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映画『ワンピース スタンピード』感想。20年間走り続けたワンピだからこそ出来る奇跡の集大成

正直、『スタンピード』というタイトル聞いた時は結構不安だったんですね。なぜなら尾田先生が監修するようになった『ワンピース フィルム ストロングワールド』から『ワンピース フィルム ゼット』『ワンピース フィルム ゴールド』とタイトルにフィルムが付くようになって、それが尾田先生と映画との距離感の表れというか、作品への信頼の証のようなモノだと思っていたのに今回は付いていない。もしかして、本作は尾田先生そんなに関わっていないのか?それならば、昔の映画のようなキャラの解釈違いに悩む作品になるのか?でも、そもそも尾田先生は漫画家だし、本業である漫画に集中して欲しい気持ちと、やっぱり尾田先生監修した映画じゃないともう満足出来ない身体になっちゃったよあたしゃという相反する気持ちの中で本作を観たのですが、完全にやられました。完敗です。まず東映アニメ主体でありながらもしっかりと尾田先生も関わっていてフィルム問題は杞憂でしたね。尾田先生への負担も少なく、しかししっかり関わっている本作は原作ファンも色々な意味で安心出来る理想的な体制なんだと思う。

そして、家畜などの集団暴走や人間の群集事故を意味する『スタンピード』本作はそんな名前に負けない冒頭からクライマックスまでアクション、アクション、バトル、バトルの連続で完全に圧倒され、原作付きの映画だからこそ出来るオールスター勢揃いの旨味を最大限に活かした展開は「ジャンプアニメ映画」の一つの頂点。

 

そんな本作の凄い所をネタバレ全開で書いていくので、初見の人はまず映画を観て欲しい。

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「鬼の跡目」ダグラス・バレットとロジャー

よくある二番手、三番手の敵キャラもいて、サンジとかゾロはそいつと闘うのかなと思っていたらそんな事はなく、100分近くこのダグラス・バレットとの戦闘シーンで成り立っている本作。とにかくコイツが強いし、ロジャーへの想いが重すぎるというか頭の中がロジャーで埋め尽くされていて、観客の4割ぐらいドン引く。そんな感情檄オモなこいつは映画だと過去が必要最低限に抑えられているが、おまけの1万89巻を読めば詳しく書いてある。

まとめると

戦争の終わらない国で少年兵として働き、最後は味方にも裏切られ自国を滅亡させる

30年前 バレット(15歳)がロジャー海賊団に加入
28年前 ロジャーの不治の病が発覚 クロッカスがロジャー海賊団に加入
27年前 バレットがロジャーに善戦するが敗北、独立 エッド・ウォーの海戦(シャンクス、バギー12歳)
26年前 バレット(19歳)vsクロコダイル(20歳) 決着は付かず
25年前 ロジャー海賊団が偉大なる航路を制覇
24年前 大海賊時代の始まり
23年前 バレットがインペルダウンに投獄される

といった感じでなぜかクロコダイルの株が上がるという謎現象になる。

そしてある意味本作の主役ロジャー。

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ワンピース0巻

個人的にはロジャーって万物の声が聞こえたりするけど、そんな肉体派っていうイメージがなく、いくら覚醒覚えていない時のバレットだからってタイマンで勝てる程強いとは思わなかったのでイメージが大分変わりました。舐めてました海賊王(まぁそりゃ白ヒゲと張り合っていたのだから強いに決まっているよな)

そして「ワンピースは俺の息子が見つける」発言。

実際問題、エースは死んでしまったので不可能になってしまった訳だけど、エースと血の繋がり以上の兄弟となったルフィがいる。彼がエースの想いと意志を引き継ぎ、ワンピースを見つけてくれると信じている。

 

そしてバレットもラフテルの場所分かったんだからひとつなぎの財宝(ワンピース)目指したらいいのにそうはせず、行動原理が全てロジャー越えなので、ロジャーの代わりにロジャーのような強い奴を倒す事を目標として行動する。全てはロジャーに認めてもらうためだったのにそのロジャーがいない、そんな現実に苦しみながら。

そして「一人だから強い」というバレットの信念と相反する「仲間がいるから強い」ルフィと激突し、ルフィはバレットの人生を否定するのではなく「本当に一人きりの奴などこの海にはいる訳ない」と自分の気持ちを真っ直ぐにぶつける。バレットのその戦いの中、ロジャーの面影、自分が本当に欲しかった、求めていたモノを思い出し、敗北する。


ゴールドロジャーの宝

本作のトリガーとも言える存在。宝箱に収められた「海賊王(ロジャー)の遺した宝」

その正体は「ラフテルへのエターナルポーズ」

ラフテルとはグランドラインの最果てにある島であり、この島を確認したのは、海賊王ロジャーの一団だけ。多くの海賊がこの島を目指し、ひとつなぎの財宝(ワンピース)を手に入れる野望を持っている。原作では全世界に4つしかないラフテルの在処の鍵となる地点が記されており、それを繋げた交点にラフテルは所在すると言われるロードポーネグリフを求めて4皇と激しい戦いをしている所だ。

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ONE PIECE第818話「くじらの中で」

本作ではそんなラフテルのエターナルポース(永遠に特定の一つの島を指し続けるアイテム)という海賊や海軍、政府が血眼で奪い合うのに納得たりえるモノなので、アクションの連続にも説得力がある。

しかし、最後ルフィはそんな宝を潰す。

なぜならルフィが求めているモノは「冒険」であり、ラフテルはその延長にあるモノだから。

だから、その冒険を省略させてしまうモノに興味がない。これはレイリーからワンピースとは何かを聞かなかった時と同じ行動であり、「何がどこにあるかなんて聞きたくねぇ!!何もわかんねぇけどそうやって命がけで海に出てんだよ!!ここでおっさんに何か教えて貰うならおれは海賊やめる!!つまらねぇ冒険ならおれはしねぇ!!」という台詞に全てが詰まっている。

「冒険を楽しむ」それこそがルフィなんだなと。

そして本作でもっとも重要と言っても過言では無いラフテルの綴りが判明した件。

「Laugh Tale」(笑い話)なのワンピースの正体における重大な要素になるのでは!?

そしてとうとう本編でも第967話で「Laugh Tale」(笑い話)だと判明した。

ワンピース、佳境に入っているのかもしれない。

 

www.shachikudayo.com

 

オールスター勢揃いな各キャラ達

オールスター勢揃いって響きは良いけど、限られた時間に中でやられても満席の居酒屋に「よっ!大将やってる?」と常連が暖簾をくぐっただけで帰ってしまうように顔だけだして帰るキャラがいて、「まじで何の為に来たんだ?」って思ってしまう事の連続だったりしますよね。特にワンピースはこの前、『ワンピース:ワールドシーカー』というゲームであのキャラやあのキャラが出ます!って宣伝だったのに本当に出るだけでフワッとルフィの前に出てきて一回戦って退場というキャラ多すぎてイヤイヤイヤイヤとなっていたのですが、

本作ではそんな事は一部のキャラを除いてはなく、どの角度からも楽しめる出来になっている。主要メンバーを紹介していく。

 

ルフィ

「一人だから強い」というバレットと違いを表す為に、行動原理がウソップの救う為、ウソップを守る為、ウソップがまだ負けていない事を証明する為と常に仲間の為の行動だったのも「仲間がいるから強い」ルフィをよく表現出来ていたなと思う。

最後に決闘でBGMにウィーアーが流れるのはずるい。あんなんサントラ買うわ。

ウソップ

まさかこんなに本作で注目されるとは思っていなかった一人株上げまくった男。

過去の回想からのBGMがMemoriesはずるい。狙撃手は戦いでの補佐とか言いながら物語の主人公だった。

麦わらの一味

登場人物が兎に角多いのでどうしても過去作より出番が少なかったりするが、それぞれが船長の勝利を一片の疑いもなく信じていて、そこから自分に何が出来るのかを考えている。その関係性が本当に良い。

スモーカー

「ただモクモクしちょるだけのみじめなロギアじゃけぇ」と赤犬に言われそうなぐらい新世界編に入ってからカマセカマセな役割だったが、本作では大活躍(炎と比べてダメージは少なそうだが)エースと同じ事を言うサボとの共闘も熱い。ケムリンファン必見映画だと思う。こんなケムリンが観たかったんだよ!と思える。

ルッチ

劇場版 ONE PIECE STAMPEDE (JUMP j BOOKS)

お前表紙にも出てくるくらいのキャラなのにその活躍度合いは駄目だろ!

確かに他のキャラより小さいなとか思ってたけど、予告ではルフィが認めた共闘のメンバーみたいだったのにまさか違うとは。まぁでもCP0ならこのぐらいの関わりが限界なのかもしれない。

キッド

お前も覇王色の覇気持ってるんだし、ルフィとバレットが覇気合戦している中に加われよとか、お前のジキジキの実の力でガシャガシャの実発動させているバレットの邪魔ぐらい出来るだろ!とか思いますけど、原作の展開知っていると健全なキラーと仲良くしているだけで涙出てきますよ。幸せに。

ハンコック

ギャグも戦闘力も見た目も最高で素晴らしい。本作の隠れたMVPだと思う。好き。

ウルージ

最悪の世代の中で地味にルフィ以外で唯一殴ってバレットを吹き飛ばしていてその強さがよく分かるし、2年前はパシフィスタを飛ばすことすら出来なかった因果晒しでバレットを滅茶苦茶吹き飛ばしたのも成長がよく分かって感動する。時代はウルージ。

ロー

相変わらずお前の部下が活躍するシーンはないよな。チョッパーに抱っこされてるお前可愛いよ。

サボ

最後のあのエースとの共闘はずるい。完全に物語は終わる所で油断もしていたし、まさか出るとも思っていなかったので感情のピークが最後の最後にやってきた。

 

最後に

ONE PIECEアニメも20周年。

その積み重ねの集大成だからこそ出来るような作品で、僕たちは20周年以上ワンピースのキャラ達と共に成長し、一人一人のキャラにそれぞれの愛着を持つようになった。

そんなキャラ達が集結し、利害の壁を越えて共闘する。

それだけで燃えるし、ワンピースを追い続けて良かったと思える。

おそらくワンピースの最終局面でも今回で味わった「燃え」以上の事が起きると思うと、今からドキドキが止まらない。

でも、それはまだ先の話、クライマックスはもう少し先。僕たちはそれまでワンピースという物語を楽しむ。それはまるで冒険を楽しむルフィのように。

最後に一言

パンダマン出過ぎじゃね