社会の独房から

映画やゲーム、漫画など。

映画『としまえん』感想。お化けよりドデカ重い百合感情が怖い

関西圏に住んでいる私は東京都練馬区にある遊園地「としまえん」に馴染みが全くない。

私が印象に残っている「としまえん」とは『水曜日のダウンタウン』の人気企画「真・モンスターハウス」でモンスターこと安田大サーカスのクロちゃんが檻に入れられ、22時間にわたり来場者に一般公開される罰ゲームの舞台になったことだ。

多数の人がクロちゃん目当てに「としまえん」に詰めかけてパニック状態になり、周辺での渋滞や騒音で110番通報が相次ぎ、警察官が現地に出動するという事態に発展して罰ゲームが中止になり「モンスターより人が怖い」という事を教えてくれた印象しかない。

 

そして今回そんな「としまえん」を舞台にしたホラー映画を観たので感想を書いていきたい。ネタバレあるので注意して欲しい。

映画 としまえん

2019年公開 【監督・脚本】高橋浩 【出演】北原里英小島藤子、浅川梨奈、松田るか、さいとうなり、小宮有紗、國島直希、鈴木聖奈、沖田×華、吉川美結、三嶋悠莉、河瀬祐未、YOUNG DAIS、中山峻、中島ひろ子竹中直人

あらすじ

東京都の老舗遊園地「としまえん」で囁かれる都市伝説を、としまえん全面協力のもと映画化したサスペンスホラー。大学生の早希(北原里英)は、高校時代に仲の良かった友人、杏樹(小島藤子)・千秋(浅川梨奈)・亜美(松田るか)・かや(さいとうなり)たちと一緒に、かつてよく遊びに行ったとしまえんを訪れる。ネットで噂になっていた「としまえんの呪い」があるという古い洋館を見つけた早希たちは、軽い気持ちで噂を試すが、その直後から恐ろしい現象に次々と襲われ、メンバーが1人また1人と姿を消していく。友人たちを必死に捜すうち、早希は呪いの誕生にまつわる恐ろしい秘密にたどり着く。

としまえんの呪い> 

  1. 古い洋館の扉を叩くな
  2. お化け屋敷で返事をするな
  3. ミラーハウスの秘密の鏡を覗くな

それを破るとどこかに連れていかれる。

呪われるハードルが結構低いけど、よく利用する練馬区民の方々には常識みたいなので普段からうまく回避しているのだろう。流石都会指数殆どZ組。

 

残念ながら「としまえん」は今年の8月末から段階的に閉園して跡地に人気映画「ハリー・ポッター」のテーマパークが建つらしい。この場合、呪いはどうなるんだろうか。

呪いという存在は土地に根付く風習もあるからテーマパーク自体が潰れた後も残るかもしれない。そうなると新しくできる「ハリー・ポッター」のテーマパークにそのまま便乗する可能性も十分考えられる。

  1. スリザリン寮の扉を叩くな
  2. 屋敷しもべ妖精の忠告に返事をするな
  3. みぞの鏡を覗くな

のように都市伝説は受け継がれていくのだろうか。

 

怖くはない

本作はニコ生演出からスタートする。

最近のホラー映画、冒頭で犠牲者になる人のニコ生主とyoutuber率がやたら高い気がする。

製作陣もこいつらなら危険な場所に行かせやすいし、気軽に殺せるとか思ってそう。

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(C)2019 東映ビデオ

YOUNG DAISさんがこのシーンで出ているのも無駄に豪華で良い。ただ、冒頭の犠牲者の中に女性がいたせいで、本編で出てくる主人公の幼馴染で行方不明になってしまったという女性がこの冒頭の女の子なのかなと無駄なミスリードを食らい、全然関係ない事が判明し、全然関係ないんかい!ってなってしまう。

 

そして残念ながら本作はホラーとして見たらまったく怖くない。映像があまりにもチープ過ぎる。それ故にホラーではなく「復讐モノ」と認識してもらった方が良いのかもしれない。

 

 

今回の怨霊は高校時代に陰キャで疎まれていた小林由香(小宮有紗)であり、主人公グループから「としまえんの呪いを試せ」と言われ、実際に試し、呪われてしまった事への復讐が物語の大筋なのだ。

f:id:Shachiku:20200511001615j:image (C)2019 東映ビデオ

 

主人公グループはどいつもこいつも性格が悪く、頭が悪いので死んでも全く可哀想だとは思わないし(いい感じに仲間同士で言い争いになったり、裏切ったり、ビンタして仲間割れが起こり観客に負の感情を与えてくれる)その結果、「由香頑張れ!そこだ!呪え!ざまぁぁぁぁぁ」って気持ちになる。

 

今までの「ホラーもの」って基本的には理不尽で、なぜビデオを見たり、他人の敷地に少し入ったぐらいで殺されなければならないのかと憤りを感じてしまう事がある。

あまりにも幽霊側の一方的な八つ当たりであり、その自己中心的発想にイライラしてしまう事があるが、本作では完全に因果応報なので全くそんな事はない。

ノーストレス、ノーホラー

が本作の特徴だ。

 

終始、主人公の早希だけは良い奴のように見える。

だが実は由香失踪の最後の引き金を引いたのは他でもない幼馴染の早希だった事が判明して、呪われて終わるも良い。

 

ただ、1926年からの歴史がある老舗遊園地なんだから

なぜ「としまえん」に呪いが存在するのか?

という説明が全くなかったのが勿体ない。

としまえん」が閉園する前に『犬鳴村』のスタッフでもう一度映画撮って欲しい。

 

www.shachikudayo.com

 

 

百合映画でもある

本作の主人公である早希と、怨霊になった由香は幼馴染でずっと仲が良かったが、2人は成長していく内に「みんなに好かれたい早希」と「早希だけいればいい由香」という決して交わらない考えを持つようになってしまう。

 

この「早希だけいればいい」という感情がクソ重たく、早希が自分以外の子と仲良くるのが段々我慢できないようになっていき、どうにかこっちだけを見てもらおうと「幼い頃、二人で『としまえん』で遊んだ写真」を早希にプレゼントする。

そんなプレゼント、怖ってなる。

早希も「なんだこのプレゼント」みたいな顔をする。当たり前だ。結局、由香はプレゼント作戦が失敗し、自暴自棄になり「としまえん」の呪いを試してしまう。

 

そして怨霊になった由香は早希を呪い、2人は誰の邪魔も入らない「秘密の場所」に行くのであった。

 

お化けよりその一方的な感情の方が怖い。

 

最後に

この映画を観ると「としまえん」にあるメリーゴーランドが110年前のドイツで作られ、そこからアメリカへ行き、1971年に日本に来たこと。2010年には機械遺産に選ばれた事など、「としまえん」の豆知識を得る事は出来るが、問題はこの映画を観ても「としまえん」に行きたいと思わない所だろう。

 

また、この映画の1番怖いポイントは怪奇現象ではなく、結構序盤に出てくる竹中直人の顔芸である。

本当にこれはインパクトがあって、後の心霊要素が全て霞んでしまったのは問題があると思う。

しかも、竹中直人の存在が別に怨霊という訳でもなく、ただ愛想が悪い「としまえん」のスタッフであり、本編に全く関係ないのもズルい。見終わった後に竹中直人は一体何だったんだとなる。

としまえん」はいつでも僕らに「モンスターより人が怖い」という事を教えてくれる。

 

映画 としまえん

映画 としまえん

  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: Prime Video
 
ヒトコワ-ほんとに怖いのは人間-
 

 

映画『一度死んでみた』感想。デスメタルがデスメタルになってないのには意味がある。

監督はauCMの『三太郎』シリーズを手掛ける浜崎慎治。脚本はソフトバンクCM『白戸家』シリーズを手掛けてきた澤本嘉光。そこにフジテレビも関わるという

ここまでの「Not For Me」案件中々ないよ。

と思ってしまうのは僕だけだろか。

ただ、ただである。

観てもない作品に対してNot For Meと偏見を持ったままでは、ドンドン偏屈な頭になっていってしまう。

 

Not For Meこそが新しい自分を開く扉である。

 

そんな期待を胸にこの映画を観た。

 

「意外とそこそこ面白い」という感じ。特に新しい扉は開かった。

ノイズもあったけど何だかんだ話がしっかりしていて、伝えたいメッセージも分かり、何より俳優陣の熱演が気持ちよい。

期待値-5で観に行ったら+5ぐらいの面白さが出てきて

結果的に+10になったような作品で満足度がある。

そんな本作の感想をネタバレありで書いていきたい。

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デスメタル騒動について

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(C)2020 松竹 フジテレビジョン

 

予告で主役の野畑七瀬演じる広瀬すずさんが歌っているデスメタルの歌詞に「です!です!」と連呼しているのが一部デスメタルファンの方々から「こんなのデスメタルじゃない!」とクレームがあった。


映画『一度死んでみた』予告(60秒) 2020年3月20日(金)全国ロードショー

 

では本当のデスメタルとは何ぞや。という本質論はここでは書かない。

 

ただ、これは作品を観た人なら分かるが、「こんなのデスメタルじゃない!」というのは完全に製作者の意図することだった。

この騒動で製作陣はシメシメとほくそ笑んでいるのではないだろか。

 

野畑七瀬は父親である野畑計(堤真一)への反発からデスメタルの道に進んだだけであり、野畑七瀬の顔の良さから多くのファンは獲得しているが(なんせ広瀬すずだし)音楽プロデューサーからは彼女の歌声には「魂がない」とdisられる。

パンフレットにも音楽を担当したヒャダインさんが「野畑七瀬はデスデス言っているだけでデスメタルになると思い込んでいる。可愛い」と仰っている。

野畑七瀬が本当にしたい事はデスメタルではない。では彼女は何がしたいのかが本作の一つのテーマになっている。

野畑計のセリフに次のようなモノがある。

 

目に見えることだけが存在じゃない、大事なのは存在する目的。何のために生きるのか。それがない人は存在していない。死んでいるのと一緒だよ。

 

野畑七瀬には「父と同じ製薬の仕事に就き、大勢の人を救いたいが、同時に自分の妻を看取ることすらしなかった父と同じ道は進みたくない。」という葛藤がある。

だから彼女はデスメタルの道に逃げたが、それは彼女の本当の目的ではない。それ故に「デスデス」という歌詞になってしまう。そこには魂がない。

 

しかし、野畑計は実は妻を救うために薬をぎりぎりまで開発していた事が判明し、また、病院に行けなかった事をずっと悔やんでいることを野畑七瀬は知る。

妻よりも大事な研究などあるはずもないと、野畑計を軽蔑していた野畑七瀬は自分が間違っていたことに気づく。

 

そして野畑計にとって一番大切なモノは娘である野畑七瀬自身だった事を知り、彼女は逃げていた本当にやりたい事に向き合い、生きていく事を決意する。

「製薬で多くの人を救う」

だからこそ、彼女の魂が籠った「水平リーベ僕の船」は多くの人を感動させる(ここの広瀬すずさんの歌唱力凄い。好き)

 

役者が豪華

 

こんな事書いたけど、ここら辺の人達は「本当にいたの?」って思うぐらいの存在感なので安心して欲しい。

それ以外にも

竹中直人妻夫木聡加藤諒佐藤健・でんでん・柄本時生前野朋哉西野七瀬城田優原日出子真壁刀義本間朋晃池田エライザ・志尊淳・古田新太松田翔太大友康平・野口 聡一

といった大物俳優(+宇宙飛行士)たちが5分に1度ぐらいのペースで出てくるので画面を観てるだけでも楽しい。佐藤健のキスシーンとか『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』以来の劇場から悲鳴が聞こえてビックリした。

邦画のお祭り映画だと思うと楽しめる。

 

あと、広瀬すずさんと吉沢亮さんのコンビというNHK朝ドラ『なつぞら』で結ばれなかった二人がこの映画で結ばれる形になったのが、本作の物語以上の意味を僕たちに与えてくれる(ただ、エンドロール後のキスシーンが蛇足過ぎる。ここ話題になった欲しいなというスタッフの嫌な笑顔がチラついてダメだった。キスまでの積み重ねもなく唐突のキス。本当にダメ。反省して欲しい。『スターウォーズep9』でのあのキスを思い出す)

 

吉沢亮が存在感ない世界線

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(C)2020 松竹 フジテレビジョン

本作のもう1人の主役でもある松岡卓演じる吉沢亮

存在感のないゴーストのような存在なのだが

そんなイケメンで存在感がないは無理がある。

これだけはまず、ハッキリ言っていきたい。

ただ、思っていたより存在感を消せていたと思う。凄い吉沢亮

 

社内ではゴーストと呼ばれる存在感のなさを松岡卓自身は欠点だと思っている。

しかし、野畑計は言う。その存在感のなさは一つの特技、才能なのだと。

そしてその言葉通り、松岡卓は存在感のなさを発揮し、何度も窮地を救う。

 

人と違う所はみんな特技である。

 

そんなある意味、綺麗ごとにも聞こえる言葉が本作では重みをまし、自分のダメな所、嫌な所、人とは違う所。それらをほんの少しでも以前より愛せるようになる優しい映画になっていると思う。

 

最後に

コロナ騒動でどうしてもピリピリしてしまう昨今、こういう頭のチカラを抜いて観れるのも息抜きに丁度良いと思う。

初期のクドカン作品臭もするし、伏線はしっかり回収してくれるため気持ちが良い。

棺桶を買い占めるシーンとか邦画コメディの悪さも出てるけど、まぁ笑える人には笑えると思うので、笑いのセンスが合うかどうか決闘みたなノリで観に行くのも良いかもしれない。

広瀬すずさん、やっぱり歌もうまいので歌手活動も並行してやって欲しいなと願望も書いておきたい。

 

最後に一言。

色々考えたけど、やっぱり吉沢亮に存在感ないは無理がある(地味な恰好してるけど、イケメンさを抑えきれてないからね、地味イケメンだよ)

 

小説 一度死んでみた (角川つばさ文庫)

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映画『Fukushima50』感想。素晴らしい冒頭と嫌悪感しかないラスト

ネットでは「事実の加工」がされているという事実との相違の問題や、イデオロギーの対立の道具になったりしている本作だが、個人的にはそういう事じゃなくて、単純に娯楽映画として酷い出来であり、あまりにも邦画の悪い所が凝縮されているとかそういう話をしたいんですよ!!

 

という訳で本記事ではそういう話を中心にネタバレ全開で書いていきたいと思う。

「Fukushima50」独占特別映像

監督:若松節朗 原作:門田隆将 脚本:前川洋一

 

 

陳腐で凡庸な人間ドラマと最悪な終わり方

映画館で鳴り響く緊急地震速報。これ程怖いモノは早々ない。

本作は「2011年3月11日午後2時46分」の地震が起きる瞬間から物語は始まる。

この冒頭の緊張感と作品への没入感は本当に素晴らしくて、まったりとした登場人物の説明もなければイチイチ状況説明もない。 日本国民なら何が起こったかなんて説明しなくてもわかるよなというストロングスタイル、嫌いじゃない。

ああ、これがあの時福島で起きていた事なんだなと思わせてくれる。

地震の揺れと心の動揺でヘルメットを中々掴めない渡辺謙や『空母いぶき』でお腹痛い総理を演じて右翼層から怒られ、本作で今度は左翼層からこんな映画に出るなと怒られるというある意味1番中立派では!?と感じられる佐藤浩市による細かな演技一つ一つが生きている感を与えてくれる。

 

そして地震後の引き潮とそこから大津波が迫ってくるあたりのVFXは圧巻である。VFXは三池敏夫さんという『ゴジラ』シリーズなど特撮で著名な方が一年かけて作ったらしいのでそりゃ迫力満点である。正直、こんな映画に一年ものリソース割いたのが勿体ないと思ってしまう程である。

 

この映画の基本的な流れは

トラブル→対策なのだが、

「死にたくない者は残れ!」
「僕も行きます!私も行きます!」
「お前ら…(思いがこみ上げる)」
頑張る現場に対してギャーギャー騒ぐ外野

の繰り返し一辺倒であり、段々緊張感がなくなってくる。

 

しかも、「決死隊」など福島第一原子力発電所の事故への対応を美談めいた話にしようとしてくるが、最終的に人為的に一切関係ない所で奇跡が起こり、そのまま問題が解決したかのように話が進んでしまい、事故に対しても「自然を舐めてはいけません」とフワッと締めてしまうため、カタルシスも何もなく美談にもならず、感動もしない。

 

それでもまぁ事故対応自体は観れるのだが、中盤あたりからそこに人間ドラマと福島の思い出エピソードを挟んできて、家族映画の要素の比重が増えていく。

そもそもキャラクターは全般的に浅い。没個性であり、どいつこいつも泣いて怒鳴って物に当たり、大袈裟に絶叫し演技する。役者やスタッフは燃えているのかもしれないが、私は冷める一方である。

 

また、命がけで働く男達の生還を祈る祖父、娘、妻の存在。

この家族がビックリするほどの物語をハッピーエンドにするための装置でしかない。

「娘の結婚をめぐる父娘の確執」という凡庸の極みのような設定も辛い。

 

彼女たちはこの東日本大震災及び福島第一原子力発電所の事故という未だ収束していない問題に対して物語として着地するためだけの存在であり、男たちが帰るべき場所であり、実際に最後は家族と再会、桜は綺麗だ、みんなで復興五輪を頑張ろうで物語は終わる。

そういう終わり方を選んでしまう安易な脚本が酷い。

現実で解決していない問題に対しては無理に着地させるのではなく、「俺たちの戦いはこれからだ!」でいいのではないだろうか。

 

また、最後はアメリカ様が「トモダチ」作戦でUSA!USA!USA!という感じで問題が解決したかのような幻覚を見せてくる(アメリカ軍の偉いさんが「福島にいい思い出」しかないらしく、そこで挟まれるセピア調でのラジコンで遊ぶ子供時代の映像もこれまた陳腐で酷い)

 

「福島の街には桜がまた咲いている」「水平線に上がる朝日」という陳腐さマシマシの二郎ラーメンからの「2020年のオリンピックで聖火は福島からスタートします!東京オリンピックは復興五輪です!」というテロップが入るのはただのプロパガンダである。

正気か?

こんな酷い着地点中々ないよ。

この映画のテーマ性で日本国民一丸となって福島のためにも成功させましょではないだろう。

出来の悪い終わり方や、肩透かしな終わり方など色々あるが、嫌悪感が湧いてくる終わり方は本当にすごい。二度と観たくない。

 

 

安易な対立

f:id:Shachiku:20200307220506j:plain(C)2020「Fukushima 50」製作委員会

 

「事件は会議室で起きてるんじゃない 現場で起きてるんだ」

まさかこんなセリフが聞こえてきそうな映画が令和の時代に観られるとは思わなかった。

本記事では「事実の加工」について語る気はないので菅元首相については書かないが、それにしてもあまりにも露骨すぎる正義の現場VS無能な上層部の対立構造は最終的にどっちも無能にしか見えなくなる(それが狙いなら凄いが)

あくまで現場からの視点なのかもしれないし、対立する存在としてのエンタメ部分かもしれない。

分かりやすい悪役なのは、ここが本題ではなくVS福島第一原子力発電所が縦軸だからなど色々説明は出来るかもしれないが、ただのノイズである。

 

またネットで話題になっている『Fukushima50』には菅元総理(菅元総理ではない)が福一に突撃したせいでベントが遅れたと取れる場面は確かに存在するが、ベントが遅れたのは住民の避難完了を待ったためだと説明する場面もある(最終的なベント突入のGOは避難完了した報告後だった

スリードではあるので怒る人がいるのも仕方ないし、フィクションとして済ませるにはまだまだ年月がいるとも思うが、「事実とは違う」「政治的偏りがある」というのは洋画でもあるあるだし、映画という媒体上ある程度は仕方ないかなとは思う。

 

最後に

まだまだ言いたい事はあって

  • パニックものでよくある各国の反応的なニュースの挿入が驚くほどダサい
  • 英語・中国語・フランス語の三カ国のニュースだけなのも意味不明
  • ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で核を使ってゴジラを目覚めさせようとした渡辺謙が本作では炉心溶融を防ごうとする対比は面白いね
  • 「福島はどうなってしまうんですか!」で有名な福島民友記者(ダンカン)の存在意義
  • 『Fukushima50』ってタイトルはAKB48的秋元アイドルユニットみたい(欧米などのメディアがつけた名前なのは知っている)

普通の邦画と違って「福島第一原子力発電所の事故への対応」という笑えない題材を扱っているんだから、エンタメ作品としてもしっかりしてないとダメなんだと思うんですよ。そこらへんがユラユラで最終的には東京オリンピックである。

 

公開のタイミングでコロナが流行してしまい興行収入の面でも大変だろうし、内容的にもコロナで東京オリンピック自体どうなるか不透明になってしまうのはあまりにも運がないけれど、逆にこの不透明感がプロパガンダでしかなかったこの映画の着地点を皮肉交じりの乾いた笑いに変えてくれたと思う(私は頑張っている選手が中止だと可哀想なので無観客でも開催してほしいとは思っている立場)

【追記2020/5/13】結局、東京オリンピックは延期になってしまいましたね。

 

邦画、やっぱりこう気合が入ったというか製作費が高そうな作品は『シンゴジラ』みたいな特例を除いて、人間ドラマがノイズになってしまうの一体いつまで続くのかなと思ってしまう。

 

まぁ、大切なのはこの映画だけを観て、それが真実だと過信しないリテラシーを培っていくことだと思う。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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映画『初恋』感想。ハピハピ極まるベッキーと染谷将太の怪演がまじ怪演

あの三池崇史監督が「さらば、バイオレンス」と宣伝したこの映画は冒頭から生首が転がり、銃弾と血、刀と四肢が飛び交う最高にイカしたバイオレンス映画になっている。

つまり「さらば、バイオレンス」とは真っ赤な嘘ということだ。

しかし同時に「さらば、バイオレンス」はある意味本当でもある。

なぜなら、本作は主人公レオとモニカのロマンス映画でもあり、命を懸けた人生の祝福でもあるからだ。我々は壮大な「初恋」をこの目にするのだ。

 

ただ『テラフォーマーズ』や『ヤッターマン』などを手掛けた三池崇史監督なので「さらば、実写化映画」と宣伝してくれた方が個人的には少し寂しくも嬉しかった気がしないことはない。

 

本作『初恋』の感想をネタバレありで書いていきたい。

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監督三池崇史 脚本中村雅 音楽遠藤浩二

 

あらすじ

龍が如く』シリーズでよくみる欲望の街・新宿歌舞伎町が舞台であり、これまた『龍が如く』シリーズでよくみるファンタジーヤクザと『龍が如く』シリーズでたまに見る悪徳警察に追われる少女モニカ(小西桜子)

そんなモニカを守るのは、病に侵されているプロボクサーの葛城レオ(窪田正孝

そこに『龍が如く』シリーズでよくみるチャイニーズマフィアも加わり、モニカとクスリを巡って大騒動。

ヤクザと悪徳刑事にチャイニーズマフィア。

ならず者たちの争いに巻き込まれた孤独なレオとモニカが行きつく先に待ち受けるものとは。

欲望がぶつかりあう人生で最も濃密な一夜が幕を開く!

 

魅力的なキャラクター達

葛城レオ(窪田正孝)

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(C)2020「初恋」製作委員会

筋肉が凄い。

プロボクサーという役なので、上半身裸のシーンが多いのだが、まぁ筋肉が引き締まっている。好き。

親に捨てられ、「これしかなかった」とボクサーの道を歩むものの、どこか冷めていて生きているようで生きていない。そんな彼は残り命が短いと診察され、ヤケクソになり追われていたモニカを助ける。

最初はそう、ただの自暴自棄だった。

どうせ死ぬんだから「死」なんて怖くない。

そんなある意味自殺のような行動がヤクザやチャイニーズマフィアの抗争に巻き込まれるようになる。

しかし、中盤で「残り命短い」はただの診察ミスで健康体だったことが判明する。

あんなに身近だった「死」は急に遠い存在になり、その時彼は初めて「生」を感じ、「死」に恐怖する。

生にしがみつくか、自分と同じように生きているようで生きていないモニカを守るか。

そして彼は判断する。モニカを守ると。

「死んだ気になりゃやれるはず」

今まで死んでないだけで生きてなかった彼は初めて「生」を感じ、それ故に「死」も感じることが出来る。だからこそ死ぬ気で行動することが出来る。

葛城レオの人生はここから始まるのだ。

モニカ(小西桜子)

 

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(C)2020「初恋」製作委員会

2020年に映画『アストロエイジ』 や実写版『映像研には手を出すな!』など急に売れっ子になった小西桜子さんの体を張った演技も本作の見どころの一つだ。

クスリのせいでモニカには自分のおやじの幻覚が見えるのだが、見える幻覚のおやじがブリーフ一丁なので絵面がシリアスな笑いである(ブリーフ一丁に見える原因が幼少期からおやじにレイプされていたという笑うに笑えない理由なのも卑怯である)

特に電車の中でブリーフ一丁のまま琉球舞踊踊るおやじをどんな気持ちで見たら良いのか分からない。異様で異常ある。

龍が如く7』でもそうだったが、ヤクザを題材にした作品でのブリーフ一丁率の高さが気になる。親和性があるのかもしれない。

加瀬(染谷将太)

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(C)2020「初恋」製作委員会

 

個人的今一番好きな俳優さん。

最初は今どきの温厚な人間だと思わせておいて実は策士的ヤクザ。

策士なのは良いが実際の行動になるとポンコツなところもあるため、何一つ策通りにならない可愛らしい所がある。

物語を加速させるキーマンなのだが、策士とポンコツの狭間で狂気に満ちていく怪演が凄まじいの一言。

本作の一番の悪で、一番人も殺しているが、嫌いになれない憎い奴。

前から思ってたけど染谷将太さんって独特の発音の仕方をしてて、聞いてて癖になる。

本作でも会話のシーンが多いので耳が幸せだ。

僕も死ぬときは傷口にクスリ塗ってハッピーになりながら死にてーな。

 

権藤(内野聖陽)

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(C)2020「初恋」製作委員会

ファンタジーyakuzaここに極まる。

最初は時代遅れのすぐ死ぬヤクザかと思いきや、そんなこと全くなく、オタクが考えるヤクザ通りのヤクザで観ていて気持ちが良い。

スマホとか最先端なモノに疎かったり、ベッキーの気迫に圧されたり、可愛らしいとこもありつつ、最後のホームセンターでの決戦では、刀と銃という最高にカッコよい装備で無双してくれる。

個人的に内野聖陽さんってNHK大河『真田丸』での徳川家康のイメージが大きいので、泣きながら山を駆け巡る印象しかなかったが、本当にカッコよい役者さんである。

 

ジュリ(ベッキー)

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(C)2020「初恋」製作委員会

本作のMVP。ハピハピパワー炸裂である。

好感度NO1タレントがゲス不倫によって、社会的制裁の超特大元気玉をくらい、テレビレギュラーが激減したベッキー

もしかしたら過去のそういういざこざのお陰で本作でのこんな怪演を見ることが出来たのだと思うと、ありがとうゲス不倫という気持ちで一杯だ(最低)

ヤクザ相手に制裁キックするベッキー、復讐相手を見つけ車のボンネットの上で踊るベッキー、絶叫するベッキー、ホームセンター内でウロウロするベッキー、刀を振り落とすベッキー、復讐をやり遂げ叫ぶベッキー、どれもこれも今までみたベッキーの中でNO1である。

「小石に躓いたけど、君が笑ってくれたから、だったらもういいか」精神の極みである。

これから女優ベッキーとして頑張ってくれ!!!出来れば『来る』の柴田理恵と共演した女優アベンジャーズを作ってくれ(願望)

 

細かなところ色々

アニメ演出

最後のカーチェイスで突然アニメ演出入る。よく出来てはいるがやはり突然過ぎて困惑した。全員突然クスリをやって幻覚を見たのかと思いきや、そうでもなかったし。

アニメの意図に関して監督が説明している


三池崇史監督、『初恋』一部をアニメーションにした理由は?日本の“スタントマン”事情が一因⁉︎ 映画『初恋』外国特派員記者会見

  • 日本ではスタンドマンが高齢化している。
  • 日本では危険な演出は避けられている。

以上の理由で苦肉の策でアニメにしたらしい。

アニメでもよかったけど、実写で観たかったという気持ちはある。少し残念だ。

 

ホームセンターのユニディには何でもある

関西在住の僕は知らなかったがユニディとは首都圏中心のホームセンターらしい。

ラストバトルの舞台にもなっている。

ヤクザとチャイニーズマフィアが暴れまくり、腕や首が飛び、死体が横たわる。

大森南朋が「何でもあるな、ユニディは」と突然のフォローをしてくれなかったら大惨事である。ありがとう大森南朋。すまんな、キャラクター紹介では省いてしまって。染谷のお父さんみたいなキャラで面白かったよ。

個人的には仲間由紀恵似の女優の方が印象深い(まじで初登場シーンは仲間由紀恵だと思ったけど、段々全然違うわこいつってなったので恐らく角度の問題)

恐らく僕はユニディに行くことは一生に一度もないと思うが、ユニディの名前は忘れられないと思う。「何でもあるな、ユニディは」

 

最後に一言。

医者から「健康です」と言われた後に「間違いでした。本当は脳に腫瘍があります」って宣告されただろう名もなき人の事考えると夜も寝れないよ。

f:id:Shachiku:20200229095536j:plain(C)2020「初恋」製作委員会

↑こんなにもハピハピの波動を感じる顔はない

 

 

ハピハピ

ハピハピ

  • 発売日: 2009/12/02
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

スシローでラーメン食べたら『南極料理人』のラストを思い出した話

ラストシーンが大好きな映画ってあると思う。

僕なら『トリック劇場版 ラストステージ』や『インセプション』、最近なら『ジョジョ・ラビット』などがある。

そして『南極料理人』の終わり方も味わい深い。

 

南極料理人』とは堺雅人が料理人として南極に一年間派遣に行き、そこで色々問題が起きたり起きなかったりするヒューマンドラマだ。

 

最後、南極から帰ってきた堺雅人は家族で遊園地に遊びに出かけ、昼に園内のカフェテリアでハンバーガーをほおばるところで一言、「うまっ」で物語が終わる。

 

f:id:Shachiku:20200226211429j:plain(c)2009「南極料理人」製作委員会

実はこの作品、料理映画の側面があるにも関わらず「うまい」という旨のセリフは最後のこのシーンしかない。

普通に考えるとこのラストシーンは南極隊員という孤独からの解放、そして食事は家族と食べるのが一番という普遍的メッセージなのだろう。

しかし、私はそういうメッセージ要素以外の意味でこのシーンが好きだ。

 

遊園地で売っているハンバーガーという食べる前から分かる60点ぐらいの美味しさ。

作中でも食べる前から「ベトベト」しているなど如何にも60点ぐらいのハンバーガーを想像できるようになっているが、一口食べると漏れ出す言葉が「うまっ」である。

 

全然期待してなかった料理を食べてみてると想像以上に美味く、「うまっ」っと感動した経験は誰にでもあると思う。

そう、「うまっ」とはソシャゲでいうガチャで当たったけど全然期待してなかった星一のキャラが意外に便利と判明した時に感じる幸せに似ている。

この「うまっ」について更に掘り下げたい。

 

突然だが、僕はラーメンが大好きだ。

尼崎に「和海」という滅茶苦茶美味いラーメン屋があるのだが、大学生の時にそこでラーメンを食べて激しく感動した。

ラーメンってこんなに美味しいのかと。

f:id:Shachiku:20200226220110j:plain

その感動が忘れられなくて、僕の大学時代は勉学ではなくラーメンに捧げた。

ラーメン不毛地帯でもある神戸や大阪。

雑誌やSNSを駆使し、姫路や京都まで足を延ばして、美味しそうな所は大体食べた。

そこで長蛇の列に並び、ようやく食べるラーメン。

確かに美味い。

美味いが、ラーメンを食べても段々と感動しなくなってきていることに気づく。

様々なラーメンを食べ経験値が増え、行列に並ぶことによって自然と上がる自分の中のハードルをなかなか超えられない。

「あ~この味、あそこの店みたいだなぁ~」みたなクソ薄い感想しか出てこない。

僕の語彙力不足問題は置いておいて、ラーメンに対する情熱は薄れていった。

 

2時間も3時間も並んで意味があるのかと一度悩んでしまうともうダメだ。

これなら近所にあるノー行列のチェーン店のラーメンでもそこそこ満足できるし、そこでいいのではと思ってしまう。

ラーメンは好きだが情熱が無くなり、今に至る。

 

最近の僕は仕事でストレスが溜まると帰りに銭湯に行き、サウナで身体を整えた後、近くのスシローでサーモンだけたらふく食うルーティンがあった。

ただ仕事のストレスが溜まる日が連日になると毎日サーモンになってしまい、なんで僕はこんなにサーモンを食べないとダメなんだ、罰ゲームなのか?と思ってしまうバグ技をくらい、サーモンがストレスの元凶状態になってしまった。

本末転倒。

そこで気分を変え、「鯛だしあさり塩ラーメン」頼んでみた。

f:id:Shachiku:20200226235439j:image

↑見た目は正直美味そうではない。ブログ書く時に改めて写真を見てビックリした、うどんみたいだ。

「うまっ」

回転寿司屋のラーメンということでかなり舐めていた訳だが、これが本当に美味い。

一瞬で完食してしまった。

 

期待してなかった分、ぶん殴られる。

この一瞬の奇跡。

これこそが僕が求めていたモノであり、『南極料理人』のラストなんだと思う。

地上すれすれのハードルだからこそ、大幅に超えると、その幅量に感動する。

 

という訳でそのまま「コク旨まぐろ醤油ラーメン」を注文。

f:id:Shachiku:20200226235427j:image

うん。まぁまぁである。

やはり調子にのったらダメだ。そもそも二杯も美味しく食べれるほど大食いではない。

 

 

ハイローとの出会い。

この「うまっ」現象は食事以外にもありえる。

例えば映画。

 

昔、『ワンダーウーマン』目的で劇場に来たのに、時間を間違えてしまい、暇が出来てしまったことがあった。

せっかくの映画館だし、ポイントで無償で観れるし、他の映画でも鑑賞するかと思い観たのが『HiGH&LOW THE MOVIE2/END OF SKY』である。

正直、エグザイルみたいな存在、苦手中の苦手だったし、邦画にも偏見を持っていた。

そもそも1を観ていない。

 

ただ、その時はたまたまこの映画とだけ時間があったんだ。

面白くなくても0円で観てるし、まぁいいかという軽い気持ちである。

そして観た。

結論から言うとドはまりした。

『HiGH&LOW THE MOVIE2/END OF SKY』

滅茶苦茶面白かった。

2017年でベストだったと思う。

続けて観た『ワンダーウーマン』が印象に残らないほど、熱狂し、そのまま帰りにGEOでドラマシリーズと映画とCDを借りた。

それから音楽番組を見ても

今までの僕「なーにがハイローじゃ、エグザイルって笑」
今の僕「アイアイ!」

である。

人は偏見をなくし、変わることが出来る。

ありがとうエグザイル。ありがとうハイロー。

ここまで熱狂できたのも、最初の出会いのハードルの低さありきだとも思う。

 

 

自己反省の意味でも書くが、このSNS時代、どうしてもTwitterの140文字の感想だと10か0にになりがちで、それを見た人のハードルが上がり、「まぁこんなもんか」になってしまいがち。

映画作品にかこつけて自分の好きな作品との二次創作したり、パワーワードを使っての大喜利したりやりたい放題だが、SNSなんて他人に期待する場ではないので嫌なら自己防衛が大事だ、甘えるな、馬鹿野郎。

 

対策としては、菅義偉官房長官も言うように「先手先手」があらゆる時に重要でもある。SNSを閉じて作品を観よう!

 

最後に

この記事を読んだあなたはスシローのラーメンを食べても「うまっ」とはならないだろう。その点に関しては申し訳ない。

ただ、あなただけの「うまっ」を是非探して欲しい。

きっと人生がほんの少し豊かになると思うから(投げやり)

 

最後に一言。

南極料理人』見返してみたけど名作だなこれ!

 

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すまん『ミッドサマー』観て何も感じなかったんだが、俺って異端か?【ネタバレ感想】

どうやら俺は「感情」という奴を失くしてしまったのかもしれない。

えっ、なぜかって?

 映画『ミッドサマー』を観て、特に感情が揺さぶられなかったからさ。

 

 ネットでは「嫌悪」「気持ち悪い」「底なしの地獄」「鑑賞後は子鹿のように足ガクガクになる」「一生のトラウマ体験」から「癒し」「救われる」「浄化」「ただのセラピー映画だこれ」等々、正反対の感情の揺れではあるものの、強烈な映像体験になっているのは間違いない。

  

こんなこと言われるような映画は『すみっコぐらし(2019年)』以来である。

 どんな感情を俺に与えてくれるのか、期待と不安を胸に『ミッドサマー』を観た。

 

 観た。

う~ん、確かに完成度は滅茶苦茶高い。

 

強烈なビジュアルに、卓越したカメラワーク(特に最初、車が村に到着する際、カメラがゆっくりと回転しながら反転するのは異様なまでに不安を煽る)

 

ただ、余りにも交通整理され過ぎた物語は、それ故に先に訪れるモノを容易に予測できてしまう。特に前作『ヘレディタリー』観た人なら、アリ・アスター監督のクセが何となく分かってしまう。

 

そして意外性も、引っ掛かりもなく綺麗に終わってしまう物語は「はい」って気持ち以外特に湧いてこなかった。頭ではその良さを理解していても、心はそんなに揺さぶられない作品だ。

 

確かに俺は昔から「友達」というのが作れなかったり、「輪」に入れなかったり、体育の時間は常に教師とペアだったり、筆箱をごみ箱に投げられたりするような異端なところはあったが、ここまで世間と乖離が発生するとは思わなかったな。HAHAHAHA!!

ではここから更にネタバレありで内容に踏み込んで『ミッドサマー』の感想を書いていきたい。

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監督脚本:アリ・アスター 撮影:パベウ・ポゴジェルスキ 美術:ヘンリック・スベンソン 音楽:ボビー・クルリック

(C)2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.

 一番の見どころは会話劇

前作の『ヘレディタリー』でもそうだったが、アリ・アスター監督は観ていて居心地を悪くさせるような会話劇が本当にうまい。

正直に言うと、ホルガ到着してからの未知なるコミューンとの接点より、序盤の人間関係の方がよっぽど精神的にきた。

男だけで羽目を外す予定だったスウェーデン旅行に女であるダニーが参加しそうだと分かるあの空気感。

「一応誘ったけど、どうせ来ない」「ダニーも旅行来るか?(断ってくれ!)」とか、滅茶苦茶和の心を感じる。

特にホルガ手前で

マーク(3大欲求しか興味さなそうな男)「草やる?」

ダニー「私はいい」

クリスチャン(ダニーの彼氏、無能だが邪悪な男ではない)「じゃあ俺も」

マーク「一緒にじゃないと違うトリップになるぞ」

ダニー、クリスチャン「…」

ダニー「分かった私もやるよ」みたいなやりとり

同調圧力とか調和とかそういう和を感じてしまう会話とギクシャクした人間関係。

アリ・アスター監督にはホラー以外にもキラキラした学園恋愛映画を撮ってもらいたい。

 

また、前作『ヘレディタリー』でピーターが妹を運転中に死なせてしまった後、そのまま寝てしまう描写などアリ・アスター監督はリアルなダメ人間を撮らせても巧い。

 

クリスチャン・ヒューズの「駄目だこいつ…早く何とかしないと…」感が凄い。

決して邪悪ではないが、頼りなく、また子供っぽい。

確かにマークは立ちションして怒られても反省しなかったり色々酷いが、こいつの場合、阿保過ぎて一周回って愛着すら湧いてくるが、クリスチャンは愛着がギリギリ湧かない程度の無能さ、無神経さで死んでも可哀想と思わなかった。

裸になったり、クマさん着たりするのは可愛かったが。

 

ホルガ民とダニーの救済

突然家族を失ったダニー。

彼女は心の支えを求めているが、彼氏であるクリスチャンはその役割を嫌がっている。

そんな彼女は本作の最後、ようやく自分を受け入れてくれる新しい家族を持つ。

ホルガ民だ。

ホルガ民は「周囲の人間と感情を共有する」という伝統を持つように見える。

君がそう思ったなら私も必ずそう思うし、君が悲しければ私も悲しいし、君が嬉しいなら私も嬉しい。感情が伝染する。

そこにあるのは完ぺきに統一された共同体。

個が削られ、意見は対立せず、「共感」だけがそこにはある。

突然に家族という居場所を喪失し、誰からも求められなくなったダニーはそこで「君はもう自分を責めなくても良い、君はここにいて良いんだ」と全肯定され、ようやく笑顔になる。

その笑顔は、自分を不安にさせ、そして縛り続けていたクリスチャンという存在からの解放の意味もある。

 

ダニーが泣く時は飛行機の時もクリスチャンの友達の家の時もいつも独りだった。でも今は違う。

それは苦しみを共感し、共に泣くことが出来る新しい家族と人生を歩んでいく、それが何よりも喜ばしいと感じているような表情だった。

 

 

まぁダニーもクリスチャンとさっさと別れるべきだった。

心理学者のアドラーが言った。

恋人でも友達でも、雑な扱いをしてくる人に時間や感情を浪費するのは止めましょう。

杜撰な扱いをされていると感じたらすぐに距離を置きましょう。

あなたを杜撰に扱う人と関わる意味も意義もありません。

好かれようとする必要はありません。一方通行の対人関係は無駄です。
嫌われましょう。

 この精神大事。

 

ここ、ネットとかではダニーを自分と重ね、救われたとか、さっぱりしたとか、感動したとか、笑顔になったとか言っている人多いけど、お前はもっと自分の人生を振り返り、自分自身を顧みてみろ、お前も俺も救済される側じゃなくて、燃やされる側だからな、馬鹿野郎。

 

終わり方

個人的にやっぱり終わり方が好きではない。

文化に無理解の若者たちへの罰的側面もあるのかもしれないが、どっちにしろ生贄が救済というだけで詰んでいるのである。そもそも別でやってきたカップルが殺されている時点でただのカルト集団だ(お爺ちゃんたちのカップルがいない事への言い訳が雑だったのはいい味出てたと思う)

何よりダニーやクリスチャンを薬漬けにし、ある意味洗脳した時点で、セラピーとか解放という問題ではないだろ、馬鹿野郎。

 

やはり、最後はクマ被ったクリスチャンがクマの怨念で覚醒、もしくは花の精霊になったダニーが花の怨念で覚醒して、ホルガ民を殴り殺し、村ごと燃やして欲しかった。

これやってくれたらそれだけで100000億点で今年NO1映画だった。

というか熊の内臓取られたシーン、そのままクリスチャンも内臓取られると思ったからクマ被った時はふふふってなったよね。

 

恐怖と笑いは紙一重と言うが、本作も独特の笑いがある。

『ミッドサマー』みたいな洋画が好きな人って日本のお笑いが大嫌いという偏見を持っているので、こういうこと書くと怒る人もいるかもしれないがアリ・アスター監督の作品って全体的に『ごっつええ感じ』のコント臭というか松本人志のシュールなお笑いの感覚と似ている気がする。気がするだけかもしれない。

 

 

最後になったが、本作は確かに完成度も高く、傑作だと思う。ただそれだけだ。

グロ要素もあるが、中盤の崖から落ちて、スイカ割り以上はなかったので、後半はある意味肩透かしかなと思う。

 

スッとお腹の中に入ってくる物語だったが、個人的にもっと喉に骨がブスブス刺さるような作品が好きだ。以上。

 

 

 

『スマホを落としただけなのに2 囚われの殺人鬼』感想。白石麻衣さんファンとシリアスな笑いが好きな人は必見の映画!

前作でネットストーカーの疑惑をかけられた際、Facebookに自分のアカウントのニセモノがあることが判明したのに、全く動じることなく「ほらみろっ!俺は何も悪いことしていない!」という態度をとったバカリズムの図太さを見習いたい今日この頃。

 

本作では残念ながらそんなバカリズムの続投は無かったが、ツッコミどころが増え、エンタメとして面白くなった『スマホを落としただけなのに2 囚われの殺人鬼』の感想をネタバレありで書いていきたい。

f:id:Shachiku:20200221182905j:image(C)2020 映画「スマホを落としただけなのに2」製作委員会

監督:中田秀夫 原作:志駕晃 脚本:大石哲也 主題歌:King Gnu

 

 

スマホは落とす

冒頭、前作主役組の結婚式を終え、白石麻衣さん演じる松田美乃里がFacebookにログインするところからこの物語は始まるが、美乃里がフリーwifiに繋げた時に出てくる『スマホを落としただけなのに2 囚われの殺人鬼』というタイトルロゴ。

これじゃスマホを落としただけなのにじゃなく、フリーwifiに繋げただけなのにやんというツッコミと共に、この映画の幕は上がる。

その後もスマホを落とす描写がない。

ではこの映画にスマホを落とすシーンはないのか。

いや、ある。

予告でもスマホを落とすシーンがなく、もしかしてスマホを落とさないのかとファンを困惑させたが、本作では事件が解決し、最後の最後に回想として

「 美乃里が就活中にスマホを落として、それを拾ってくれたのが、後に恋人になる主役の千葉雄大演じる加賀谷学だったということが判明する」

 

前作では冒頭で田中圭スマホを落としたことで、 北川景子さんが犯罪に巻きこまれたりして悪いことだった「スマホを落とす」行為が本作ではその対として描かれており、スマホを拾ったという共通点を持つ悪役である成田凌演じる浦野善治と加賀谷学の対比として、闇VS光として見事に象徴するシーンとなっており、またオタク君が大好きなタイトルの回収としても意味のある個人的大好物な終わり方でした。終わり良ければ総て良しと言うが、本当に笑顔になって劇場を後に出来る。

 

神奈川県警が無能

こういう作品で警察が無能なのは仕方ないし、前作でも加賀谷学以外、まともに機能していなかったが、本作ではそれ以上にパワーアップしている。

例えば

  • サイバー犯罪対策室の室長であるずんの飯尾和樹が サイバー犯罪どころか初歩的インターネットにもあまりにも疎くて無能(まぁ無能がトップになるのはある意味現実的なのかもしれないが)また、この飯尾は死体を見つけてもビックリしたまま加賀谷学が来るまで死体を見つめるだけ。飯尾が死体見つけた意味あったのか
  • 殺人鬼である浦野善治の監視が1人。いくら監視カメラがあるので遠くから監視していてもハッカー相手に1人である。しかも、多額の借金のある隙の多すぎる警官。浦野善治に自分の尿をスープとして出すなどの笑ってしまうぐらいのヒールな行為を連発することから、観客のほぼ全員がこのクズ警官が殺され、浦野善治が脱獄することを直感する。そして本当にクズ警官は殺され、脱獄する。それはそれとしてこれを演じるアルコ&ピース平子祐希はクズ役が滅茶苦茶似合っていたので、これからもクズ警官の役をやってほしい。
  • 美乃里の警備が1人。警察の偉いさんが美乃里を必ず守ると言いつつ1人である。基本的に人材が足りていないかもしれない。結局、犯人らしき者(実は公安)を見つけても返り討ちにされてしまう。というかなんで公安の人は警察を気絶させたのか、何も分からない。
  • 浦野善治の顔写真が変わっているのに気づくのが遅い。後半、浦野善治は脱獄するのだが、浦野善治は警察のデータベースをハッキングした結果、指名手配をかける時の顔写真を変えており、警察は浦野善治を素通りさせてしまう。浦野善治の脱獄に慌てたのかもしれないが、顔写真が変わっていることに誰も気づかないものなのか。しかも、大量殺人犯である顔写真なんてニュースとかでテレビやネットに流れただろうに、誰も気づかないのである。

これ以外にも細かく神奈川県警の無能さが全面に出ているが、ある意味神奈川県警をリアルに描いているのかもしれない。

 

本作はなにもかも浦野善治の思い通りになるが、観客は別に浦野すげー!ってならない(アメちゃんによる眼球破壊は面白かったが)

だいたい警察がガバガバ過ぎるだけで神奈川県警!ってなる、そんな映画。

 

 

加賀谷学と浦野善治

f:id:Shachiku:20200221201515p:image(C)2020 映画「スマホを落としただけなのに2」製作委員会

 

やはり、本作の最大の見どころはこの二人だろう。

加賀谷学は前作同様、真面目で少し頼りなさそうな感じだが、浦野善治は前作と変わって白髪になっている。その理由がPCに触ることが出来ないストレスからという正気を疑う理由だし、本作の初登場シーンではエアータイピングという中田監督の遊び心溢れるキャラになっている。

前作でお互いに過去、母親からの虐待された思い出があることが判明したが、本作でそこを掘り下げている。

「愛を知らずに育った人間が他人を愛することができるのか」

浦野善治は幼少期に母親から激しい虐待を受け、「あんたなんか産まなきゃ良かった。」と言われ続け、仮面をかぶることでしか生きることが出来なかった。

加賀谷学も同様、父親を亡くし、それで母親が壊れ、虐待の毎日だった。

だからこそ、そんな愛を知らない自分が父親になれるか確信が持てず、美乃里とも進展せず、母親とも会えないでいた。

浦野善治はそんな加賀谷学を見て、「自分と同じタイプの人間」だと確信したのだ。

 

しかし、最後の決戦の時、加賀谷学は美乃里を自分の命より優先して懸命に守ろうする。

これは子供のころ、例え愛をしらない環境で育ったとしても、誰も愛せない人間になるか、いや違う。例え、育った環境や、親は選べなくても、人は真っすぐ育つことが出来るし、それを言い訳に殺人をしていい訳がない。加賀谷学は正義の道を選び、浦野善治は自分で悪の道を選んだのだ。光と闇の対比。これはこの『スマホ落としただけなのに』シリーズで良く描けているところだと思う。

 

細かな感想

  • 浦野善治に制服を取られてパンツ一丁になったアキラ100%。近くにお盆もあるし、完全に狙っている訳だが、終盤でシリアスな場面でアキラ100%である。中田監督のシリアスな笑いが独創的過ぎる。
  • 冒頭、浦野善治の隣の独房にいたテンプレ的オカマは一体なんだったんだ。
  • 本作のMの正体は加賀谷学の元同僚で、犯行動機が加賀谷学と共に作った会社を壊したくなかったからであり、加賀谷学を愛している同性愛者である。冒頭からBL本が出てきたりして伏線を張りつつ、美乃里に加賀谷学と最近上手くいっていないことを聞き出しており、観客に美乃里狙いだと思わせつつ、実は加賀谷学狙いだったのである。これは素直にうまかったなと思う。犯人なのはバレバレだったが。
  • ダークウェブという犯罪者ばかり集まる掲示板的サイトで「デマ乙」って文字を見た時はネット住民の書き込むノリってどこも変わらないなと思いました。
  • 白石麻衣さんは滅茶苦茶に身体張ってましたね。特に終盤の襲われるエロシーン。この映画って年齢制限あったっけ!?と思ってしまうほどのエロシーンでした。アイドル卒業決まったからってここまで胸や脚を出していくとは…凄い。絶対に中田監督の趣味が入っている。100点。 パンフに白石麻衣さんを襲う音尾さんがずっと白石さんに謝っていて「娘にこんなシーン見せられない!本当はこんな人間じゃない!」って言っているのに撮影が始まると「ぐへへへへ」に瞬時に変わると書いていて、DVDの特典にそれの撮影風景つけて欲しいと心から思いましたね。
  • 最後、美乃里も腕斬られたハズなのに、ノースリーブの服着て、傷後が何もないの、医学スゴってなりました。

最後に

こういう作品の続編ってどうしてもパワーダウンする事が多いが、本作はエンタメに振り切っていてとても面白かったと思う。あと、思いっきり『羊たちの沈黙』の影響を受けているのが分ってニヤニヤしちゃう。

中田監督は最近『貞子』でがっかりしたところだったので

 

 こういうシリアスな笑いをトコトン突き詰めて欲しいなと思いました。

次回作があるか分からないが、楽しみ。

 

最後に一言、

成田凌さんの顔芸ずっと見ていたい