社会の独房から

映画やゲーム、漫画など。

映画『モービウス』感想。巨大感情モノで刺さる人には刺さる

流石に大手映画批評サイトのロッテントマトで15%とメタスコア36点は低すぎ

宣伝の仕方が悪いのかもしれないが50点ぐらいある。ただ、そんなハードル上げていくような映画でもないのに前評判が下がるのは良かったのかもしれない。そんな映画。

f:id:Shachiku:20220402003814j:plain

【監督】ダニエル・エスピノーサ

 

あらすじ

天才医師マイケル・モービウス(ジャレッド・レト)。彼は幼いころから血液の難病を患っていた。
同じ病に苦しみ、同じ病棟で兄弟のように育った親友のマイロ(マット・スミス)の為にも、一日も早く、治療法を見つけ出したいという強い思いからマイケルは実験的な治療を自らに施す。
それはコウモリの血清を投与するという危険すぎる治療法だった。彼の身体は激変する――(公式HPより)

 

巨大感情

一応ヒロインいるしラブロマンスもあったけど、それが闇落ち(善良な生きた人の血を飲む)した親友が同じく闇堕ち(善良な生きた人の血を飲む事)を迫る為に利用する為だけだとは思わなかったやつ。というかマイケルがヒロインとキスしてるのをマイロが遠くから見てるシーンで笑わない人いる?

 

主人公のマイケルにとって、マイロへの愛はたった一人の親友、兄弟に向ける愛の形なんだけど、マイロにとってのマイケルは唯一、「死」という恐怖または孤独を共有できた存在であり、自分にはない才能がある事への尊敬と憧れと誇りと嫉妬と依存とほか様々な感情が入り混じり、結果的に自分1人では持て余してしまうほどに膨れ上がった、えも言わぬ重い感情を抱いてしまった。

 

マイケルとマイロの関係性は冒頭の「1時間だけ健康になれたら何したい?」ってセリフに集約されていて、恐らくマイロはその1時間で普段は出れない光の下、2人で思いっきり遊びたかったんじゃないかと。

故にマイケルが自分で禁断の治療を行い蝙蝠人間になってしまった後に、マイロが自分にも同じ事をしろと迫るものの、その危険性から断られると「僕はこのまま死ねっていうのか」と怒ったのは、

”それじゃ君と遊ぶことも出来ないじゃないか”

という事なのかな、重たいね。

 

そう考えるとラストバトルでマイロがイキイキしていたのも分かる。元気な身体を手に入れたのもあるけど、ようやくマイケルと外で思い切り遊ぶ(死闘)する事が出来て、夢が叶ったんじゃないかな。

 

マイロは病室で人生の殆どを過ごし、自分の歪な倫理観を修正できないまま、お金だけはある。そんな彼にとって親友であり兄のような存在であるマイケルだけが自分の光。

そんな彼は突然に得た蝙蝠人間の力に依存してしまう。

 

蝙蝠人間後のマイロのダンスシーンのBGMがCLARK KENT(曲)なの絶対にわざとだと思うけど、彼にとって蝙蝠人間は変身なのであって、己自身の解放なんだろなって。


親代わりになっていたニコラスに対してマイロは「兄のことしか見てなかった」と怒鳴るのは自分に自信が無い事への裏返しと、ノーベル賞候補になるほど有能な兄と違って何もない自分が、こんな難病を抱えた自分をよくしてくれているのか分からないから。
人は別に有能無能関係なく、そこにいてくれるだけで意味はあるのに。

 

あと吹き替え版だとマイケル(CV中村悠一)とマイロ(CV杉田智和)でより関係性が面白くなっている。

 

間延びしつつ尺がたりてない

冒頭、秘境で大量の吸血コウモリを自分の血で誘うけど、自分を運んできたヘリコプターとかも襲われててこのままじゃ帰れなくね?と思っていたら、その後回想挟んで現代に戻ってきたと思ったら既に吸血コウモリgetした後で、「どうやって戻ってきたの!?」となるやつ。

 

吸血衝動に対して人口血液じゃ耐性が出来て対処出来なくなるって話、しつこく何度もやってたのに有耶無耶で終わるのダメだろ!

 

何よりもラスト。

「俺にも責任がある」と言ってマイロを止めた後は自殺を仄めかしていたのに、友人を殺した後、自分は放置して、ヴァルチャー先生と悪役らしい会話するの流石にダメ。

それをするなら「あーこの世界はヒーローだけじゃ対処できない悪党が多いわ。ダークヒーローとしてこの力で悪党を倒しながら、悪党からだけ血とって俺も生きてやるわ」ぐらいまでやらんとダメだったと思う。そのために船でマイケルが殺した警備員がクズだと何度もしつこくセリフあったのだと思ったのに。

 

あと、復活する描写があったマルティーヌ。吸血鬼にかまれると吸血鬼になるのは古来からの伝統だけど、蝙蝠人間になる薬は3本作られて1本は最初にマイケルが打ってて、もう1本をマイロが打ったとして確かにもう1本余るが。

 

 

戦闘はスローモーションでカッコイイ所はあったけど、マイロと落ちながら戦う所とか何やってるのか全然分からなくて、何が何で何が起こってるの!?となった奴。

 

予告詐欺

 

www.youtube.com

 

本来の公開順はモービウス→ヴェノム2→ NWHだったのだが、コロナの影響でヴェノム2→NWH→モービウスへと変更された経緯があり、そのせいかマイケル・キートンが再撮影したという報道もあり、結構グダグダしている。

EXCLUSIVE: 'Morbius' Filming Additional Scenes Involving Michael Keaton's Vulture - Murphy's Multiverse

 

予告であった「善人には飽きただろ?先生」というマイケル・キートンの台詞や、「Murderer(殺人者)」とラクガキされたスパイダーマンのポスターのシーンが本編でないは予告詐欺だと言われそうだけど、最新の予告だとそのシーンは消えているので、やっぱり公開順が変わったことによる影響がでかそうだ。

www.youtube.com

考えられるのは2つ。

元々はSSU世界のヴァルチャーだったのが、せっかくマルチバース開いたのだからという理由で無理やりMCU世界のヴァルチャーが移動してきた設定に変えた(これが最も現実的

もう一つは元々はMCU世界での話で、最後にマルチバースが開いてヴァルチャーもモービウスもSSU世界に移動する予定だったというもの。

 

それが公開順変わったことにより、異世界転生に滅茶苦茶早く順応するヴァルチャーという面白い絵面になってしまったし、ヴァルチャー先生とモービウスが揃って「2人ならスパイダーマンに対して面白い事が出来るな、ぐふふふ」みたいな会話するけど
今更この二人が敵対するのも微妙なので、「スパイダーマンに対して2人で最高のサプライズパーティにしようぜ、ぐふふ」みたいな優しい世界での会話かもしれない。