鮫島事件てなんですか?
>>ネタだよネタ。
>>そろそろ真相について語ろうか
>>もう止めろ消されるぞ。
>>おっと 誰か来たようだ
>>マジでその話はやめろ!!!!!!!!!!!!!!
絶対に削除依頼してこいよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!
>>6は何を興奮してんだ?たかがネタスレだろ?
誰か真実キボンヌ・・・みんな疲れてるんだよ。
これは2001年ごろから幾度と無く、某2ちゃんねる(現5ちゃんねる)で、繰り返されてきた問答、
「鮫島事件」である。
ある種の都市伝説であり、「あの事件だけは触れてはいけない」とまことしやかにささやかれ、人が死んだ、公安が絡んでいるなどの真偽不明のまま断片的な情報が次々と追加・流布された。
余生を過ごすだけのインターネット老人は勿論のこと、若い人も名前ぐらいは知っている人は多いのではなかろうか(鮫島という文字は分かっても漢字が読めない人もいそう)
インターネットの悪ノリであり、飽きられたのが大前提だが、ある程度「空気を読む力」や「嘘を嘘と見抜く力(死語)」が求められるコミュニケーションの仕方なのも相まって2ちゃんねるの衰退と共にかなり風化した都市伝説でもある。
私は「鮫島事件」自体には興味はあっても、真の陰の者なのでこういう団体芸みたいなノリは好きではなかった。「俺の知り合いは悪いオタクばかりだからなぁ(ニヤニヤ)」って言っている層が好きそうなノリだ(偏見)
Twitterで同じような事をしようとしたら
私の名前も鮫島です、そういうのは風評被害です、やめてください!
みたいなクソリプの嵐になりそうだ。2ちゃんねるの頃からそういう人は一定数いたと思うがTwitterだと発言者が一手にクソリプを貰うので大変である。
話が脱線してしまったが、今回はそんな令和の時代になっていて今更「鮫島事件」について映画化した『真・鮫島事件』についてネタバレありで感想を書いていきたい。
監督・脚本:永江二朗 主演:武田玲奈 小西桜子 佐野 岳
あらすじ
佐々木菜奈(武田玲奈)は、高校時代の級友たちと毎年行っている部活会に、今年はリモートで参加する。仲間の一人あゆみは何の連絡もなく不参加だったが、しばらく経つとあゆみの部屋にいる恋人・匠が画面に映り、菜奈たちに向かって怒鳴り声を上げるのだった。そして菜奈たちは、見るに耐えない死に顔で絶命したあゆみの姿を目にする。
あゆみ達がかつてネット上を騒がせた都市伝説いわゆる“鮫島事件”のことを調べていたことが分かるが、その事件の真相を知ったものは必ず死ぬとされていた。やがて、菜奈の周りでも奇怪な出来事が起こるようになる。
鮫島事件について
鮫島事件は大きく分けて
「ジョーク説」「孤島説」「リンチ説」の有力とされる3つの説がある。
ジョーク説は
その名の通り「鮫島事件は架空の事件であり、その存在自体が、新参者や本気にした者を釣るためのジョークであった」と解釈している。これが一番メジャーであり、現実的である。
孤島説は
鹿児島県沖のとある孤島「鮫島」を訪れた5人の2ちゃんねらが行方不明になり、捜索打ち切りから半年後、4人の白骨死体が発見される。同時期、公安関係者の身内とされる5人目の行方不明者を名乗る人物が、「自分は今でも鮫島にいる」と2ちゃんねるに投稿し、その後、再び「鮫島」を捜索したところ、最後の1人とされる死体が発見された事件。
リンチ説が
映画『真・鮫島事件』でも採用された説である。内容は
2ちゃんねるが隆盛する直前、「あめぞう」という大型掲示板があった。
「あめぞう」には、たびたび酷い書き込みをする「鮫島」という投稿者がいた。あまりの酷さに業を煮やした「あめぞう」のユーザーが、JR柏駅に「鮫島」を呼び出し、20人で「鮫島」にリンチを加え惨殺したという事件。そのリンチの模様は掲示板の「鮫島スレ」でリアルタイム実況されたという。
実況スレには、鮫島が暴行され殺されるまでの写真が順を追って投稿されていった。
その写真は「血の16画像」と言われていて、映画でもその設定は活かされている。
この話は色々種類もあって実は殺された「鮫島」は「鮫島」ではなく、このリンチを企画した者が「鮫島」だったという説などもある(映画ではここは採用されていない)
今だからこそ出来る映画
本作はコロナ禍後の日本が舞台であり、冒頭の菜奈が街並みを歩くシーンではみんなマスクをしている。
予算がない映画だからこそのスピード感。短期間で制作、上映までこぎつけたのが分かる。
そして自分の家についてマスクを外し、手を入念に洗い、うがいをする。今では当たり前になったその一連の動きが閉塞感があり、ゾクゾクしてしまう。こういう当たり前になった日常がホラーの質感になるのは怖い。コロナ禍のせいで就活がうまくいかないとかそういう現実が怖い。
そして始まるZOOM飲み会。
以前にも買いたが、オンライン飲み会は嫌いなのでこういう「恐怖」が伝染して廃れて欲しいなという願望(そのためにも滅茶苦茶ヒットして欲しい)
基本的には2014年にアメリカ合衆国で製作されたホラー映画である『アンフレンデッド』と同じようにネット画面に向かう登場人物だけをひたすらに映し続けるホラー演出だが、完全なフォロワーになるのではなく、独自の演出や捜査パート、お化け屋敷パートなどがあり、観客を飽きさせないように次々に展開が変わっていくのも良かったし、何よりも最後までフザケナイのもポイントが高い。冷蔵庫の中に太った幽霊はいないし、犬ダンスは踊らないし、少年漫画のようなバトル化にもならない。真面目に真摯にホラー映画を作っていて好感度が高い。
そして鮫島事件。
本作は一応リンチ説を元に作っているが、そこが重要なのではなく、当時の2ちゃんねるのオカルト板(通称オカ板)の空気や流れをオンライン飲み会で表現しているのが面白い。
誰かが鮫島事件を口にすると、
それを言うのはやめろと口止めしようとする人がいたり
とにかく詳細を聞こうとしてくる人がいたり
ROMしている人がいたり
実際に事件の跡地を凸する人が出てきたり
それに対して「お前らまじかよ!!」という反応だったり、
実況する人まで出てくる。
映画を通してあの当時のオカ板をそのまま実写化しているような展開になっているのが素直に凄いなと思ってしまった。
また、鮫島事件を口にすると「おや、誰か来たようだ」が定番のネタだが、本作では口にすると途端に「領域展開」するのも現代っぽく面白かった。こういう解釈の仕方も良い(インターネットが繋がったり、繋がらなかったり、電話が繋がったり、繋がらなかったりするのはご愛敬)
監督が
と仰っていて、本当にそうだなと。
そしてその言葉通り、鮫島事件という言葉を聞いただけで呪われることが判明する。
鮫島事件という言葉を聞いた人が感染し、また新しい人を感染させる。被害者が加害者になるというコロナのような存在なのである。
ビデオ映像を見たら呪われる。家に入ると呪われる。人形を買うと呪われる。話を聞くと呪われる。などはあったが単語を聞くだけで呪われるはあまりにも感染力が強過ぎる。解除方法はない。
私も呪われたし、これを読んでいるあなたも呪われたのだ
細かな所
- 最後のお化け屋敷パートで「七つの大罪」が出てきた時は恥ずかしくなってしまったオタクです私は。まじであの「七つの大罪」だけはいらなかったと思う。別に元ネタにもそんな要素ないし。
- 佐野岳さんがバイクで転倒事故起こすのライダー文脈的に面白い。
- その佐野岳さん、幽霊屋敷を実況している時の顔の映りが完璧なのも面白い。
- 武田玲奈さんの美脚を滅茶苦茶堪能できる。
- 武田玲奈さん、とにかく目が大きい。
(C)2020『真・鮫島事件』製作委員会
- 鶴見萌さんの声をよく聞くと可愛い
- やっぱり幽霊にはバットである。死んでも離してはいけない。
- あのED曲「ツグム。」が癖が強い!!
といった感じでした。
最近の和ホラーは最後になるとオフザケが強くなる傾向になるけど、本作はそんな事はないので是非ホラー好きの人は観て呪われて欲しい。グロ描写はないのでそういうのが無理な人にも安心してオススメ出来る。
そして何より「トイレの花子ちゃん」とか「口裂け女」みたいな生まれる前からあった都市伝説ではなく、実際に都市伝説として確固たる地位を築く前に知る事が出来た話題がこうやって映画化まで成長したのが感慨深い。共に成長した感がある。
「“誰も具体的に語らない、語ろうとしない”というのがこのネタのポイントなので、具体的なストーリーで映画化してしまったら興醒めになるのでは」「文字だけのやりとりが面白かったのに、映像化しては意味ないのでは」という文句も分かる。アングラでやっていたのが公式になると冷める感覚も分かる。
ただ「鮫島事件」自体がもう寿命も迎えており消えていくだけなのでこうやって映画化され、より多くの人に伝承されていくのは良いことだと思う。
この映画を観て当時のオカ板の空気感を思い出したり、感じて欲しい。