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ホラー色を吹き飛ばす我らがヒーロー!映画『シャザム』感想

マークストロングも博士って呼ばれてたし劣等感をバネに頑張ったんだろうけど、父と兄は髪の毛ふっさふさなのに自分だけ禿げ上がってるし…そりゃ嫉妬もするし闇落ちもするよねって話の映画『シャザム』の感想を書いていきます。

シャザム!(吹替版)

 

 

作品のカラーを変えるシャザムという特異点

映画の予告では吹き替え版の字幕や演出を担当している福田雄一さんのギャグテイストが強く、軽くて親しみやすいイメージが前面に出ているが、実際に観てみると冒頭の車の交通事故二連コンボで精神がやられる構造になっており、製作陣の人の悪さがでていました。

特に子供時代の「選ばれなかった」マークストロングの悲壮感と人生が決定的に変わってしまった出来事。それが大勢の「選ばれなかった」側に共感できる観客を殴りにきていて、暗く重い雰囲気で観に来た映画間違ったのかなと思ってしまうし、その後も母親と離ればなれになってしまった出来事や孤児、学校でのイジメなど精神にガツガツくるような出来事の連続で、観ていてお腹が痛くって来たときに我らがヒーロー「シャザム」が登場し、作品の空気がガラリと変わります。流石ヒーロー。

予告通りの馬鹿馬鹿しく、面白い描写が増えていくのが作中だけではなく、観客の心も救っているようでとても良かったですね。これこそがヒーローたる所以だと思います。

 

特にビリーはシャザムに選ばれたのが今まではじっくりゆっくり確実に選んでいたのに「今回は時間もないし、もうこいつでええか」というやっつけ感があったのも面白かった(焦って手当たり次第に声掛けて記憶処理も施さずにポイ捨てして回る魔術師が一番の元凶

 

シャザムになり、その余りあるパワーでyoutuberになり人気モノになったり、人助けをしますが、あくまでヒーローとしての覚悟もない子供の好奇心と自己顕示としての活動が今までのヒーロー映画にはないシャザムにしか描けないユーモアたっぷりで観ていて笑顔になりました。

この映画、シャザムという底なしの笑顔なヒーローがいなければ本当に展開もキャラクターもしんどい展開の連続で(例外は妹だけ)また、里子制度における疑似家族が今作のメインテーマになっています。

 

本当の家族になるということ

ビリーを引き取ったバスケス夫妻と、その二人の元で暮らすフレディ、メアリー、ダーラ、ユージーン、ペドロの五人の義兄弟。里子制度は養子縁組とは違い、法的に家族になるわけではなく、名字もバラバラ、あくまで18歳(大人)になるまでの仮の家族でです。ビリーは子供の姿の時は本当の母親を見つけられない絶望に悲しみながらもどうにもならない現実に苛立つシーンが目立ちますが、シャザムになると身体だけではなく、性格も人が変わったかのような印象を持ちます。

フレディと馬鹿騒ぎをするその明るく無邪気な様子はこれこそが、悲しみから解放された本来のビリーの姿だと感じられる仕組みなのです。

そう、彼は本当は明るく、優しい人助けをする子なのだと。

そんな彼が探していた母親に出会い、それが本当に求めてきたモノではないと知り、思い出と共に宝物だったモノを母親に渡し、彼は過去ではなく未来を生きていく事を選ぶのです。

家族とは決して血で繋がった人たちのことをいうのではなく、心と愛で繋がった人たちのことを指すという、現代らしい家族の在り方にも直結する話だったと思います。

 

 

最後の義兄弟みんな変身はビックリしましたね。確かにこいつらの出番しつこいなとは思っていましたが、こんな変身があるとは。

また、足が不自由はフレディは自由に空を飛べたり、マッチョに憧れるデブのペドロは筋肉ムキムキのヒーローのなったり、各自が夢を叶えるようなヒーローに変身するのが、押しつけがましくない感動をサラリをくれて、本当に格好良いんですよね。

僕たちも生きていく中でビリー程ではないが辛い事は多い。そんな時は魔法の言葉「シャザム」と言ってみよう。きっと今より少し強くなれるハズ。

 

途中で少し触れましたが、ビリーがシャザムに選ばれて理由。それはおそらく意味なんてない。完全無欠な純潔な精神をもった人間なんていない。しかし、そうあろうとすることはできる。重要なのは押された烙印ではなく、自らの選択なのだ。

傑作映画でしたが、戦いが散漫でエモーションに欠けるのが惜しいなと思いました。次回作に期待です。

 

 

長々と書いてきましたが、最後に一言、言いたいのですが、言ってもよろしいでしょうか。

変身した後に自分で自分のこと名乗れないってヒーローとして滅茶苦茶不便そう。

 

最後までありがとうございました。

  

シャザム!(吹替版)

シャザム!(吹替版)

  • 発売日: 2019/07/24
  • メディア: Prime Video