親権バトルを銃で解決する映画
または
こんな所で終わってんじゃねー!!2022年映画大賞
山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリア。ある日、二人が羊の出産に立ち会うと、羊ではない何かが産まれてくる。
子供を亡くしていた二人は、"アダ"と名付けその存在を育てることにする。
奇跡がもたらした"アダ"との家族生活は大きな幸せをもたらすのだが、
やがて彼らを破滅へと導いていく—。(公式HPより)
まずトップ画で「あれ、ひつじのショーン新作出たんだぁ」とこのページ開いた人ごめんなさい。全く関係ないです。「これのどこがひつじのショーンなんだ!」と怒った人ごめんなさい、絵が下手くそで。勉強中です。
初報の時に『ミッドサマー』のA24最新作!
みたいなツイートがバズったりしてアリ・アスター監督の新作だと勘違いした人が続出してしまった話題作、映画『LAMB/ラム』
監督はアリ・アスターではなく『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などの特殊効果を担当し、本作が長編デビューとなるヴァルディミール・ヨハンソン。
本作、正直かなり「ぽかーん」とする映画で、ホラー要素を期待すると肩透かしする。
「何だか分からないけど、凄いもんみた」
そういう映画である。ちなみに犬は死ぬけど、猫は死なない。死体も映るので犬好きには注意が必要だ。
ここからは具体的にネタバレありで書いていくよ。
羊人間VS人間
本作は3つの章で構成されるが、まずプロローグ的な冒頭が凄い。
聖夜、得体のしれないモノが猛吹雪を突き進んでいく冒頭。
馬が逃げていき、羊小屋に侵入したソレは1頭の雌羊と交尾し、去っていく。ここの描写はソレの一人称視点だったりして、姿は一切明かされないが、「何か」がいる事はハッキリ分かる。
この冒頭、実は筋肉ムキムキ羊人間視点だった事が最後に分かるけど(異教の神、黒ミサを司る、山羊の頭を持った悪魔バフォメットみたいな見た目)、よそ様の雌羊を勝手に孕ますな!!!と怒ってますよ僕は。
お前の身勝手ちんちんのせいで結果的に健気な雌羊の死に繋がり、他人様が飼ってる羊を無許可で孕ませて良い感じに育ったぐらいを見計らって、育ての親コロして奪い返すとか最悪の所業である。なに?人間じゃないから人間のルールに従う必要はないって?うるせーばーか!!ばーか!!
という訳でプロローグが終わり、1章。
画面は白く、イングヴァルとマリアの日常シーンは台詞も極端に少なく眠気を誘う。正直ウトウトした。
食卓で初めて会話する「時間旅行」の話題はその後の伏線かと思ったが、関係なかったね。 最後に出てくる筋肉ムキムキ羊人間が過去に戻ってきたアダの成長した姿の可能性も考えたけど、「だからなに?」となるしな。
イングヴァルとマリアの夫婦は過去に娘のアダを亡くしているので「過去に戻ってやり直したい」以上の意味合いはなさそう。
2章
本作のヒロイン、ペートゥルおじさんの登場である。マリアを抱こう!のNTR野郎なキャラクターなのに愛嬌あるのはこの狂った空間の中で初めてアダを見た時の困惑の姿や、「こいつは(アダ)は子供じゃない!羊だ!!」と観客の気持ちを代弁してくれるからだろう。
しかし、そんなペートゥルおじさんもアダを1度は殺そうとするが、その純粋無垢な瞳に負けたのか、「叔父さんと姪っ子」の関係性になってしまう、アダは可愛いから仕方ない。僕もそうなる。
(C)2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JOHANNSSON
というか金もなく、家に住まわせてもらっている立場でそんな事よくやろうと思ったな。
このペートゥルおじさん出てきた時のこいつ死ぬぞ~はよ死ね~って感情からの昔のバンド時代のMV見てる親戚のおじさんムーブ見せられた時の、ペートゥルおじさん死なないで…!!という感情。
そしてその後のマリアを脅して抱こうとするムーブにはよ死ね~って感情から、あっ死ぬか〜死にそう死にそう〜〜〜〜〜〜〜〜〜死なないんかい!!という脳内ツッコミ。
感情の移り変わりが激しいキャラだった。
パンフ読むとマリアとヨリを戻そうとしていたと書いてあるので昔、不倫してたみたい。
3章
死んでしまった自分の娘
親がその心の穴を埋めるように、他の家族の赤ちゃんを誘拐し、追いかけてきた生みの母親を殺害。
親族に嗜められても無視して実の娘のように育てていたが、最終的には実の父親に発見され娘を取り返される。
↑
人間で考えると実に縦軸はシンプルな話
別の家族が羊と筋肉ムキムキ羊人間のその子供だっただけ。
自分の娘を亡くし、悪夢にうなされるマリア。
夢の中でも羊を見るマリアだが、天からの贈り物だと半羊のアダを大切にする。
しかし、最後にアダも夫もすべて失くしてしまう。
すべての夢を失い、残酷な現実のみが残る。虚空を見つめるマリアの最後のショットは印象的だ。彼女はそれでも生きることを象徴しているようだ。
監督自身が認めるように、本作は複数のアイスランドの民話が織り交ざられており、ヨハネの黙示録には「キリストの暗示」として子羊が沢山でてきたりするので、様々な解釈ができるようになっている。
しかし、人間が創造した神話などで『LAMB/ラム』のストーリーを解釈する行為自体が人間の傲慢さのあらわれではないだろうか。
筋肉ムキムキ羊人間も「そういうところだぞ、人間」と呆れるだろう。
最後に
批評家から評判悪くなるのは分かるが、僕は最後に夫の仇とアダを取り戻すために羊人間に立ち向かうマリアの展開が見たかったよー-------!!!!!!
納屋にあった武器をフル装備して戦うマリアを見たかったよー-------!!!!!!
あんな「俺たちの戦いはこれからだ!!!」エンドはジャンプの打ち切り漫画だけにして欲しい。というかペートゥルおじさんとの三角関係みたいな展開必要だったか?おじさん丸々カットして最後の奪還劇入れてくれてよかったろ。頼む!!続編の『LAMB/ラム2怒りの脱出』作ってくれヴァルディミール・ヨハンソン監督!!!
終わり。