こんなん碇シンジじゃんって最初思ったけど、段々といやこれは乙骨憂太だわってなって最終的に碇シンジじゃん…となる。
そんな『劇場版 呪術廻戦 0』の感想をネタバレありで書いていく。
【監督】朴性厚 【脚本】 瀬古浩司 【原作】芥見下々
ミゲル
監督の朴性厚氏が「せっかくの劇場版なのでファンの皆様へのサービスとなる描写を入れたいと思った」と語るように原作を読んでいる人でも、読んでいるからこそ楽しめるそんな内容になっていると思う。
一番のファンサービスはやはりミゲルVS五条先生だろう。この戦いを楽しみに映画を観た方も多いと思う。
ミゲルと言えば「百鬼夜行のMVP」と言われるほどの活躍だったらしいが、原作では断片的にしか描写されていない。その断片的情報から何年も擦ってきたのがファンなのだが、ここに来てミゲルの強さが大幅に説明されたのは大歓喜。
漏瑚を見た五条先生が「だってキミ弱いもん」なのに対して、ミゲルを見たら「1人...面倒くさそうなヤツがいるな...」という特級呪霊以上の評価(漏瑚に対しては煽りの意味もあるだろうが)
そして実際に五条先生を1分足止めでガチギレした漏瑚に対して10分弱足止めに成功したミゲル。すげーや。
そんなミゲルが映画では
ミゲル、お前は紐をスパイダーマンのクモの糸みたいに利用して建物への移動に使うのとか
ミゲル、お前は五条先生の無下限呪術理解するスピード早すぎるだろ…とか
ミゲル、お前なんで五条先生にすごい殴られるし蹴られるけどピンピンしてるんだ…とか
ミゲル、お前体術もすげーな…とか
ミゲルの凄さが感じる事が出来る映画だった。あと「ボビーオロゴンみたいな喋り方しやがって」のセリフが削られて声優が山寺宏一だったので、ボビーオロゴンではなくウィル・スミスにしか見えなかった。
そしてミゲルが「自分の国の術師がこの縄一本編むのに何十年かかってると思ってるんだ!」って言うのに対して五条悟が「僕の1秒の方が凄いだけだろ」って返すクソかっこ良い改変がめっちゃ良かったですね。
ミゲルはスピードで回避しつつ、化物レベルの耐久力で耐えつつ、縄でデバフ撒く最強のタンクだった。FF14で欲しいやつ。
他の原作との相違点
- 百鬼夜行での新宿の冥冥、日下部、猪野琢真のアクションシーン追加。京都は京都高専の学生全員の活躍(原作知っていると三輪とメカ丸とのやり取りで泣ける)特に東堂は原作では台詞だけだった特級呪霊との戦い描写も短いもののあり「こいつ滅茶苦茶強そうな特級呪霊と戦ってたんだな」と評価が上がる。
- 絶望的状況からのナナミン登場。例の黒閃4連チャンのシーンで叫ぶ観客いて怖かった。
- 五条先生の「女は怖いねえ」は「怖い怖い」に変更。
- 「ボビーオロゴンみたいな喋り方しやがって」のセリフは削除
- 「うずまき」は伊藤潤二テイストから離れてただの黒いモワモワなのでインパクトは半減したけど、許可とかあるから仕方ない。
- サトウ(斎藤)さんのセクハラ呪霊君の触り方がかなりソフトになっている。円盤化の時に特典映像で盛ってくれてもいいよ。
- 夏油傑と五条悟のエピソードは0巻の内容+8ー9巻の過去編の内容。離反する傑と殺すのを躊躇う悟、そして過去編の沖縄シーンとさしす組と、肩組んで笑いあう最強コンビの描写。今0巻をやるなら入れそうなエピソードが全部入っていた感じだ。
- 乙骨のグーパンが黒閃出てましたね
- エンドロール後の内容は乙骨とミゲルがケニアで食事をしていると五条先生がやってくるという内容。恐らく渋谷事変前に「僕(五条先生)に何かあったら1.2年せいの事を頼む」とお願いにしにきたのだと思う。
シンジくん
僕が初めて原作の『呪術廻戦 』0巻を読んだ時はまだピュアだったので、素直に感動して1本の映画を観たような満足感があった。
ただ、その後に本編でオマージュ展開や描写が増えたり、ファンブックなので芥見先生のことを知っていくと段々と読み方が変わり
そして『劇場版 呪術廻戦 0』の最初のPVで乙骨の声優が碇シンジ役の緒方直美だと知って聞いて「シンジにしか聞こえね—」となった。
芥見先生、以前に「私自身がエヴァに囚われつつもエヴァからの卒業を意識して執筆に取り組んでいる」って仰ってたけど、乙骨くんの声優が緒方さんだと離れる事が出来ないエヴァの呪縛を感じてしまって笑う
— 社畜のよーだ (@no_shachiku_no) 2021年7月29日
そしてそれを踏まえ『呪術廻戦 』0巻を読み直すと乙骨のセリフが脳内でシンジくんになってしまう呪いをかけられた状態になってしまった。
思ってた以上に内容もシンジくんっぽかった。
ただ、25年以上ウダウダしたり、覚醒したりを繰り返しているシンジ君に対して2時間以内に自己肯定に目覚めて俺強い展開してくれたので、シンジ君アンチほど楽しめるかもしれない。
そして『劇場版 呪術廻戦 0』では冒頭の乙骨がウジウジ悩むシーンとかシンジ君の顔が常にチラついて真面目なのに笑いそうになったりして大変だった。
ただ、緒方恵美氏がパンフレットで
「彼(乙骨)は常に揺れ続けている。最初は他人とのふれあいを嫌がっていたのだが、同級生と一緒になってからは急に積極的に話すようになりました。(略)全てを成立させる、結ぶ線は、本当にセンシティブな細~いこの1本しかない的な?」そんな嫌な予感がして(笑)怖いと思いました。長年この仕事をしていて初めての感覚です。
と言っていて、聞いている僕にはシンジ君にしか聞こえなかったけど、緒方直美氏自身は色々考えていた模様なのであまり何も言えない。ああいう不安定な少年という概念自体が緒方直美の声をしているのかもしれない。
確かに「純愛だよ」辺りはシンジ君を離れて乙骨になっていたので僕の中でシンジ君から解放されそうになったけれど、その後の「死んじゃダメだ。死んじゃダメだ。死んじゃダメだ。」がどう聞いても「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。」だったので、結局シンジ君の呪縛は解けませんでした。
その他細かな感想と「最後くらい呪いの言葉を吐けよ」の内容
- 夏油傑の声が羂索じゃなく夏油傑だったのが凄かった。本編の羂索のような落ち着きではなく、才気走った狂気さがある夏油傑を演じ分けしており、素直に櫻井孝宏は凄いなと。
- ED曲がKing Gnuの「一途」だと思っていたので、良い曲だけどあの余韻の後にこの曲は合わなくないか?と思っていたが
まさかEDには「逆夢」という別の歌があった。これが乙骨と里香ちゃんの純愛もテーマになっていて滅茶苦茶良かったですね。「頼りの無い僕もいつか何者かに成れたなら」が最高。これが乙骨憂太なんだよね。
常田氏がアニメーションに楽曲提供する時の心構えを聞かれて「作品の奴隷」と語っているのが、棘のある回答だなと思っていたけれど、これを作詞作曲するお前が言うなら何も文句はないです。
- 歌姫先生だけ出番なかったけど、それを見越しての0.5巻の内容なのか?
- 真希ちゃんの身体のラインに目が釘付けだったの僕だけだろうか。
- ラスト、五条悟は夏油に何を言ったのだろうか。「最後くらい呪いの言葉を吐けよ」という夏油傑のセリフと公式ファンブックで芥見下々がこの五条のセリフは「0巻の中で言っています。」と明言していることから「僕の親友だよ たった1人のね」で間違いないと思う。
最後に
中村悠一インタビューで百鬼夜行を終えた五条先生に一言で「夏油また出るよ」と答えていて「人でなし!!!!」となったよね。