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【ネタバレ】『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』感想レビュー。笑みが止まらない

映画だし流石にニコルの回想流れんだろ→2回も!?

 

コンテンツにおける原初体験って大切だと思う。

僕にとって1話から50話までリアルタイムで全部見た始めてのガンダムが機動戦士ガンダムSEEDだった。結果、ガンダムで一番想い入れがあるのがSEEDシリーズである。

それまでもコロコロよりボンボン派だったり兄の影響で『がんばれ!ドモンくん』や『スパロボ』シリーズが好きだったりしたけれども、ちゃんとガンダムと向き合ったのはSEEDが初めてだった。親と一緒に見ていたので裸OPで少し気まずくなったりしたけれども、MSのカッコよさにひたすら引き込まれ、キラを追いつめることに余念がないストーリーにハラハラドキドキし、ガンダムっておもしれ~~~とウキウキで当時知ったばかりの「2ちゃんねる」を見に行ったら滅茶苦茶に叩かれていて気分を悪くするまでが1セットだった。

女に媚びたキャラデザインと展開、使いまわし、総集編ばかり、1stのパクリ、シナリオの質、キラの不殺が気に入らないetc

当時はガンダムシリーズの新作が出るたびにガノダおじに叩かれる通過儀礼的(糞)なことがあるなんて知らなかったし、SEEDは人気もあったから反発も大きかった印象。

あぁ今回の話は文句なしで最高だったろ!!→滅茶苦茶叩かれてる→クソが!!!というリアル視聴勢にしか味わえない2ちゃん地獄感想巡りで精神的自傷をよくしていた。

あまりにも怒り心頭で近所のビデオショップで初代ガンダムを借りて「いやいやSEEDの方が面白いぞ!!」と理論武装しようと思って母親に小遣い貰おうと説明したら「そんな理由で作品みるな!」と普通に怒られた思い出。2日ぐらい晩御飯を残すことで抗議活動したけど認められなかった。好きなチャーハン出されて負けた。

 

そして続編のSEED DESTINYになると滅茶苦茶滅茶苦茶滅茶苦茶叩かれ、当時の僕は学校に居場所がなくて「2ちゃんねる」が唯一の憩いの場だったのにあらゆる所にアンチスレなどが立ちそれが嫌で2ちゃんねる離れしたのも今になっては懐かしい。

 

確かにSEED DESTINYは完璧とは僕も思わない。MSは相変わらずカッコイイが、キラとラクスは内面描かな過ぎて人間味があまりにも希薄だし、シンは「前作主人公に主役を奪われる」というとんでもない立ち回りをするし、アスランはイジイジしまくりだし、でも凸凹含めて楽しく、毎週「えっ!!これどうなるの!!??」と驚きハラハラしたあの想いは嘘じゃない。最後は一見完璧に見えるデスティニープランを否定し、「戦い続ける」と宣言したキラ・ヤマトの勇姿に涙を流したの、嘘な訳がない。そんな彼らの続きが見たいなと思った所に映画化の噂を聞きうぉぉおぉと思ったまま僕は社会人になり社畜として辛うじて生きながら30代を迎えた。

20年。

あまりにも長い年月。もはやガンダムSEEDは僕にとって好きとか嫌いとか一つの感情で括りきれるものではなくなってしまった。

とうとう公開された『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

期待と不安、直前に趣味で受けた2種電気工事の合格を知った喜びでごちゃごちゃになりながら映画を観たのだが

 

これがもう笑みがとらまないのよ。

 

普通の映画だと思うとまぁ出来はよくないと思う。展開は強引だしよく分からないカットは挟まるしこの新キャラ必要か?と思うしなんであんな所に核配備しているの!?4行のパスワードで核撃てるの!?とビビるし、でも後半からのあの多幸感。相変わらず倫理観やばくて人が死にまくっているのにこんなにも人って幸せを享受できるのかって思うほど。そんなの楽しめるなんてグロテスク?うるせーばーか。しかもこの多幸感なかなか体から抜けてくれなくて寝れなくて困ってる。助けて。

という訳でここからはネタバレありで感想書いていくよ。

 

シン・アスカ

デスティニーガンダムは分身できるから無敵の分身殺法を皆さんご存知かと思いますが…

 

キラがデスティニープランを否定したことや議長に対してずっと悩んでいるのに対して議長の呪縛からも逃れキラ隊長に頼りにされて〜しか考えてないの可愛い。深い闇を抱えているけれども憑き物の落ちた可愛い後輩犬シンが良すぎる。この時点で映画の価値100000000000000000点。「頼りにしてるよ、シン」「…はいっ!!」のシンの嬉しそうな表情よ。


キラが馬鹿にされるとムッとし、アスランは呼び捨てなのも忠犬感あるし、キラとアスランの殴り合い、どう考えてもキラがやけっぱちになってるのにアスランに対して敵意むき出しで飛びかかるシンに笑うし巻き添えで殴られてしまうシンに更に笑う。キラとアスランとシンの主人公3人組はじゃんけんのような力の三角関係になっていて本作でも

キラに殴られるシン
アスランに殴られるシン
ルナマリアに殴られるシンと綺麗なトライアングルになってますよね。

 

ディステニーガンダム見てお子様ランチみた子供みたいな笑みになるのも凄い可愛い。

そしてシン「ジャスティスだから負けたんだ!デスティニーなら負けない」(4対1で囲まれても直撃弾一切なく電池切れしたルナに補充しながらでも負けないの意味)

まぁSEED世界ってパイロットの精神状態が強さに大きく作用されるからアスランから受け継がれたジャスティスだと本領発揮できないのも仕方ないかも。

 

デスティニープランをかがげてるブラックナイツがデスティニープランの象徴みたいな
デスティニーガンダムにボコボコにされるの皮肉というか、デスティニーガンダムとシンがデスティニープランの正確性というかほんのわずかな正しさかなと思うぐらい相性良すぎる…。そしてそんなシンとデスティニーガンダムがデスティニープランの力の象徴でもあったレクイエムを壊したのは〆として良すぎるし、ようやくシンはオーブを守れたんだね。

というかあのレクイエム、実質粛清ロリ神レクイエムじゃんとなった。

 

まさかのステラ・ルーシェの登場!!これを声優バレしないように桑島法子さんの新キャラ登場させたんじゃないかと疑うほど。

ステラがシンを守って登場。うおおおおステラ!!→えっステラ…?何それ怖…で僕の情緒不安定だよ!!!

シンとルナ色々イチャイチャしてたけども、やはりデスティニーとインパルスのデュートリオンビームが優勝。お互い息の合った1級のパイロット同士だからこその描写。というかシンとルナのイチャイチャ、声優さん同士が結婚していると思うとなんかどういう気持ちになればいいんですか!!??

 

 

アスラン

本作のネタバレを簡潔に言うと

 

アスランが真顔で面白いことをする

アスランが真顔で面白いことをする

アスランが真顔で面白いことをする

 

 

本作、中盤まで結構な溜め展開であり時間が進むのがゆっくりに感じられ「この映画大丈夫か…?」と心配してしまうのだけれども、アスランが本格的に登場してから空気が変わる。監督が声優の石田彰さんに「今回のアスランは悩まない」と言ったらしいけど、ウジウジしないアスランってこんなに強いし面白いのかって。お前、仮面つけたり、裏切らなかったな。

非宇宙世紀で急にズゴックに乗って現れたら大体面白い。サプライズズゴック理論。

最終決戦でもズゴックで「アスラン、ズゴックで終わり!!??」からズゴックの中からインフィニットジャスティスガンダムの登場である。この衝撃ブラックサレナの中からアキト用エステバリスカスタムが姿を現した時以来である。何で感動するより笑えるんだろう。

正直、本作観て1番欲しくなったプラモはズゴックである。バンダイは早く超技術でズゴックinインジャのガンプラ出すんだよ!!!

 

そして精神的に折れたキラに対して「キラ!この馬鹿野郎!俺たちに頼れよ仲間だろ!!!!」って殴るのはいいシーンなんだけどそれにしたってキラの攻撃は全部いなして一方的に殴るのはズルい。さっきまでキラが「だってみんなが弱いから僕一人で」と言ってた反動もあって真面目なシーンなのに笑ってしまう。ついでにシンも殴るな!!!急に「笑ってはいけないガンダムSEED」するな!!!!!

 

最終決戦も最強の相手に対して何度も呆れ顔で「そんなものか……」する様よ。あまり煽りがキレキレで冷淡でSEED DESTINYでシンには言葉足らずながら心配し必死に気持ちを寄り添っていたのが分かる。なんで普段は言葉足らずなのに煽りになると完璧なんだ…ネット民か?

何よりも精神を読んでくる相手に「カガリとのエロい妄想」を見せて勝つの無法過ぎる。シュラくん、SEED世界だと最強パイロットだと思うけれども口論では煽り倒されるわ、頭の中覗いたら破廉恥な映像見せつけられるわでアスランなんかと戦ったせいで散々だろ。というか映画公開前の監督の「カガリはキス顔なんかしない」が伏線だったの誰が気づくか!!!

 

 

キラとラクス

脳破壊されて無言で逃げる准将を2回連続でやった意味ある?

 

SEED DESTINYだとあまりにも人間性を描かれなかった2人。本作はそんな2人の内面を描く。

正直、本作は世界情勢だけみると何もよくなってない所か悪化している。地獄のCE世界が更に地獄になるだろう。何故ならキラ自身は洗脳されたとはいえ軍法会議モノのことしたし、コンパスという組織が継続できるかも不明だし、地上はレクイエムや核でめちゃくちゃだし、結局ブルーコスモスの首領ミケールは逮捕出来てないしザフトは1部勢力がレクイエム秘密裏に再建してたのバレちゃったし今回の出来事がザフトの支援で独立したファウンデーションのやらかしだしでこれからも混とんとするのが目に見えている。ていうか戦争始まりそう。

 

それでも本作はハッピーエンドである。

ただの学生だったキラが戦場で心がぶっ壊れて星の狭間で半ば廃人になって終わった初代。
SEED DESTINYでは戦士として再起したけど心は壊れたままで時間が経った劇場版では心も少し癒されて世界と向き合い「ディステニープランを否定して良かったのか?」と不安に苛まれる。そこにはSEED DESTINYでの完璧で達観した要素はない。これこそが人。そして初代の「やめてよね。本気でケンカしたら、サイが僕に敵うはずないだろ……」と同じような「君達が弱いから」という傲慢さ。これも昔のような人間味がある。象徴から人間に降りる。これこそが本作。

今回のキラに関しては本当に「言えたじゃねえか…」って思ってしまう。今まで色々背負い過ぎ素の自分を我慢してる印象しかなかった。

 

完璧ではない。誰かに頼らなければならない。「力だけが僕の全てじゃない」→「力ない貴様に何がある!?」→「ラクスへの愛だ!!!」は自分を苦しみ続けたクルーゼに対する解にもなっていて良い。

元々世界情勢については戦い続けるだけってDESTINY時点で結論出したので、後はその戦い方である。

キラは1人で戦うのではなくラスクと共に戦うと決めた。それはもう初代から見続けた者にしたら最高のハッピーエンド。

それにしても実家暮らしのガチ恋オタみたいな敵に対して「僕にはラクスの愛があるけど貴様は?」とレスバできるキラ、成長したな。

 

そしてラクス。ほんわか歌姫から覚悟完了のやべー女になっていた彼女。本作でも表面上は強いけど、涙を流すシーンがある。女帝モードはレスバも最強なんだけれどもそれはそれとしてちゃんと心は傷つく。彼女も神ではなく人間なのである。

それにしてもラクスがつくる料理、やたら揚げ物が多いし、単純に量も多すぎる。キラって普段カロリーメイト1本とかで過ごしているイメージあるから沢山食べて欲しい気持ちは分かるけれど、普段カロリーメイト1本とかで過ごしている胃袋に入る量ではないのよ。困ったキラはシンを家に呼びそうだし「ラクスさんのご飯おいしいっすね」と夢中で食べるシンは容易に想像がつく。それをみてルナも溜息つきそう。

 

最終決戦でもキラ「承認願います」すぐ横にいるラクス「議長です承認します」は迅速な報連相過ぎて笑った。

最後は誰もいない浜辺で好きな人とすっぽんぽんになるこれが自由でなくて何なんだ。見事なまでのタイトル回収である。ただ絵面が強過ぎてラクスの「あなたの中に私はいますか」みたいな独白が全然頭に入ってこなかった。

 

キラとラクスの夜の営みが想像できないって散々言われてきたけれども、神から人になった今の2人ならね…。とりあえず家にカーテンを買おう。

 

細かな所

  • 序盤の降下中に一瞬映ったブラックナイトVSストフリのカットはあれなんなんだ!!フリーダム強奪事件って何だんだよ…。
  • MSをカッコよく描かせたらSEEDは最強
  • デュエルバスター再登場にミーティア装着などファンサの鬼
  • ディアッカの「忘れてないさ」が1番の心に残る名言かも
  • アグネス「キラ隊長好き(ルナマリアより格上の彼氏作ってマウント取るぞ)」というアカデミー時代からルナマリアにはずっとこの態度みたいだから潜在的百合なんだよな。これ知ってから大好きなキャラ
  • トダカ仕込みの百発百外れの茶番の砲撃
  • サイ!!!???
  • アカツキはこれはもうなんかズルくないか
  • オーブは相変わらず自由だけどプラントも他の国も自由だからちょうどいいのか。戦争にルールなんてない。
  • 核やレクイエムや人間爆弾で人が死ぬ描写でニヤニヤしちゃう、助けて
  • 艦隊戦も良すぎる
  • 劇場に『Meteor-ミーティア-』が流れた時僕の心は30代ではなく10代になった

 

最後に

「ここ泣くところ~~」みたいな映画ではないと思うけれども、鑑賞後のうぉぉぉぉぉ感ね。ファンサの鬼。それもこれもあるのか!?感。鑑賞後周りのオタクもうぉぉぉぉぉぉとなって熱弁していて良かった。子供の頃、ネットで叩かれまくってた作品の続編なので当時は見えなかっただけでこんなにもSEEDって愛されてた作品なんだなと実感できるのも良い。世界一平和な空間である。

でも人気だからといって応援上映とか始まって核シーンに「青き清浄なる世界の為に~~」とか叫ぶオタクが出てくるのが予想されるので少し考えて欲しい。

 

SEEDの世界はこれからも続くかもしれないが、キラの物語はこれで終わりだろう。当時は年上だったのに今では思いっきり年下である彼らの勇姿を見て、SEEDシリーズを見続けて良かったなと心から思う。アンチの感想を吸収して「なんだコレ…しょうもな」とならずに想いを持ち続けた者たちへのご褒美。そんな映画でした。