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【ネタバレ】実写映画『耳をすませば』感想。こんな雫は嫌だ!の欲張りセット

有給休暇を取る難しさを実感する映画

【監督】平川雄一朗(実写映画『約束のネバーランド』など監督)

読書好きな中学生・月島雫は、図書貸出カードでよく名前を見かけていた天沢聖司と最悪の出会いを果たす。しかし雫は聖司に大きな夢があることを知り、次第に彼にひかれていく。そんな聖司に背中を押され自身も夢を持つようになる雫だったが、聖司は夢をかなえるためイタリアへ渡ることに。2人は離れ離れになってもそれぞれの夢を追い、10年後に再会することを誓い合う。それから10年が過ぎた1999年。出版社で働きながら夢を追い続ける雫は、イタリアで奮闘する聖司を想うことで自分を奮い立たせていたが……。

 

実写版『耳をすませば』の原作は、1989年に柊あおい先生著で「りぼん」に連載された同名の少女漫画だ。しかしこのタイトルはそれ以上に、1995年にスタジオジブリによって制作されたアニメ映画として広く知られているのは間違いない。

 

 今回の実写映画版は「雫と聖司が大人になった、10年後のオリジナルストーリー」となっている。この企画を聞いた時、大丈夫か?と僕は不安になったが、まずハッキリ言うと大丈夫ではなかった。

企画を聞いて「雫には将来こうなって欲しくないなぁ」とい不安がそのまま形になってしまったような感覚である。

 

本作は雫がはじめて聖司と出会う場所は教室ではなく校庭の見えるベンチだったり、雫が電車で出会う猫も原作の黒猫ではなく茶虎の大柄な猫だったり、聖司の夢を画家からヴァイオリン職人にしたジブリの影響からかチェロ奏者になっている。

このように実写映画はあくまで漫画をもとにした作品みたいだが、かなりの部分がジブリ版を意識して作られている。というか協力の所にスタジオジブリの名前がある。

 

しかし、その割にはジブリ版の代名詞ともいえる主題歌『カントリーロード』が『翼をください』に変更されている。

そのせいか、実写では雫が『カントリーロード』を作詞する重要なシーンがなくなっており、中学生にして英語の歌を自分なりに解釈して翻訳するほど賢くて才能のあるジブリ版の雫から英語もイタリア語もあまり出来ない大人になってしまったのが実写版なのである。

全体的に夢も叶わず仕事でも上手くいかない周囲の結婚ラッシュに自分も焦り始めるっていう雫ばかり無駄に世知辛い映画である。

演じるのは行き詰っていてくたびれた雫がよく似合う清野菜名。よく清原果耶と名前を混同してしまう清野菜名。くたびれた表情させたら女優の中でもトップクラスだとは思うが、そもそもくたびれた表情の雫をあまり見たくない問題もある。

 

このくたびれた表情の雫は冒頭で朝日をみながら『翼をください』を外なのに1人で熱唱しだした辺りから、ストレスで頭おかしくなってない?と不安になる。その後も何度やっても小説の賞を取れず傷付き仕事でも失敗してパワハラ上司に「編集の仕事もろくに出来ない奴が本なんて書ける訳ない」という意味不明な理論で怒鳴られ傷付き、地球屋に行くと爺から「自分の内側の声を聞きなさい」と内容があってないような台詞と共に耳をすませばポーズを散々擦られ、その上で、久しぶりにイタリアまで聖司に会いに行く事になったので、ここからスカッとジャパン展開くるのかなと思いきや、その聖司に惚れてるイタリア女まで現れて三角関係で傷付き別れて帰国とか酷過ぎる。

基本的に才能ある聖司とそうではない凡人の雫との対比みたいになってたけど、そういう関係じゃなかったろ。

 

日本に帰国したあと、雫が吹っ切れたように仕事を頑張るのはいいが、それを見たパワハラ上司が「お前も成長したな……」みたいな表情するのも不快だし、仕事で失敗した相手に謝りに行くのはいいが、作家先生に「実は修正前の方がよかったです」と本心打ち明けるのかなと思いきやいきなりの土下座である。こっちは雫の土下座なんて見たくないのである。しかも、土下座して許されるのかと思いきや引かれるだけ。

ここまで雫に試練続きだが、聖司から「昔から好きでした。ストーカーみたいなことしてました」の手紙をもらい元気が出て再び小説を書き始める。

 

ここで僕はピーンと来たね。この小説は『猫の恩返し』だと。

 

描き下ろしたコミック『バロン 猫の男爵』を原作とするアニメ映画『猫の恩返し』だが

耳をすませば』のヒロイン月島雫が書いた小説の物語が『猫の恩返し』なのである。

原作者の柊あおい先生はこのように答えている。

宮崎さんからお話を頂いた後、考え始めた時に、バロンは「耳をすませば」の世界にしかいない。
だけどその世界で描いちゃうと、雫や聖司が出てくるのかなって観る人が期待しちゃうんじゃないかと思ったんです。

それはちょっと嫌だったので、雫が書いた話にしたんです。

雫は中学生の時にバロンの話を書いたけど力が及ばなかった。

でもその後、勉強して、またきっと書き直すに違いないと思っていましたから。

(C)書籍『ロマンアルバム 猫の恩返し』より

 

10年前と同じ、聖司をきっかけとして再び小説を書き始める雫。

ここで『猫の恩返し』を書かずいつ『猫の恩返し』を書く。これで大ヒットして改めて聖司と対等な立場になり、再び付き合い出す。これしかない。

そして、最後の最後、雫の書いた小説のタイトルが画面にクローズアップされる。

 

そのタイトルは

 

 

 

 

耳をすませば

 

ここでタイトル回収するんかー----------い!!!!!

オタク大好き「ラストでタイトル回収展開」だけども!!!!!私小説書いてたの!?

しかも、日本を拠点に活動することにした聖司に結婚をプロポーズされて終わりっていやー----ロマンチックかもしれないが!!!!!ここまで雫の仕事の話しているならもう少し、例えば聖司と結婚した後も編集の仕事も小説家としてもバリバリ働いている描写必要じゃないか!?そう思う社畜でした。寿退社したい。

 

 

細かな所

  • 冒頭の「有給休暇取れるなんていい職場ね」から始まり、「みんな忙しいのになに有給取ってんだ!」とパワハラ上司に叱られ、「有給は仕事やめる覚悟でね」と姐さん上司にチクチク言われ、実際に長期で有給とろうとすると仕事辞める話にまで発展する有給休暇ってそういう事じゃなくない!?まぁ舞台が1990年代なのでまだそういう雰囲気なのかもしれない。令和の現代日本最高!!そういえば僕も年末年始の休みがなぜか有給になってたり、この前有給取ろうとしたら急な仕事で忙しくて前日にキャンセルになったな、……あれ、涙が……
  • 「雫と聖司が大人になった、10年後のオリジナルストーリー」だが、意外と子供時代もやる。30分ぐらい子供時代だったと思う。ただ、ジブリ版『耳をすませば』とほぼ一緒なのでそこまで時間かけてやる必要性がちょっと……。この映画観る人、ジブリ版から興味もった人がほぼほぼじゃないか。
  • 子役の演技が本当にアニメみたいでうー------ん。これは子役が悪いというより監督が悪い。

 

最後に

色々書いたが、雫に対しての解釈違いがほぼなので、そこ問題ないなら楽しめると思う。意外と良い映画である。特に聖司の家で雫が歌うシーンで過去と交差する演出は良かったと思う。本当本当。

夢をテーマにしているので『翼をください』の歌詞も似合っている。ただ、なんだか不安な気持ちになるのはエヴァが悪い。

エヴァが悪い。

大事な事なので2回書きました。

わーわー書きましたが以上です。最後まで読んで頂きありがとうございました。