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FF14『漆黒のヴィランズ』5.0メインクエスト感想。「お使い」の肯定とエメトセルク

 

FF14といえば「お使い」である。

 

これはもうどうしようもなく、冒険者である僕は行く先々で様々な人からお願いされ、依頼され、渇望され、クエストが発生してしまう。

あらゆる期待と救いのない夢と共に。

 

それは時に楽しく、時に悲しく、時に虚無で、時に面倒で。

「一体僕は何をしているのだろう」

と頭を抱える事も少なくなかった。

MUGENに感じるお使いクエの末

「さすがお使いのプロだw」

そんな煽りを受ける事さえあった。コントローラーを投げた。

 

MMOなんてそんなもん。

確かにそうだ。

楽しさと虚無の間を反復横跳びするのがゲームの真髄なのかもしれない。

これでも『新生』の時と比べるとかなり改善されてし、虚無を感じる事は大幅に減ったのは事実。ストーリー含めてほんとに楽しませてもらっているのも事実。

お使い部分は「MMOだしな」というある種の諦めの気持ちと共に『漆黒のヴィランズ』編に突入した。

 

 

『漆黒』も今までと同様に様々な種族と交流し、その過程で多くのお使いがあった。

第一世界という「終わった」と言ってもいいような世界に飛んだ後でも、光の戦士から闇の戦士に変わった後でも僕がやることは基本的には変わらない。

今までと同じく周りを助けて、助けた人たちに感謝されて、淡々と話は進んでいく。

 

しかし、今回はそれだけで終わらなかった。

 

『漆黒』が傑作たる所以は虚無で面倒でしかなかったお使いクエを「MMOだから当然」とスルーするのではなく、真っ正面から向き合い、それまであった数えきれない程のお使いを含めた冒険に対して「お前達の冒険は、戦いは、無駄ではなかった。」と肯定してくれる所だと思う。

 

敵の本拠地に突入するためにグルグ火山に取り付く巨大タロース。

それを作り上げたのはノルヴラントの人々の力だった。

そしてノルヴラントを一つにしてのは間違いなく光の戦士であり闇の戦士でもある僕。

見返りがあると思って行動している訳でない。報われるために戦っていたわけではない。

でも、それでも。

今までの冒険に意味があったと思えたのは素直に嬉しい。

 

ただ、冒険した同じ世界の人達が終盤に揃って助けてくれる。それで終わればそれは普通の物語であり、今までにも同じようなRPGは山ほどあった。『紅蓮』のドマ編もそう。

『漆黒』が他のRPGと違うのは『新生』『蒼天』『紅蓮』という今までのFF14の積み重ねと歴史。

その「繋がり」の重みだと思う。

終盤に明かされる水晶公の正体とその真の目的。

 

彼らは第八霊災後の原初世界の人達であり、ヒカセンを救うため行動していた。

 

それは次元も時も越えてヒカセンを救うという途方もないような規模の話であり、奇跡のような出来事である。祈りに近い。

例え成功しても自分達は救われないのに、それでも。

彼らは行動する。

自分の為ではなく、他人の為に。

あの英雄のように。

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この想いを託す展開が上手い。

ヒカセンが今まで駆け抜けたエオルゼアの旅の数々はこの時のために。

途方もない程クリアしていったお使いイベントがこの時のために。

まさしく人と人の想いが紡がれる物語。

 

そしてそのキーアイテムに冒険者の冒険が綴られたフォルタン伯爵による回顧録である『Heavensward』が使われたのも良かった。

蒼天のイシュガルド』で、竜詩戦争を完結させるため、イゼルの悲願だった竜との融和のため、オルシュファンに託されたイシュガルドの戦いは、あの時失った友は無駄じゃなかった。無駄ではなかったんだよ。

その冒険は第八霊災後も後世に語り継がれて、人々の希望となった。

ヒカセンは本当の英雄に繋がることが出来た。

 

「英雄」光の戦士への想いと決意をウリエンジェに語る水晶公のセリフは忘れらない。今までのFF14を象徴する言葉だと思う。

「自分には何の見返りもないと知りながら、他人の幸せのために心血を注ぐのは、簡単なことじゃない。」
「ましてや、誰もが明日をも知れぬ身の、混沌とした世においては……」
「こんな計画が形になったのにも、偶然ではない、理由がある。彼女だよ。あの英雄の冒険譚が、人々を繋いでいたんだ。」
「 どんな絶望の底にいても、立ち上がった人がいた。
終わりないはずの戦いに、終止符を打った人がいた……。」
「 嘘みたいにまっすぐと、あの英雄は進んでいく。
その歩みは、語れば勇気に、聞けば希望になる物語として、
絶望の時代のそこかしこで輝いていた。」
「 ときには、亡国の歴史に、かけがえのない盟友として刻まれていた。
「 またあるときは、ぼろぼろになった手記の写しに、その冒険が綴られていた。」
「つらい夜を越えるために、その物語を語り継いできた人々もいた。」
「第八霊災の阻止に賛同した人の多くが、言っていた。あの英雄のために、自分ができることがあるなんて上等だ、と。」
「 遠くの星だったはずの彼女に、想いが届けられるなら、みんなでこう言ってやろうじゃないかと。」
「 あなたという英雄の遺した足跡は、死してなお、人の希望であったのだ……と。」

 

ここまで「僕って世界を救ってきたのか」と実感できるRPGは初めてかもしれない。

 

FF14といえば「お使い」という『新生』から続くお決まりと積み重ねが報われた瞬間であり

それは時に楽しく、時に悲しく、時に虚無で、時に面倒で

そんな数多の「お使いイベ」にも意味を与えてくれた。

 

「お使い」をなるべく「お使い」だと思わせないようにする演出が『蒼天』辺りからうまくなった印象があるFF14だけど、今回は更に「お使い」は「お使い」として認めたうえで『新生』含めた今までお使いクエを頑張った分だけ、人を助けた分だけ更なる感動を味わえるという逆転の発想でプレイヤーを肯定してくれた。

それが『漆黒のヴィランズ』だったのだと思う。

 

そして冒険譚を最も間近で見て、経験した僕自身が同じように救われている事に気づく。

現実はコロナなどで鬱憤とした毎日。

社畜として出口の見えない毎日。

そんな時に支えてくれ、希望だったのがFF14 であり、ヒカセンであった。

人と人の想いの繋がりと

人とゲームの想いの繋がり。

2つの想いを二重螺旋い織り込んで、 明日へと続くのがヒカセンなのだと(グレンラガン風)

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 ↑『漆黒のヴィランズ』のテーマは未来への繋がりだったのではないだろうか。

 

そして『漆黒のヴィランズ』で忘れてはならないのが「エメトセルク」だろう。

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漆黒の反逆者

最初は「ケフカみたいなヘラヘラしてて掴み所のない悪役は二番煎じだよ」となめくさっていた僕だったが、まさかの旅を共にする仲間(仲間ではない)になるという展開に驚き、そのまま物語が進む中で彼の心情や過去が語られ、その度に「あれ、こいつ以外に真面目でまともなやつなんじゃねえ?」となり、最後の最後はあまりにも重く、辛く、「どうしてええええええええ」という想いで一杯だった。

旅の道中でエメトセルクが登場するだけでテンションダダ上がりしてしまう身体になってしまったのに。これからの冒険、何を楽しみにしたらいいんだ。喪失感よ。

 

 

彼の目的は世界を元通りひとつの世界にし、ゾディアーク(星の意志)に捧げた同胞を取り戻す事だった。
エリディブスがエメトセルクのことを「アシエンの中で1番頑なで、1番揺れている」という表現をしていたけれど、揺らぎとは一体何なんだろうか。

人間に存在する感情である「迷い」だったのではないだろうか。

こんなにも人間臭いアシエンが今の人間に絶望し、憎しみを抱く。それもまたどうしようもなく本当に人間臭い。

他人には器用に接する事ができるけど、自分の事になるとトコトン不器用。

 

けれど彼は厭だ厭だと言いながら根は真面目なので投げ出す事が出来ない。
全てを投げ出すには、あまりにも多くのものを、途方もなく長い時間背負いすぎた。

それはまるで光の戦士のように。


ヒカセンが化け物になった時、エメトセルクは何もヒントを出さずに見捨てるという選択肢もあったハズだ。

なのにわざわざ自分の居場所を告げ去っていく。


水晶公を攫ったのも「取り返しにこい」という大義名分をヒカセンに与えたようにも見える。

言葉にはしないけれど、「向き合ってやってもいい」と言ったのが自分であるが故に途中で投げ出すことができないエメトセルクの真面目さと、ヒカセンの魂に見える「あの人」に対する複雑な感情の表れに見えてしまう。

 

初登場シーンでヴァリス帝とプレイヤーに顔芸キャラを晒したとは思えない。いい意味で言うと深みがあるのかもしれない。それかヴァリス帝に心開いていたのかもしれない(新しいおもちゃにテンション上がったのかも)

 

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↑他の世界の冒険者と挑む最終決戦は激熱。水晶公の「彼方の勇士、稀なるつわものよ!」で柱が7本出てきて、レイドボスを他のプレイヤーと共に戦うというシステム自体を熱い演出にしてしまうのは凄い。MMOでしか味わえない感動だと思う。全体的に過去シリーズより演出がうまくなったよね。蛮神が出てきたから一時退却してまた臨むみたいな悪い間が消えた。

 

冒険を終えてみて改めてタイトルである「漆黒のヴィランズ」が何を指しているのか考えてみると、第一世界の伝承にあった反乱から救う闇の戦士となったヒカセンか、最終決戦で敗れたアシエン・エメトセルクか。その両方のダブルミーニングだと分かる最後の戦い。そしてその決着。

「ならば、覚えていろ。
 私たちは……確かに生きていたんだ。」

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消えゆくエメトセルクは願い、ヒカセンは静かに頷いた。
この瞬間、相容れなかった2人は和解したのだろう。


いつか彼は言っていた。

「どうあっても意見が異なる……いくら話しても納得できない……そんな相手との決着のつけ方を、知ってるか?簡単なのは、力で打ちのめして、相手の主張を葬ることだ。アラグでもガレマールでも、結局大勢はそれを支持したし、事実、手っ取り早く繁栄をもたらした。」

「一方、戦いの末に、勝者の願いが優先されることになっても、敗者もまた尊重され、ある種の和解に至ることがある。そういう決着にもっていくのは、とても難しい……

勝者が敗者を見下さず、憐れまず、敗者が勝者を仇としない。その両方が必要だからだ。」

 

あの決戦で、2人はお互いを尊重し、和解したのだろう。
だからこそのあの表情だと僕は思う。

 

そしてエメトセルクと水晶公であるグ・ラハ・ティア の対比。

光の戦士を未来に繋げたいグ・ラハ・ティア。

過去に生きた古代人、「あの人」としての光の戦士を取り戻したいエメトセルク。

無事に光の戦士を救い、未来へと繋げたグ・ラハ・ティア。

ヒカセンとアルバートの魂の結合により一瞬「あの人」を垣間見る事が出来たエメトセルク。

2人とも光の戦士である僕に対する想いが重過ぎる。大好きだ。

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↑おはよう、グ・ラハ・ティア。

また明日、エメトセルク。

 

 細かな感想

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  • NPCとダンジョン潜れるようになったのは最高。個人的にFF14の不満点だった他の人と一緒だとダンジョンを自由に見て回れないという所が完全に消えた。これならダンジョンをもう少し複雑にしてくれてもええんやで。

 

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  • トラウマのシーン。いきなりコレなので『漆黒のヴィランズ』やべーなと身構えてしまった。救いが欲しい。

 

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  • タオパイパイ。 柱を折って飛ばして乗って追いかけてきそう。

 

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  • ギャグ要因として生き残るかと思いきや、すんなり退場した人。コメディリリーフが生き残れない世界怖い。

 

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  • 今回のサンクレッドは未婚のまま親父になっちゃったし、ヤシュトラは未婚のままお母さんになっちゃったし、どうなってんだ暁。


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  • 闇の戦士たちの仲間の冒険を追体験できるクエスト滅茶苦茶良かった。また別途で書いていきたい


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  • ヴァウスリー、レベル100のコルネオみたいな見た目だし、罪食いの大ボスに裏切られて惨めに死ぬかと思いきや、全くそんな事なくて驚いた。


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  • そしてそんなヴァウスリーがこんなイケメンになるとは、戦闘中に驚かすのは手元が狂うからやめて欲しい(切実)


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  • ただ一言、「好き」


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  • 今まで意外と活躍がありそうでなかったサンクレッドが滅茶苦茶活躍していてよかったですね。

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  • 噂には聞いていたハイデリンキックを見る事が出来て嬉しい。重そう。


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  • 女性しかいない種族と聞いた時は「主人子を男にしたら良かった!!」と悔やんでしまった僕は百合オタク失格。


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  • ルナルとマトーヤ姐さんの関係性一体なに!?恋人というより親子!!


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  • まさかゼノスに負けるとは思わなかったアシエンオリジナルの1人。今のところ声が石田彰さんぐらいしかプラス評価がなく、株が最安値だけどここから上がる事が出来るのかパッチストーリーに期待。アシエンいなくなったら敵ってどうなるのだろうかとかそういうのを考えるのも楽しい。


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  • 少年に今までの冒険について聞かれて、ヒカセンのしーっポーズという「皆んなには秘密だよ」で締め括られるの、まさしく物語が未来へと繋がっていく感じが出て最高の終わり方でしたね。

 

という訳で長々と書いてきました『漆黒のヴィランズ』5.0メインクエスト感想。

 

一言良いですか。

『漆黒のヴィランズ』最高~~~~~~~~~!!!

 

王道のRPGを下地に過激で絶望的でキレキレの演出。

「繋がり」をテーマに一貫したストーリー展開。

ようやく仲間になった感じのある「暁」の面々。

そしてエメトセルク。

エメトセルク。

 

「新生」から続くFF14のある意味到達点だったのではないかと思う。

ここまで遊んできて良かった。心の底から思えるそんなゲームに出会えて本当に嬉しい。

そして『漆黒のヴィランズ』はまだ終わらない。

ヒカセンの冒険は終わらない。

僕の冒険もまだまだ終わらないのだろう。

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