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時代劇ではないがそこにあるのは確かな極上の大河ドラマ。NHK『いだてん』のススメ

NHK大河ドラマ『いだてん』

私はクドカンの大ファンという事もありこのドラマは開始前から要チェックしており、

実際に放送されてからも本当に面白くてハマっているのだが、

出演者のピエール瀧さんがコカインで捕まったり

ネットでこのドラマを調べても「視聴率の悪さ」が大体的に引っかたり、

この視聴率に納得いかないNHK上層部は怒っているだの、脚本家をクビするのだの、くだらない憶測記事ばかり出てきて、この作品への逆風を感じてしまう。恐らくピエール瀧さん逮捕でまた色々な憶測記事や『いだてん』打ち切りだのと様々な叩きが出てくるだろ。

 

確かに実際の所、視聴率は悪い。大河史上最速で1ケタになったらしい。

そこは否定しても仕方ない。これから書くが原因もいくつかある。

ただ、ただである。

視聴率が悪いからと言ってこの作品がつまらないという訳ではない。

それどころか超面白く、見所一杯なのである!

今回、なぜそんな超面白い『いだてん』が視聴率が悪いのか、そして

私がオススメする『いだてん』の見所を書いていきたい。

 

大河ドラマ「いだてん」オリジナル・サウンドトラック 前編

 

 

なぜ視聴率が悪いのか

そもそも本放送の前にBSプレミアムで先行放送しており、熱心な大河ファンはそっちで観ている人も多いのですが、それは『いだてん』に限らず最近の大河ドラマ全てに当てはまるのでそれは省きます。

なぜ視聴率が悪いのか何点が要因があると思います。

1時代劇ではない初めての大河

2裏の強さ

3視聴率の悪さが視聴率の悪さを呼ぶ

4東京オリンピックのイメージの悪さ

一つずつ解説していきます。

1時代劇ではない初めての大河

今までの大河はずっと戦国時代や幕末など時代劇ばかりでした。

なのでどうしても大河=時代劇というイメージは抜け辛い所ですし

大河のメイン層もどうしても時代劇ファンになります。

ただ大河の意味は「大河のように長い年月に渡る歴史を書きつづった小説」のことを指す言葉だそうで、時代劇である必要はないのですがやはり時代劇のイメージは強いです。

私の母親もずっと大河を観てきた人なのですが、『いだてん』はどうも観てないようです。理由を聞くと「今までは戦国や幕末のような大昔が舞台だったのに今回は私たちが生まれていた昭和の東京オリンピックが舞台だと、私たちの子供時代が戦国時代などと同じ大昔だと感じてしまい辛い」と言っていました。

今の世代からすると昭和なんて大昔やんwなんていう鬼畜な事は流石に言わなかったです。

 

確かに時代劇ファンからすると『いだてん』は合戦シーンは命がけの戦などはないので物足りないのかもしれないし、「今の時代数少なくなった時代劇ドラマの枠取りやがって、朝ドラでやれや」という批難もあるのかもしれない。これは私の偏見だが時代劇ファンは高齢者が多いイメージがあり、今やテレビメイン層である高齢者が離れるのは視聴率的には大変な打撃である推測出来ます。

2裏の強さ

同じ時間帯に日テレ系列で『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』という視聴率がやたら高い化け物番組をやっいている。それだけなら今までの大河も同じなのだが、一つ違うところは時代劇ファンが離れてしまった『いだてん』は新しい層が流れて来ないとダメなのですが、その時間テレビを観る層は『謎とき冒険バラエティー 世界の果てまでイッテQ!』に定着化してしまいNHKにチャンネル変えないんですね。失った視聴者の代わりが入って来ないと視聴率を上げるには難しいと思います。また最近ではテレビ朝日系列の『ポツンと一軒家』も人気です。もしかしたらこちらは今までの大河視聴者が流れているのかもしれません。

 3視聴率の悪さが視聴率の悪さを呼ぶ

悪評って広がりやすいんですよね。視聴率の悪さもすぐ評判になり駆け巡り観てない人に視聴率が悪い=面白くないというイメージが定着してしまう。

そもそもドラマって中々途中参入が難しい形式で、大河は一年もあるので余計ハードルは高いし、日曜20時にテレビを観る習慣もってる人じゃないと面倒に感じる人も多いと思います。そこは仕方がない。

 

 4東京オリンピックのイメージの悪さ

『いだてん』の制作決定の裏側には2020年にやることが決まっている東京オリンピックを盛り上げる為だと思います。

ただ、この東京オリンピック自体がネット民を中心に評判が芳しくなく、『いだてん』も政府のプロパガンダだという揶揄をよく見かけます。

そういった層が『いだてん』の低視聴率に乗っかかりネガキャン的言動しているのもよく見かけますね。所謂先品自体のアンチ以外にも政治的にネガキャン活動おこなっている層がいることもこの『いだてん』の特徴になっていると言うことです。

 

 

 以上が私が考える『いだてん』低視聴率の理由ですが、ここからそんな『いだてん』だが、だからこそまだ観てない人はこの超名作ドラマを一から楽しめるのが羨ましいし、絶対オススメだという事を書いていこうと思います。

 

歴史を描く

戦国時代などの時代劇モノはどうしても資料が欠けているという事もあり、脚本家の改変が目立つモノも多く、たまに主人公を目立たせるため「イヤイヤそれはありえへんやろ」みたいなツッコミたくなる改変もあるのだが、『いだてん』では主人公だけではなく、登場人物一人一人をきちんと調べ上げており、史実を元に間を細かく埋める作劇になっているのは観ていて歴史へのリスペクトを感じる。

また、歴史通りだから観ていて刺激が少なく暇になるのかと言えばそんな事は全くなく、第一話で主人公目線ではなく嘉納 治五郎が日本のオリンピックの挑戦の話で進み、最後の最後で救世主的存在として万を辞して主人公の金栗 四三が登場して興奮のまま一話が終わるなど刺激溢れる演出と、史実通りなのに「天狗倶楽部」のメンバーなど本当に細かな脇役一人一人がキャラが立っており何より笑えて愛せる造形になっているのはクドカンの脚本と演者の実力の賜物だろう。

そうこのドラマは歴史ドラマとエンタメドラマの丁度真ん中に絶妙なバランスで立っているのだ。

 

東京オリンピックを前に考えさせられるスポーツに対する楽しさと教育

「楽しいの?楽しくないの?オリンピック」

第一話でアジアで初めての国際オリンピック委員会委員への就任が打診され悩む嘉納 治五郎の問いがこれである。

「楽しむ」ということが悪という風潮が強かった時代、楽しさを抑える従来の道徳教育での問題意識をもっていた嘉納 治五郎はオリンピックを通して国民に運動の楽しさを知らしめ、国民体育の発達を目指す。

決してかつての日本のスポーツ教育像を褒める訳でも現代的視点で叩く訳でもなく、それをそのまま描くからこそかつての日本の愚かさや歪な所、「お国のため」「家族のため」のために個人を犠牲にするその現代にも通じる問題点などをユーモアたっぷりに伝えてる事に成功している。

 

全ての人にお勧め出来る『いだてん』

勘違いして欲しくないのはこのドラマは決してただのスポーツ賛美ではなく、人間賛歌なのである。「全体主義」の中で「国の代表」という重責を描きながらも個人としてのマラソンの情熱を描き、自分達が未来への架け橋になることの重要さを描いている。

 

当然、今までなマラソンなどの経験者が観たら共感など出来る所も多く楽しめるだろう。マラソン以外のスポーツをしてきた人が観ても自分のしてきたことの共通点や今まで支えてもらった家族や先生などを思い出し、感動出来るだろ。

自分は今までスポーツしてきたことなかった人でも一つの事に熱中する事の楽しさやその責任感、劣等感、敗北感などを容赦なくみせられ悶えられながらも楽しめるだろう。

2020年の東京オリンピックに否定的な人でもその否定する気持ちは変わらなくてもこのドラマが決してプロパガンダに終わらない軸が太いドラマだという事を知り楽しめるだろう。

 

そう、このドラマは全ての人が楽しめるのだ。

何だか視聴率悪くて敬遠しているというあなたや、イッテQにはまっていて観てないというあなた、取り敢えず1度録画でもいいし、再放送でもいいので1度観て欲しい。

嘉納 治五郎により見出され国内初のオリンピック選手になった金栗 四三が次はオリンピックを送り出す立場になっていくその軌跡を描く

 

きっとそれは時代劇ではないが、確かに「大河ドラマ」である『いだてん』の可能性を感じられるハズだと思う。

1視聴者として、逮捕者が出たりなど色々問題があるのは理解できるが、歴史的傑作になる可能性を秘めているこの作品をなるべく当初の予定のまま作り上げて欲しいなという気持ちで胸が一杯だ

いだてん 前編 (NHK大河ドラマ・ガイド)

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