「本当に好きなものは、好きなままでいいんだよ!」
これは劇中での主人公ハヤトのセリフであり、 『新幹線変形ロボ シンカリオン』というアニメ作品の大きなテーマである。
↑悪いオタクになってしまったのでこういう説教臭い奴は鼻につくが好きなのだ
(C)プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・The Movie 2019
オタクなら自分の好きなものを様々な事情から手離す経験はあると思う。
私はある。
子供の頃、『美少女戦士セーラームーン』が好きでアニメをよく見ていた。
ただ、成長するにつれ、男の子であった私は『美少女戦士セーラームーン』に抵抗が出てきた。
理由はハッキリしていて、周りの友達に『美少女戦士セーラームーン』が好きだと伝えると「男なのにセーラームーン好きなのかよ!」とバカにされたのがトラウマになり、誰にも『美少女戦士セーラームーン』が好きだと言えなくなったからだ。
当時、ネットが今ほど普及していなかったのも大きい。リアルでの知り合いが世界のすべてになる。どれだけセーラームーンが好きでも、男の子が見るのはオカシイという固定概念が私を占領し、別のアニメやゲームを好きになるように自分を変えていった。
また、当時のセーラームーンの放送時間が19時という丁度晩ごはんの時間であり、必然的にリビングで親と一緒に見る事になるのだが、段々と親と一緒にセーラームーンを見るという行為が「恥ずかしい」と思うようにもなってきて、最終的にアニメすら見なくなってしまった。子供は大人が思っている以上にナイーブなのだ。
私の中での『美少女戦士セーラームーン』への好きさはこの程度だったのかもしれない。そのまま私は大人になり、私の中でのセーラームーンは消えていった。
社畜になった私は、頭がオカシイ程の仕事の忙しさと会社後の飲み会という名の強制イベントが連日発生し、仕事から帰った後は資格勉強と、寝る間も惜しんで「社会人」になっていった。
映画や漫画など元々の趣味は消え去り、週末は接待ゴルフなどに勤しみ、朝3時には起きて、先輩を車でお出迎えなどして、身体と精神をすり減らしていった。
それが、大人になる事だと当時は思っていた。
そんな生活を4年程頑張ったある日、私は仕事で大ミスを犯した。
言い訳になるが、完全に疲れからくる単純なミスだったのだが、気づくのが遅く、大事になってしまった。
当時の私は仕事の評価が全てだった。
全てだったのに、その一つのミスで、上司から罵倒され、客先からは信頼を無くした。
死にたかった。
生きる意味が分からなかった。
会社に戻るのが嫌で嫌で、上司からの電話を無視して、営業車に引きこもっていた私は現実逃避でニコニコ動画を眺めていると『美少女戦士セーラームーンCrystal』を見つけた。
絵柄などは当時アニメで見ていたセーラームーンとかなり変わっていたので違和感はあったが、そんなモノ関係なしに「好き」という感情が私の中で蘇った。
そう、どうしようもなく「好き」なのだ。
こんなにも「好き」で「大事」なものだったのだ。
私は営業車でただ独り泣いた。
大人になってこんなにも泣いたのは初めてだった。
そこから私は少しずつ社会人と趣味のバランスを考え始めた。
趣味はたかが趣味だが、それ故に大事なモノだと気付いた。
世の中って、好きなものを好きなままでいられるのって意外と難しいと思う。
それはジェンダー的理由であったり、そもそも生きる事は忙しい。
それでもずっと好きなモノを持っているあなたは素晴らしいし、そうでないあなたもその血肉には今まで好きだったモノが流れており、再び目覚めるのを待っているものなのかもしれない。
様々な辛い想いや、苦しい事。それらは私たちに常に寄り添っており、偶に耐えきれずに倒れてしまう事がある。そんな時、自分が好きなものが好きではなくなってしまう。
自分の好きなものを否定してしまいたくなる。
でも本当は、普段は気にしてないだけで、「好き」のお陰で、一杯の楽しい思い出や、些細な幸せが生まれてくる事もある。
そんな想いを思い出して独り泣いた映画『劇場版 新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』感想を書いていきたい(前置きが滅茶苦茶長くなってしまった)
(C)プロジェクト シンカリオン・JR-HECWK/超進化研究所・The Movie 2019
2018年より地上波で放送が開始した「新幹線変形ロボ シンカリオン」の劇場版。突然の敵の攻撃により父・ホクトが行方不明になってしまう。不安を隠せないハヤトの前に現れたのは、なんと時空を超えてやってきた“9歳のホクト”だった。光の粒子に包まれてタイムスリップしてきた<少年ホクト>は地球を守るため、そして元の世界に戻るため、最新技術を結集し完成した「シンカリオン ALFA-X」の運転士になることを決心する。2人の想いとともに、北海道支部・山形支部・大宮支部・名古屋支部・京都支部・門司支部から集結した<チームシンカリオン>は宇宙最強の敵に立ち向かっていく......。
東宝まんがまつり
『劇場版 新幹線変形ロボ シンカリオン 未来からきた神速のALFA-X』観た。エヴァや初音ミク、平成〇〇〇など平成ポップカルチャーの総まとめみたいな平成映画。
— 社畜のよーだ (@no_shachiku_no) 2019年12月27日
お話はお祭り感凄くて雑気味という平成要素もありつつ、東宝が提供する全部マシマシの二郎ラーメンを食べたような満腹さで幸福度が凄い pic.twitter.com/V1ME8Zg1wM
正直、今までのキャラ総出演や父とのエピソード、新しい敵の出現、そして何よりコラボ。
ノルマが多すぎて、79分ではうまくまとまっていない感じはあったが、それを犠牲にしてもコラボお祭りとしてよく出来ていたなと思う。
ただ、ゴジラは一体何だったんだという疑問のまま疑問で終わってしまったりしてそういう細かい点が気になる人には向いていない映画だと思う。良くも悪くも平成映画だ。
個人的には、なんだかよく分からん内に冒頭から次元移動に巻き込まれて現れ、なんだかんだ助けてくれるのが凄く平成ゴジラっぽくて良かった。シンゴジラではない。
パンフレットで「『シン・ゴジラ』での新幹線爆弾のシーンが印象深く、そのシーンの恩返し的な意味もある」と書いていて、そっからのコラボなの!?と笑ってしまう。
あと、JRSKISKIのCMパロディが出来良すぎて、円盤にちゃんと収録されるか心配だ。
必ず買うので収録お願いします。
イラスト
てれびくんやコロコロ、HPで募集した「描いたイラストがエンドロールで流れる」企画、子供向け作品ではよくある事だが、本作では劇中で少年ホクトが描く「未来に新幹線」と重なる仕組みはうまい。
あのイラストを描く見ず知らずの子供達。彼らのイラストに込めた想いや、夢が将来、映画のように「シンカリオン」として実るだと思うと、胸をうつ。これこそが超進化速度なのではないだろうか。
最後に
テレビアニメシリーズが終了となり、これからどうなるのか、本当に終わってしまうのかファンから心配されていた訳だが、シンカリオンはこれらかも走り続けるという最後にメッセージに安心した人も多いのでは。
受け取ってしまった以上、ついていくしかない。
私はもう、自分の好きは好きのままでいたいから。
あなたもそうであってくれると私は何だか嬉しい。
最後に一言
「シンカリオン・・・まことよいものだ」