もっさり挙動の中で敵の近接→下がって避けて近づいて殴る→敵の近接の繰り返しでツマラナイし、緊急回避がやり辛い。

UI部分もお世辞にも褒められたものではない。

特にMAPゲームなのにMAPをワンボタンで確認出来ないのどうかと思う。

 

  • ナナチが可愛い

ナナチは可愛い

 

 

最後に

 

ゲームバランスは良くないので賛否両論あると思うが

あれも持っていこ!これも念のため持っていこ!って満載して探窟中に崖の遺物掘って重量オーバーで落下死したり

慣れてきたからコレ要らんだろって置いてった日陰アイテムがピンポイントで必要になってキィィィィとなったり、

これで万全と持っていったアイテムをほぼ使い切るくらいの死闘の果てに地上に戻れた時の解放感だったり

 

「度し難い」の一言で処理できない面白さがあると思う。

 

他のプレイヤーと冒険できるマルチモードとかあっても面白そうだけど、3層で力尽きた感あるので無理なのも知っている。そこそこ売れているらしいので予算増えての次回作に期待したい。

あと、原作者・つくしあきひと氏監修のオリジナルストーリーもメイドインアビスらしくて好きだった。

 



つくしあきひと先生、好き。