ジャンプ戦線審美眼が高次元の諸君なら、新連載1話目で、その漫画が大ヒットするか、打ち切りになるのか「読む」ことが出来るだろう。
私も自分で言うのも何だが、ジャンプ戦線審美眼の高次元ホルダーであり、今までも数多くのジャンプ漫画を1話目で「更新」か「打ち切り」かを当ててきた。
確率で言えば連番の宝くじ10枚セット買って、300円当てるぐらいだ。
そんな私でも、弘法にも筆の誤りでないが見誤ることがある。
それが『デモンズプラン』だ。
1話目を読んだとき、これは「来る」と確信してしまった。
しかし、結果は12話打ち切りである。
悲しい。
今回はそんな『デモンズプラン』の感想をネタバレありで書いていきたい。
【作者】岡本喜道 2016年51号~2017年12号・全12話
単行本全2巻
あらすじ
真に切なる願いを言えば、悪魔が現れ叶えてくれるという「悪魔の設計図」────
その秘宝への挑戦料「100万」を貯めるべく、必死で日払いの仕事に励む貧しき少年ボロとカルロス。
二人は無事にハッピーエンドを掴み取ることができるのか、それとも────!?
ジャンプが贈る、悪魔幻想譚、ここに開幕!!
1話の完成度
『デモンズプラン』を語る上で第1話は避けては通れないだろう。
選ばれればどんな願いでも叶えてくれる悪魔の設計図(デモンズプラン)
主人公ボロとその友人カルロスはその設計図に挑戦するために日夜働く。
過去の回想を入れつつ、ボロとカルロスの関係性や各々の性格を丁寧に描いている。
(C)『デモンズプラン』第1巻
↑親分、子分の関係性も尊い
だが、挑戦権を得るためのお金が溜まった日に冤罪でカルロスがボロを庇い捕まる。
(C)『デモンズプラン』第1巻
↑このシーンどうしても『ONE PIECE』のねずみ大佐がナミの家に押しかけ、1億ベリー寸前まで来ていた彼女の貯金を根こそぎ没収するシーンを彷彿とさせるし、第2話の今までお世話になった人との別れのシーンもサンジの別れみたいでどことなく『ONE PIECE』臭はする。
監獄でカルロスは悪魔の設計図が上級国民たちが作った偽物である事、夢と希望を持った下級国民から金を巻き上げるために作られた事を知る。
(C)『デモンズプラン』第1巻
↑記念すべき第1話だけあって、作画も気合い入っている。読んでいてゾクゾクしてしまう。
カルロスは絶望と復讐と憎悪から「破壊慾」の悪魔になってしまう。
実は悪魔の設計図とは「どんな願いでも叶えてくれるもの」ではなく、慾を糧に「人間を悪魔に作り変える」ものだったのだ。
彼は言う。「どんなに種を撒いても、土が腐っていれば花は咲かない」
(C)『デモンズプラン』第1巻
↑今まで守られる立場だった男が、力を手に入れ守る側になろうとするその構図も美しい。
「世界を牛耳る屑」を葬ろうとする友人を救うため、子供時代にカルロスが道を間違ったら絶対に止めると誓っていたボロは「守護慾」として悪魔に身を落とす。
ボロは滅茶苦茶硬い鎧を腕に生えるという物凄く地味な能力を手に入れる。
2人とも悪魔になってしまい、カルロスは「パトロン」と言う悪魔に連れされどこかにいってしまう。
ボロはカルロスを探すために旅に出る事を決意する。
ここまでが1話である。
いや、完成度高くないか?
全12話という事は1話の時点からそんなにアンケート結果は良くなかったことは考えられるが、私はこれを読んだ時、ボロ(CV:梶原岳人)のアニメ化まで見えたのだが。
ナルトとサスケみたいな関係性も人気が出るには良いと思う。
確かに、「主人公たちにクソ理不尽で可哀想で救いのない目にあわせてやるぜ!」的行為をしてきた敵がカルロスによりあっさり退場させられたり、ボロが悪魔として覚醒後も「スカッとジャパン」な展開になるには少しカタルシスが足りなかったのかもしれない。あと、どことなく『ヨアケモノ』臭がするのもよくなかったのかも。
ただ、この漫画の問題点は2話以降で1話は良かったとわたしは信じている。
悪魔同士の殺し合い
2話で本作の縦軸が判明する。
悪魔は全部で108体。悪魔は歪な不老不死であり、死ぬためには他の悪魔に殺されるしかない。
また、他の悪魔を全て殺せば人間に戻る事が出来る上、どんな願いも叶えられる。
いわばバトルロイヤル状態である事が判明する。
ここで多くの読者が「別に悪魔のままで良くない?」という疑問を持つ。
これを本作は見事に答えている。
1つは「どんな願いも叶えられる」というドラゴンボール的慾を叶えるため。
1つは殺し、殺されの関係性が永遠に続くことから逃れるため。
そして、もう1つ。
不老不死故の哀しさである。
「正義慾」のユースティスは妹が悪魔「ロブリオン」に襲われる事を知り、ボロに救いを求める。
(C)『デモンズプラン』第2巻
↑正義慾だが、理由があれば女子がいる部屋に勝手に入ったりもする。
ここでユースティスの過去の回想が入り、ユースティスと妹の関係性、ロブリオンとの因縁が判明する。
(C)『デモンズプラン』第2巻
ボロはユースティスの妹を守るため村にいき、妹だと思われる女性を賊から守るが、その女性はユースティスの事を知らなかった。
疑問に思ったボロはユースティスに理由を尋ねるが、実はボロと読者が聞いていた回想は56年前の話であり、回想に出ていた妹は現在老婆になっており、先程救った女性は孫娘だった事が判明する。
この漫画、基本的に漫画が下手くそなんだけど、ここの叙述トリックだけクソ巧い。
同時に不老不死で自分だけが歳を取らないことの哀しさを間接的に表現しており、感心してしまう。
これは悪魔が不老不死で歳を取らないからこそ出来るトリックなのだが、今までの漫画の展開から読者はこの作者が「直球」しか描かないと油断しまくっている時にこれである。
大ドンデン返しがあると身構えていたり、巧みな作者だと知っていると「なる程〜うまいな」って感心するだけだが、予想外の方向からのドンデン返しは「まじか!!」って驚く。その違い。
残念なのは、ここがこの漫画のピークという事だ。
カイリキー
打ち切りになったしまったので必然的に本作のラスボスになってしまったのがロブリオンなのだが、彼は腕が増える。
(C)『デモンズプラン』第2巻
「増殖」とかそういうタイプの能力なのかと思いきや、彼の能力が「超再生」と判明して?????????ってなる。
最終的には腕が8本になる。
超再生だと腕が増えるってどういう理屈なのだろうか。
- 元々腕が増える種族だった。
- 毛を抜いたらその毛穴から2本生えてくることがあるのと同じ理屈。
といったところか。
自己再生を習得したカイリキーなので滅茶苦茶強く、ボロは苦戦する。
しかし、ボロの主人公なので苦戦すれば新しい力に目覚める。
彼は今まで腕にしか装備できなかった鎧を全身に装備できるようになったのだ(今でガトリングに撃たれた事など、どう考えても腕の鎧だけでは身体全体守れなかっただろというツッコミは野暮なのでしない)
(C)『デモンズプラン』第2巻
絶妙にダサい。
しかも、いきなり唯一の肌身である顔を殴られてしまう。
初登場シーンでありながら活躍しないまま終わってしまうのか、そんな不安を感じてしまう読者だが、流石にこのままでは終わない。
カイリキーを効果抜群のエアスラッシュでひんし状態にしたボロは主人公らしく殺生まではしたくないと言う。ただ、このまま野放しには出来ない。その結果。
(C)『デモンズプラン』第2巻
兵糧攻めである。
デモンズプラン界の豊臣秀吉である。
介錯ではなく飢え殺しを選ぶのは中々の鬼畜。
治安の悪さと民度の低さ
私は漫画の世界観の中で「治安の悪さ」「民度の低さ」が面白さに直結すると思っているが、本作も異次元の世界観をしており見ていて飽きない。
最初、中世ヨーロッパみたいな世界観だと思って読んでいたのだが、
「収集慾」と呼ばれる体の中が異空間でありそこに入れた物体を自由に出せる敵が出てくる事により混乱する自体になってしまう。
彼が、対戦車砲であったり、ガトリングガンであったり、5m程のミサイルを出してくる。
普通に重火器が出てくることに驚くし、ボロたちが受け入れているのにも驚く。
その割には重火器が存在するとは思えないような国も出てくる。
(C)『デモンズプラン』第2巻
↑王様の護兵が剣やら槍を装備しながらミサイルもある。
また、賊もピストルにバスターソードにタンクトップである
(C)『デモンズプラン』第2巻
汚いFF7みたいな世界観好きだし、何でもアリのファンタジーもこれはこれで良いよね。
最後に
本作は完全な「俺たちの戦いはこれからだ!」で終わる。カルロスも2話以降殆ど出番がない。
(C)『デモンズプラン』第1巻
↑個人的にパトロンが1番好きなキャラ。こいつだけでも岡本喜道先生の次回作に出て欲しい。
残念ながら岡本喜道先生は『デモンズプラン』打ち切り後、表立った事はしてない。
これは非常に残念である。
打ち切られてから3年ほど経っているのでそろそろ岡本喜道先生の新連載が読みたい。あなたは読みたくないか?
叙述トリックなど、巧い所は本当に巧かったので画力向上さえすれば、ジャンプの担い手になれると確信している。
ちなみに私は『鬼滅の刃』第1話読んだときに「なんだこれwww絶対打ち切られるわwwwww」と確信した人間なので何も信用するな。