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映画『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』感想。感動ホラードキュメントの誕生

「怪異に対して圧倒的に無力な人間」というJホラーに横たわっていた絶対的なお約束を「そんなお約束なんて知らねーーーーとメインウェポンは金属バットでガンガン立ち向かっていく」構図で打ち破った意欲作『コワすぎ!』

記念すべき1話で「口裂け女を捕獲するための方法がハイエースではねる」だった時点でコイツは他のホラーとは一味違うぞってなるし、音速で動く河童に対して五芒星の中心で立ち河童を迎え撃ったり、学校のトイレから異次元に行ったり、コックリさんに素手で殴りにかかったり……。いったい何だんだ。異様なテンションでジャンルの常識を打ち破る大人気フェイクドキュメンタリー。

 

基本の流れは映像会社に投稿者の手によって撮影された、不可思議な現象の謎を工藤ディレクター、アシスタントの市河、カメラマンの田代(この映画の監督である白石晃士)の三人が追跡していくというシリーズ。そして8年間の沈黙を破り、ついに完成したのが本作『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』なのである。

 

呪われた廃墟で撮影された投稿映像。そこには、不気味な祭壇と全身血まみれの赤い女、そして謎の赤ん坊の泣き声が収められていた。TikTokに上げたら垢バンされた投稿者達は粗暴なプロデューサー・工藤とディレクターの市川、カメラマンの田代による「コワすぎ!」チームに依頼。怪異を解き明かすべく取材に乗り出すが……。

 

今回でシリーズ10作目だが、これまでのシリーズの直接的な続編では無いので初見でも問題なし。同時にファンサービスの塊なのでファンは笑いながら泣ける。

 

ただのホラー映画ではない。本作のテーマの1つに「虐げられた女性」がある。

中盤での時間と空間の入り混じった所で各々のトラウマ体験のフラッシュバックと重ねられる中で「後ろを見るな、前を見ろ、未来へ、希望へ」の力強さに感動するし

加害者を攻撃することで世界が滅茶苦茶になるかもしれないのに被害にあった女性が加害者を攻撃しようとする所も止めずに「いけーー」と工藤や市川が応援するのも良いし、何よりも皆んなの力を分けてくれのところの演出が完全にプリキュア映画になっているのが好き。入場特典ミラクルライトにして欲しい。

プリキュア映画、僕もちょくちょく劇場で鑑賞するのだけども、特典って子供にしか配布されないんですよね。あれいつもモヤモヤするというか、大人には応援する力ないのかいって気持ちになるんだけども、コワすぎ!は子供も大人も関係なく応援出来ますからね。やはりコワすぎ!なんですよ。

 

さらに工藤のこれまでの業の精算を混ぜた結果の闇工藤の存在とそれに対しての「俺はお前をぶっ殺す。何度でもな」という工藤。白石監督自身も重ねた自分の中の変化。己の中に生まれる邪な気持ちに対してのぶち殺していこうじゃないか。という決意が映画でうまく表現されており、説教臭くないのにメッセージ性を感じる出来。

そして最強ギャル霊媒師珠緒師匠とその弟子鬼村さんの師弟関係も好き。序盤で霊を信用しない投稿者に対して先生が「ハイハイそんな態度とっても守ってあげるからね」と言うのも好きだし、珠緒師匠が出てから作品の空気変わるのも好き。

スピンオフして欲しい。

 

最後に

エンドロールで流れるコワすぎ!音頭はズルい