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『エルデンリング』レビュー。ソウルシリーズはこうあるべきを捨てるとゲーム初心者にもオススメ

フロム宮崎社長「『ELDEN RING』では、ゲームの難易度を意図的に下げるというアプローチは取っていませんが、今回はより多くのプレイヤーにクリアしてもらえると思います。」
僕「ほーん、僕でもクリアできるかな」
実際にやる

僕「最初のボスのマルギットに4時間戦っても勝てないんだが!?」

 

それが僕の『エルデンリング』に対するファーストインプレッションだった。

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フロムといえば「フロムのゲームは難しい」「マゾゲー」「死にゲー」「ダクソから逃げるな」と言われまくるような高難易度ゲームの代名詞となっていながらも、世界最大級のゲームアワード「ゴールデン・ジョイスティック・アワード」にて史上最高のゲーム作品を決める「Ultimate Game of All Time」に選ばれた『ダークソウル』や2019年の「The Game Award」を受賞した『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』など、国際的に評価されているゲームメーカーである。

 

しかし、いくら世界的に評価が高くても「死にゲーは死にゲー」である。人には勧め辛い。

 

万人受けするわけでもないし、「困難に挑み克服する達成感」というコンセプトは分かるが、困難に挫折してしまう人の気持ちも分かってしまう。僕も『ダークソウル3』で「冷たい谷の踊り子」と戦って社会人の貴重な土日をすべて費やしても倒せなかったあの休日を思い出すだけでお腹が痛くなる。「社会人の大切で短く儚い余暇を死にゲーという勝てない敵に一日中悩んで、ストレスでハゲそうになりながらも進歩すらなく悶々としている間に休日が終わってしまうあの日常に戻る覚悟があるのか」問題である。

 

 

『エルデンリング』もまんまと宮崎社長の甘い言葉に騙された気持ちだったが、ゲーム進行のメインルートを示してくれる「祝福の導き」の言う通り進んだ先にいるボスのマルギットに勝てないので、渋々レベル上げの為に寄り道することにした。

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↑彼女も寄り道していると出会える『エルデンリング』ヒロイン四天王の1人、魔女ラニ。残りは馬、クラゲ、二本指のエンヤ婆。

 

レベル上げの為に色々なダンジョンに挑んでいて気づく。今までは

「〇〇が倒せねえ!今日はもう寝よう!」
だったのだが、『エルデンリング』では

「〇〇が倒せねえ!他を探索だ!」に変わっていることに。

宮崎社長もこう言っている。

『ELDEN RING』では、プレイヤーが自由に使える選択肢を多く用意することで、困難な状況の対処や、機転を利かせて敵やボスの裏をかくことができるようになっています。行き詰まると後でまた戻ればいいのです。進行には自由度があるので、何度も何度も壁にぶつかる必要はありません。何をどうすればいいのか、自分のペースで考え直すことができるのです。

『ELDEN RING』ディレクターの宮崎英高氏にインタビュー! 著名な作家とのコラボレーションなどについて語っていただきました! – PlayStation.Blog 日本語

 

終わりのない神話のような寄り道と修行の旅を兼ねたオープンワールドこそが『エルデンリング』なのだと気づいた時、して何よりもこのゲームは「戦技と遺灰ゲー」なのだと気づいた時、あんなに理不尽だと思っていたボスたちもあらゆる手段を使って次々に倒す事が出来た。

 

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個人的にラスボス含めて一番倒すのに時間がかかったのが、最初のボスであるマルギットだった。フロムの過去作に比べると圧倒的にサクサクである。

 

発売当初はフロム史上一番の難易度だと言われてきた『エルデンリング』だが、クリアした僕が思うに死にゲー初心者や、フロム未経験者に最初の登竜門としてオススメしたいのが本作だとハッキリと言える。

その究極の要因は「救済措置」の多様さ、豊富さである。

強い敵がいても、逃げたり、後回し出来るオープンワールド要素。レベル上げや武器強化といったRPGとしての要素。そして戦技と遺灰のぶっ壊れ要素。フロムから用意されたあらゆる救済措置を使い倒せば、アクションがどれだけ下手でも、何とかなってしまう。

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↑多くのプレイヤーに遺灰の強さを教えてくれる犬。そしてクラゲ。

 

youtubeの動画などでは実況者が「このボスのこの攻撃はパリィが出来ます。はぁい余裕」系で溢れており、そういうのに憧れる気持ちも分かる。しかし、『エルデンリング』の特に終盤になってくると「フロム、お前頭おかしくなったのか?」と開発者のご尊顔を拝したくなる凶悪で調整不足にしか思えないボスが続々出てくるので生半可な「このボスのこの攻撃はパリィが出来ます。はぁい余裕」系は次々に死んでいった。少なくとも僕は死んだ。

化物には化物を。理不尽には理不尽を。クソにはクソを。複数で挑んでくるボスのはこちらも複数を。どうせ強過ぎる奴は修正される。

それこそがエルデンリング。

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↑主人公が四股踏み、遺灰が四股踏み、敵が四股踏みしている図

 

大事な事は本作を『ダークソウル4』ではなく、『エルデンリング』を遊んでいるという当たり前を認識する事だと思う。そこの割り切り。

 

発売直後は「ただのダークソウル4」とか「ダークソウルでMAPが広くなっただけ」など心無い批判もあったが、ダークソウルと同じ感覚で『エルデンリング』を遊ぶと大変辛いと思う。あくまでのエルデンリング流の戦い方を学ぶ必要がある。

ソウルシリーズに古来からある「こうあるべき」みたいな戦い方は一旦脇にやり、
『SEKIRO』の忍殺といった正攻法以外の戦い方から更に拡張し、「好きなようにやってあらゆる手段で敵を駆逐していく」それがエルデンリング流の戦い方なのだと僕は感じ取った。

 

エルデンリング流の戦い方とは具体的には以下の通り。

・生命力……何よりも生命力が大事。

・戦技はぶっ壊れ

・遺灰はぶっ壊れ

細かく説明していく。

 

 

生命力……何よりも生命力が大事

これに関してはソウルシリーズからの鉄板なので今更説明するのもアレだが、一応フロム初心者の方に向けて説明する。

本作はレベルを上げるごとにステータスのうち1つだけを選んで伸ばしていくのだが、満遍なく育てるのは非常に効率が悪い。

 

脳筋でいくのか、技量戦士でいくのか、魔術師か。

 

自分がやりたいビルドを想定しつつ、装備したい武器を装備出来るステータスまで上げるのをオススメする。正直、途中で気が変わってもステータスを振り直すアイテムがあるのでそんなに気にしなくても良い。

 

ステータスで大事なのは生命力。何よりも生命力。

 

最低40で出来れば50は欲しい。欲を言えば60まで上げたい。

特に終盤はボスの攻撃力が意味不明になってくるので、一撃死しないだけの生命力は最低限欲しい。

ボスだけでなくワラワラ存在する雑魚ですら攻撃力がアホみたいに高くなっていく。

基本的に終盤になると雑魚とイチイチ戦ってられないので走り抜けることをオススメするが、どうしても事故で2,3撃喰らう事があるので耐えられるぐらいの生命力は欲しい。

あとは100%カットの盾で敵の攻撃に防ぐのに十分な持久力と、戦技を何度もブッパ出来る精神力は率先してあげたい。

諦めたダンジョンにレベル上げまくって無双するのも楽しいぞ。

 

 

戦技はぶっ壊れ

戦技とはFPを消費して発動する特殊な技のこと。

 

特に雑に強いのが皆さんご存知の「霜踏み」*1

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どのボスにも通用する訳ではないが、体感8割ぐらいのボス格に霜踏みは無難に強い。*2

発生自体は遅いが、実質設置技だから細かな間合いを気にせず雑に削れるしFPの消費も少ない。

ただ、霜踏みが汎用性があって雑に強かったのでアプデで弱体化してしまったが、死屍累々、束の間の月影、赤獅子の炎、黄金盾ビーム、蝕のショーテル、アステール薄羽腐敗ブレス、彗星アズール、アステールメテオ、猟犬ステップ、鉄壁など使い道があってどれも阿保みたいに強い。

 

僕のようなパリィの出来ない人は戦技なしの盾を装備して是非、その滅茶苦茶強い戦技を堪能して欲しい。

 

 

遺灰はぶっ壊れ

遺灰とはHPやFPを消費して霊体を召喚できること。一緒に戦ってくれるのである。

 

特に中盤以降にゲットできる写し身は育てるとプレイヤーより確実に強くなる。僕は死んでいるのに写し身はまだ体力7割ぐらい残っていることがあって、「あいつ、俺より強くね……?」状態である*3

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ただ、写し身以外にも遺灰は強化できるようになるので、大体みんな強い。黒き刃ティシー、霊クラゲ、大盾兵の遺灰、腐った野犬などがオススメ。

 

フロム初心者の戦い方としては写し身に敵のターゲットになってもらい、後ろから霜踏み!距離を取って霜踏み!距離を取って霜踏み!距離を取って霜踏み!距離を取って霜踏み!距離を取って霜踏み!距離を取っての繰り返しで雑にボスを倒せることが多かった*4

 

ここで大事なのは、強すぎるから使っちゃいけないなんてことはないということ。

フロムが強過ぎると判断した奴は修正されるし、瞬間瞬間で一番強いと判断した武器と戦技と遺灰を使い、全力で戦った方が楽しい。

 

心折れて辞めるより、使えるもの最大限利用して死闘した方がいい。

「最後にオレが勝つからだ 勝つから楽しーんだ」「オレは戦うのが好きなんじゃねぇんだ・・・ 勝つのが好きなんだよォォッ!」の精神で敵を倒そう。

そもそも中盤以降は複数ボスの敵がグッと増え、遺灰前提感がある。

 

 

以上のように『エルデンリング』というゲームはプレイヤー側での難易度調節の幅が異常に広い。故にプレイヤー自らがどんどん縛って、難易度を上げていくゲームデザインになっているのだと思う。

「霜踏み」は強過ぎるから縛ろう。

1対1の時は「写し身」はやめようなど、自分の腕前と相談しながらゲームバランスを考えてドンドン縛っていく。

高難易度→糞みたいな高難易度→絶叫

と難易度を調整していく。

 

僕はもうね、困ったら写し身+霜踏み+出血の欲張り修正セットでクリアしましたよ。

思い返してみると

 

マルギットはクソボス😡

今思えばマルギット良ボスだったな

ラダーンはクソボス😡

今思えばラダーン良ボスだったな

終盤のボスはクソが多いな、特にラスボス😡

いや、やっぱりクソだわ

 

フロムボス恒例の「振り返ってみると、思い出が黄金に輝く手のひら返し」が終盤はどうしてもなかったし、フロムの悪意ばかり感じてしまった。

 

恐らく、プレイヤー側に過去最高の自由に与えたのを言い訳に過去シリーズで出来なかった過酷なシチュエーションや調整放棄したボスを大量投入したと思われる。そういう意味でも宮崎フロムの総決算なのかもしれない。

 

『SEKIRO』ではプレイヤーの戦い方がほぼ統一しているので、開発陣もバランス調整し易かったのは容易に想像できるが、逆に『エルデンリング』では終盤のプレイヤー側の戦い方は∞であり、開発陣も「バランス調整分からん!こっちもやりたい放題したろ!!!」と考えたのかもしれないし、そもそも「あかーん!手癖で敵の強さを上げ過ぎた!!でも弱体化はしたくないなぁ。せや、写し身や強い戦技用意してプレイヤー側を強化したらええ!!天才や!」と考えたのかもしれない。

 

故にソウルシリーズに古来からある「こうあるべき」みたいな戦い方、例えばローリングしながら敵のお尻を執拗に責める戦い方だけではコントローラーを投げたくなるバランスになっていると思う。そういう意味でもソウルシリーズの固定概念やプライドを持ってないフロム初心者にオススメの出来になっている。

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↑「はい」を選ばないプレイヤーはいない。

 

不満も一杯だが、止められない

『エルデンリング』は序盤中盤は完璧で、後半から地獄になっていくゲームバランスだと思うし、NPCイベントの導線あまりにも貧弱過ぎるだろ!!!など色々不満も多いが、ここまで熱狂出来たのも久しぶりだ。減点式だと70点だが、加点式だと100000点みたいなゲームである。

 

フロムの死にゲーでしか味わえない快楽、快活、至楽で脳汁ピュピュするのは過去シリーズと同じだが、本作はそれに加えて「冒険している感覚」が凄い。

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未知の世界があって、脅威と脅威とそして脅威があって。そこを手探りで探索していく楽しさ。

 

あそこの建物行ってみよう→滅茶苦茶強いボスがいる

地図で見るとあそこ怪しい→滅茶苦茶強いボスがいる。

道端を歩いている→滅茶苦茶強いボスに出会う。

 

フィールドは作りこまれているが、どこ行っても滅茶苦茶強いボスがいる。

しかし、報酬が装備や遺灰や戦技などそこでしか手に入らないユニークアイテムばかりなので、探索が徒労に終わらないのが滅茶苦茶良い。例え今の自分ではクリアできないレベルのダンジョンでも祝福を解放できるだけでも達成感がある。

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↑プレイヤーは所詮人なので木すら切る事出来ないが、クマは木を倒し、建物を壊す。

 

 

オープンワールドあるあるのサブクエ祭りのお使い祭りがないのも良い。本当に自由。NPCのフラグもあるけど、気にせず自由に冒険するようになっているのだなと思う。

 

また宝箱だと思ったら遠く知らない場所に飛ばされる転送罠などフロムの悪意とユーモアがたっぷり。オープンワールド作ったらこういう要素入れたかったというフロムの気持ちがバシバシ伝わってくる。

 

 

そしてこの冒険は孤独だが、ネットワークプレイを通じて、他のプレイヤーとコミュニケーションを緩くとる事が出来る「メッセージ」機能による独特な文化形成も遊んでいて楽しい。

「この先隠し道があるぞ」は9割嘘だし、「この先、ジャンプが有効だ」も8割嘘。「ここだ!」→9割本当。

亀の前に「恐らく犬」
夜、砦、夜、砦、夜、砦
「その資格はない、おおその資格はない、つまりその資格はない、おおその資格はない」

新しいミームが生まれる瞬間はいつだって楽しいものだ。

しかし、梯子の前にメッセージを書くお前、お前だけは絶対に許さねぇ!

 

最後に

 『エルデンリング』を人に薦めるのにネックになるのが難易度よりそのボリュームだと思う。普通に100時間ぐらいかかる。それがコスパが良いと思うか、コスパが悪いと捉えるかは人それぞれだろう。

一度コントローラーを握るとその日が『エルデンリング』で潰れるぐらいの中毒性があると思うので、社会人は用法・用量を守って正しく遊んで欲しい。

フロムだから、死にゲーだから躊躇している人は是非、一度遊んで欲しい。

そしてケイリッドで一番危険な祭り、ラダーン祭りに参加して欲しい。

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↑ハゲに隠れているが、爺もすぐ死ぬことで有名なラダーン祭り。

 

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↑コレクターズBOXに付いてるマレニアのフィギュア。ゲームを遊ぶ前は高潔で孤高の女騎士にして『エルデンリング』の顔だと思ってたのにプレイ後は嫌がらせのカスだと知ってしまったのでこのフィギュアどうしよって感じだ。

 

 

*1:【2022年3月17日追記】

僕「ワシが若い頃はな…「霜踏み」が最強じゃたんじゃよ…本当じゃよ……」

孫「何言ってんのおじいちゃん、あんなんより強いの沢山あるよ。今話題なのは屍山血河ね」

*2:

【2022年3月17日追記】

僕「ワシが若い頃はな…「霜踏み」が最強じゃたんじゃよ…本当じゃよ……」

孫「何言ってんのおじいちゃん、あんなん雑魚狩りしか使えないよ。今話題なのは屍山血河ね」

*3:

【2022年3月17日追記】

僕「ワシが若い頃はな…「写し身」が最強じゃたんじゃよ…本当じゃよ……」

孫「何言ってんのおじいちゃん、あんなんAIがアホ過ぎてデコイにしか使えないよ」

*4:

【2022年3月17日追記】

僕「ワシが若い頃はな…「霜踏み」と「写し身」が最強じゃたんじゃよ…本当じゃよ……」

孫「何言ってんのおじいちゃん、平成に生きてるの?」