愛は祈りだ。僕は祈る。僕の好きな人たちに皆そろって幸せになってほしい。それぞれの願いを叶えてほしい。温かい場所で、あるいは涼しい場所で、とにかく心地よい場所で、それぞれの好きな人たちに囲まれて楽しく暮らしてほしい。最大の幸福が空から皆に降り注ぐといい。
舞城王太郎著『好き好き大好き超愛してる。』より
本作の企画およびシナリオを担当したのは「アングラ系インフルエンサー」という褒めているのか馬鹿にされているのか分からない異名をもつ、にゃるら氏。
プレイヤーは、承認欲求が強く性格は悪いが顔だけは良い配信者・あめちゃんのプロデューサー「ピ」としてメンタル病みがちな彼女と一緒にゲームしたり、セ〇クスしたり、お薬を与えたり、出会い系やらせたりして精神を安定化させながら、配信にアドバンスを行い、フォロワー数100万人を目指すシミュレーションゲーム*1。
にゃるら氏のインタビューとマルチ破滅エンディングアドベンチャーゲームと称するぐらい、多数のエンディングがあるもののバッドエンドばかりらしいこのゲーム。
「ハッピーエンド」がこのゲームにあると思いますか?”とあるのですが,やっぱりインターネットをやり続けることがハッピーエンドとは考えにくい。でもハッピーエンドでないことが必ずしも不幸というわけでもないですから。承認欲求がオーバーフローして奇行に走ったとしても,破滅を迎えたとしても,それが“不幸”だとは限らない。
何が幸福につながって,何が不幸につながるのかは,結局のところ分からないですから。SNSの炎上を逆に利用する方法だってありますし。客観的に幸せそうな人でも,当人的には辛いことがたくさんあったりもします。今回,そういうインターネットでの出来事をそのまま描きたいと思ったんです。それがハッピーかアンハッピーかは,プレイヤー自身に決めてもらえればと。
僕はこういうシミュレーションゲームをする時、ヒロインには最高の幸せを掴んで欲しいと思う人間だ。
どれだけ本作がバットエンドばかりといっても、その中にはハッピーエンドもあるハズ。
それを祈りながら本作が発売してほぼ休まず19時間ほどで全21種類と隠しまでエンディングを見る事ができたので、その感想を書いていきたい。
ハッピーエンドは存在しないのか
このゲームを起動して、最初に出てくるのがメーカーロゴとかゲームエンジンの表記ではなく、懐かしい画面が出てきたり
「お前を消す方法」でお馴染みのイルカみたいなネコが出てきたり
平成後期生まれの人が見たら「????????」になりそうなインターネット文化遺産ゲームとなっている。*2
ゲーム内では朝、夕、夜と3つに区切られた時間の中で配信のネタを見つけたり、オタクに媚を売って精神を磨耗する配信をしていく。
全体で30日が用意されており、その限られた期間の中でフォロワー100万人を目指す。*3
僕は初見プレイではすぐ病んでしまうあめちゃんを休ませながらゲーム配信や雑談中心に配信していたが、収益化できず10日で終わってしまった。
この配信戦国時代。なんの武器もなくゲーム配信なんて新規で初めても底辺で終わってしまう。
2周目はもっと休ませて、1回も配信せず寝かせていると彼女は資格勉強を頑張る為に配信をやめて「大人になれ」エンド。
これはこれで幸せじゃね?と思ってしまった。
少なくとも自分の中ではゲームクリアだと思い、ゲームを止め、テレビでやっていた『新解釈・三國志』を見始めたが、こんな映画が大ヒットしている現実を生きる事が、本当に幸せなのか!?いや、違うだろ!!!と怒りがメラメラ湧いてきてしまった。
僕もTwitterをやることに「虚無」を感じて一時期辞めていたが、それ以上に仕事という現実が糞で再びTwitterに帰ってきたことを思い出す。
幸せは現実にはない。インターネットにあると思っている。
3周目はもっとオタクに媚びていく方針で「陰謀論」や「エッチな配信」をやってみたら簡単にフォロワー爆伸びである。
そりゃ、谷間見せながらピアノ演奏やったりする訳である。BANされるかされないかのギリギリを攻めてこその人生である。
また、あめちゃんと「ピ」は冒頭からカップルなので、セ〇クスも出来る。セ〇クスするとストレスもやみ度も下がるので攻略する上で大事なアクションではあるが
事後に毎回Twitterでぶりっ子清純アピールするしながら裏垢ではエグイことツイートするそのアイドルムーブ。世の中のアイドルも同じ事しているかと世間を見る解像度が上がりますね。*4
慣れると段々と攻略法が分かってくる。
継続こそ力。
「連続配信ボーナス」の存在である。
このボーナスの倍率が凄いのでとにかく休まず毎日配信することが重要。
休まず配信し、倍率が高い所で陰謀論やえっち配信することで、15~20日程度で100万人を達成するのも容易だ。
また、このゲームは「ストレス」「好感度」「やみ度」のパラメーターが存在するが、「ストレス」と「やみ度」をMAXの100にしてもすぐにはゲームオーバーにならないので、遠慮せずガンガン配信していっていい。フォロワーの目標達成してから目指すエンディングに向けてパラメーター調整してもいい。
しかし、「好感度」を100まで上げるとヤンデレの上限突破してゲームオーバー*5になってしまう。
また、セ〇クスし過ぎても(10回以上)ゲームオーバー。
エッチな配信しすぎてもあめちゃんが本物の大人向け女優になってしまいゲームオーバー。
精神安定させるためにクスリやっても、段々クスリが強くなり、頻度も上がり
彼女の身体と精神がおかしくなってゲームオーバー
陰謀論に走り過ぎても、カルトの教祖になってしまいゲームオーバー
↑これはこれで本人は幸せそうではあるが
彼女を大物ユーチューバーにしてやったら王手事務所に勧誘され、そこでヒ○キンに寝取られてゲームオーバー
ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。ゲームオーバー。
何度やってもあめちゃんを救う事が出来ない。
インターネットに救いがない。
シミュレーションゲームの鉄板である主人公に対しての好感度をゲームオーバーにならない程度に上げつつ30日を迎えれば流石にハッピーエンドだろと思い、進めていく。
そして30日目。
「ピ」のおかげで幸せになれたよ、これからも2人で頑張ろうね。
やったー---------これだー---------これを望んだんだー--------ゲームクリアじゃー-------!!!!!!!!!
と思ったら、いきなり彼女にブロックされた!!!!!!!!!!!!
何で!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
このエンドの名前が(Un)Happy End World
主人公の事を好きになる事が彼女にとっての幸せではなかった。勝手な僕の思い込みだったのだ……
トップ画面で確認出来る全21種類のエンディングを見てもギリギリノーマルエンドはあってもハッピーエンドはなかった。
このゲームはハッピーエンドはないのか、いや、そもそもこの多様性の時代に「ハッピーエンド」は存在するのか、バットエンドの中に各自がハッピーを見出していく時代なのかもしれない。そう、1000000人いたら1000000人ともハッピーエンドだと思う終わり方なんて存在しないのだから。
そもそも彼女は本当に不幸せなのか。僕の偏見ではないのか。そんなんだから現実で彼女も出来ないのでは!?
意気消沈したので、気分転換にノートPCを持ってよく行く個人経営の喫茶店に向かった。ここはフリーWi-Fiがない場所だが、オフラインでも問題ないゲームなので美味しいコーヒーを飲みながらゲームを進めていくと、
何か違う展開きた!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
インターネットのアイドルだった配信者がインターネットを卒業し、現実に還ることで連鎖するようにTwitter、インターネットに人がどんどんいなくなり、崩壊していく。
インターネットの終わり。
そしてインターネットがなくなったその世界のエンディング名は
Happy End World インターネットやめろ
隠しエンディングだか、その分岐方法が「(Un)Happy End Worldのエンドを迎える時にインターネットに接続してないこと」のようだ。誰が分かるんだ。
どれだけ現実で幸せでも、インターネットに繋がることで、承認欲求は乾き続け、自分とは違うタイプの幸せな誰かを見る事で嫉妬に駆り立てられる。
故に、解決策はネット断ち。
冒頭でも引用したにゃるら氏のインタビューが伏線だとは思わなかった。
「ハッピーエンド」がこのゲームにあると思いますか?”とあるのですが,やっぱりインターネットをやり続けることがハッピーエンドとは考えにくい。でもハッピーエンドでないことが必ずしも不幸というわけでもないですから。承認欲求がオーバーフローして奇行に走ったとしても,破滅を迎えたとしても,それが“不幸”だとは限らない。
ようやく見つけたハッピーエンド。しかし、そこには達成感はなかった。虚しさだけがあった。
どうしても考えてしまう己のハッピーエンドのことを。
仕事が嫌だった時、Twitterまたの名をインターネット負け犬の世界に逃げ込まず、見返してやるという想いで現実を頑張っていたらもっと達成感に溢れる生き方が出来たのかもしれないと思わない日はない。
インターネットにハッピーエンドはない。その外にある。
それに薄々気づいていながら僕らはインターネットをやめる事は出来ない。
あめちゃんのようにインターネットを捨てて現実で生きることなんて出来ない。
いわば、誰もが幸せに終われない時代。誰もが破滅を迎える時代。
僕は祈る。
せめて僕の嫌いな人たちに皆そろって絶望しながら滅びて欲しいと。*6
*1:ゲーム配信でも人気出そうだが、配信の裏で彼氏(彼女)と同棲してHしまくってるがそれを隠して匂わせツイートするゲーム配信しながら彼氏(彼女)と同棲してHしまくってるがそれを隠しながら匂わせツイートするvtuberがいると思うと闇が深い
*2:懐かしのメールクライアント「PostPet」とかも出る
*3:ちなみにこのゲーム、結構バグあって進行不可とかになることもあるけど、やり直したい日にロード出来るので楽
*4:全体的にメンヘラの解像度が高くて、インターネットの小ネタが古めなので、30歳前後に大いに刺さる内容だと思う
*5:厳密に言うと1つのEDなのでゲームオーバーではないが、気持ちとしては同じである
*6:嘘、ごめん。怒らないで