社会の独房から

映画やゲーム、漫画など。

ドラクエの映画で起きた「SNS夏のネタバレ祭り」で思うこと

「映画自体は観たことなくてもオチはSNSなどで何となく知っている」映画で有名になった『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』

この現象は「令和のシックス・センス」と言っても過言では無いと思う。

【映画パンフレット】 ドラゴンクエスト ユア・ストーリー DRAGON QUEST

ではなぜみんなが『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』のオチを知る事になったのだろうか。一つは含みある感想ツイートが気になって自分からネタバレ感想を見た聞いたパターン。これはまぁ自由にしたら良いと思う。ネタバレ見てから映画を観るのが好きという人もいるだろう。

 

もう一つはツイッターなどSNSで事故的に知ってしまったパターンである。 

基本的に最近のツイッターは「ネタバレ」に厳しい雰囲気がある。どうしても一部愉快犯や捨てアカからのネタバレ攻撃は無くならないが、何年もツイッターをしている人同士であれば、お互い無言のマナーが出来つつある(たまに齟齬が生まれて荒れる事があるが)しかし、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は違う。マーベル作品でのヴィランネタバレに激昂した人や、FGOで新宿のアーチャーの正体バレツイートにネタバレ厳禁やぞ!!と切れた人や仮面ライダー映画のスペシャルゲストの正体をネットメディアに発表されて炎上させた人ですら、この作品の肝となるオチを含めて比喩ではない直接的なネタバレをしているのを散見する事になった。

 

ではなぜここまでネタバレ祭りに発展したのだろうか。一つは『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』を語る時にどうしてもあのオチは避けては通れないという事が一つ。そして、やはり一番の理由はドラクエの映画は公開直後から賛否ではなく圧倒的な「否」の嵐となった所だと思う。

 

未だに馬鹿にされる実写版『デビルマン』が顕著だがネット、特にツイッターはつまらないや原作レイプなど怒れる(と周囲の空気によって決定された)作品に対しては何をしても良いという合意があるように感じられる。

そんな雰囲気の中、令和版実写デビルマンみたいと呼ばれる『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』に作権がなくなってしまうのは自明の理なのかもしれない。

 

SNSでのネタバレは大きく分けて2つあると考えられる。

フォロワーからのネタバレとフォロワー外からのネタバレだ。

フォロワー外からのネタバレの代表例は、ここ数年ネタバレ騒動で問題になっている劇場版『名探偵コナン』で鑑賞予定者に対し、「犯人は○○(伏字は犯人の名前)」とリプライを送る。また、犯人の名前を冠したアカウントが「いいね」を付けるという嫌がらせだ。

そもそもコナン映画で犯人とかそういうミステリー要素を期待して映画を観に行っている層がどれだけいるのか気になるが、本題ではないのでここはスルーする。

この嫌がらせも対処が難しいが、コナン映画ネタバレ騒動は毎年恒例になっているので、そもそも「コナン映画これから観に行く」ツイートをしないなどの自衛は必要だ。

 

そしてもう一つのフォロワーからのネタバレが今回の本題だ。

基本的にSNSでのネタ防止はフォロワー同士の相互監視と配慮で成り立っている。

「あっこのツイートするとネタバレになるな」とか「これRTするとあの人に対してネタバレになるな」などだ。

ただ、ここで問題になるのが二つある。一つはどこまでをネタバレとするかその境界線だ。

例えば最近上映された『トイストーリー4 』がある。これはその終わり方から一部のシリーズファンから過去作の否定など叩かれていた。直接的なネタバレは少なかったが、正直オチはその阿鼻叫喚具合で何となくわかった。

ただ、そういう所までダメならもはやSNSで映画の感想なんて「面白かった」「つまらなかった」「溶鉱炉の中に沈んでいく」以外呟けなくなってしまう。ある程度お互い様の精神は必要だと思うし、普段からその人の感想ツイートを見て、自分にとってのネタバレの境界線と同程度が認識している必要がある。又はSNSから離れろ。

そしてもう一つが、映画公開してからいつまでネタバレを禁止しないといけないかと言う事だ。「俺が観終わるまで」「劇場公開が終わるまで」「DVDやネット配信されるまで」「金曜ロードショーでやるまで」「そもそもネタバレに時効がない」などなど人の数だけルールがある。それをお互い空気を読みながら映画感想をツイートしているのが現状だ。最近ではフセッターという便利なモノが出来て、ネタバレ騒動はグンと減った印象がある。

 

その中で最近ある映画が公開された。

アベンジャーズ/エンドゲーム』である。

公開前に監督であるルッソ兄弟が本作における“ネタバレ禁止令”を公式に発表した。

マーベル作品はネットにファンが多い事もあって、これは効果が抜群だった。

ちょっとしたネタバレ要素でも見つけ出し、仲間内で晒し、総攻撃しているのをよく見た。

当時はその現象、少し怖いなと思う事もあったけど、今考えると熱狂的なファンを獲得しているのもマーベル作品の強みだと思う。『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』はネタバレしてもファンがそもそも少ないので誰からも怒られないという悲しい事実。

 

エンドゲームは2週間後、公式から直々にネタバレ解禁。公式からのネタバレ禁止は偶にあるがネタバレ解禁は本当に珍しいと思う。あまりの珍しさとその2週間という早さから本当にネタバレしてもいいのかという戸惑いの声も多かったが、チキンレースのように段々ネタバレする人も増え始め、結果的に他の作品よりネタバレスピードが速かった映画だったとも言える(感想を言い合いたい、確認し合いたい作品だったので、そこの戦略も上手かったなと思う)

 

そんな中、別に公式がネタバレ禁止も解禁も何もいっていないのに公開翌日にはネタバレ解禁していた『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』

基本的に上記のエンドゲームみたいに公式でネタバレ禁止している以外の作品は観客に判断が委ねられている訳なので、別にネタバレ自体が悪いとは一概には言えないと思う。この『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』も所謂炎上商法というか、この終わり方が良くも悪くも悪くも悪くも評判になり、気になって実際に映画館行った人も多いと思うので。

ただ、これは『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』だけの問題ではなくて、これが許されるなら、これから上映される映画などの娯楽作品でも、公開初日初回で観なければネタバレされる可能性が高くなった事を意味すると思う。

お金を払って作品を鑑賞して、実際にそれがクソで、観客を馬鹿にしたような内容で、怒りが止まらない、お金を無駄にした後悔でハゲそうなど様々な負の感情がわき出た時にでも、ある程度のクリエイターに対する配慮と尊敬がなければ、結果的に観客にしわ寄せが来てしまう事もあるのだと頭の隅には置いて欲しいなと願うだけだ。

 

そして、この問題で一番モヤモヤしてしまう事は、今までネタバレに対して厳しい事を言っていた人も『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』ではネタバレしていることだ。

マーベル作品など面白い映画は初体験の感動を損なわせてはいけないのでネタバレ厳禁だが、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』のようなつまらない映画は感動もないし、そもそも観ない方が良い、またはネタバレして覚悟を持ってから観た方がよいのでネタバレしても良い」という「それはお前が決める事ではない」押しつけがましい考えが透けて見えるのが良くないと思う。そもそもどんな映画だってつまらないと感じる人はいるし、その人はネタバレしても良いのかという話しにもなってくる。

例えば映画『カメラを止めるな!』という作品。あれも何も知らないまま観た方が楽しいという理由で、観客がこれからの観客の為に配慮している光景を何度も見てきたし、実際超長期上映だったにも関わらず、SNSでのネタバレに厳しかった(それ自体がネタバレを誘発している可能性はあるし、上映館が少ないという事もあったので一概には比べられないが)

出来不出来の差はあり、『カメラを止めるな!』と違い、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』はオチを楽しめる事が出来ず、庇う必要がないからネタバレする。それで良いだろうか。

 

基本的にネットは自由なので犯罪でなければどんなツイートをしても良いと思うし、普段からネタバレガンガンする人ならそんな人をフォローしているこっちが悪い。

ただ、普段はネタバレやめろと言っている人が作品によってはネタバレするとせめて一貫性をもってくれと切実に思ってしまう。ただ、人は変わる生き物なので、一貫性なんて無理と言われたら何も反論出来ません。私も今はこんな偉そうな事を言っているが、明日には承認欲求に負けて『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』のネタバレを大きな声で言っているかもしれない。その時は笑って許して欲しい。自分には甘く生きていきたい。

 

 個人的にこの「SNS夏のネタバレ祭り」で辛かったことは本来このネタバレ祭りに苦言の一つも言っていいネットメディア関係者ですら、この炎上の流れにのってツイッターで平然とネタバレツイートしている所であり、ボロクソに作品を叩いた自分達の記事が注目されて喜んでいる所である。別に擁護する必要はないが、暴走するSNSに便乗するメディアしか出てこない事に対して疑問に思ってしまう。

 

また、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は公開直後から「邦キチ案件」と言われ(個人的にはそこまで「邦キチ案件」思わないが)とうとう実際に『邦キチ』で取り上げられてしまった。読んでみると、オチをネタにしていて、公開してまだ2,3週間ぐらいの映画でネタにして良いのか少し考えてしまう(調理の仕方も上手かったし、面白いのは面白かったが)

 

結局の所、フォロワー同士のネタバレ相互監視は少しバランスがおかしくなるだけで崩れるなるような柔らかい壁であり、私たちはそんなバランスの中でSNSをしている事は肝に銘じていないと駄目だ。そして影響力が強い人がネタバレし出すと俺も俺もと金魚のフンのようにネタバレし出すので、そういうのを見かけたらネットから離れるのが大切だと思う。

ここから、簡単ではあるがSNSでのネタバレ対応策を書いていく。

 

SNSでのネタバレに対してどうすれば良いのだろうか

SNSでの基本的な考えは他人を信用せず、自衛が求められる。本当に人は信用してはならない、なぜならネタバレの基準は人によって違うし、信用した人でもその日の気分などによってネタバレだと感じる時もあるだろう。映画公開前後はピリピリしているのも関係しているだろう。

特に劇場鑑賞を予定している作品であるならば、まず関係ワードをミュート。これで大体防げる。最悪SNSから離れるのも良い。

 

自衛自体はそこまで難しくない。ただ、「この人は公開直後の映画でもネタバレする人だったんだ」という感情は忘れる事がないと思うし、「この人はあの作品ではネタバレに怒っていたのに」という昔のことでも意外と覚えているという事は覚えていて欲しい。

 

最後に

周りがネタバレしていると自分もして良いような錯覚に陥ってしまう。

本当にネタバレすると自分が決めたなら止める事は出来ないが、流されているだけならツイートする前に今一度考えて欲しい。それはツイートしても良いのかどうか。

SNSは1度叩いても良いという雰囲気になるともう誰にも止める事は出来ないが、それでも立ち止まる事は出来るし、考える事は出来るハズだ。

大切なのは「自分を持つ」という事であり、みんなが叩いているから、馬鹿にしているからではなく、ネタバレするならネタバレする決意とネタバレに対する自分なりの考えと信念を持って欲しい。『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』に怒りを持ったからネタバレするなら、他の人が他作品に対して怒りを持ってネタバレする事に寛容になって欲しい。

ただ、「ネタバレが怖いならSNSなんてするな」もある意味本質だと思うので、気になる作品があるならSNS断ちをしましょう。誰も君の映像体験なんて守ってくれないよ。

 

そして最後に『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』を鑑賞せず、ネタバレ感想だけ読んで分かった気持ちになり、この炎上に便乗して叩いている人も多いと思うが、そんな行為は一次ソースを読まず、まとめサイトだけ読んで分かった気持ちになったり、見出しだけ読んで理解したつもりになっているだけの愚行なので、鑑賞する気がないならないで『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』に触れないで欲しい。別にネットで話題になっているからって無理する必要はないんだ。無理して話題食べ食べ人間になる必要はないんだ。自分が食べれるヤツを美味しく食べてくれ。

君は君のままで君自身のユアストーリーを楽しんで欲しい(これが言いたかっただけ)