三半規管クソザコオスオトナなのでゲームは好きだけどすぐに酔ってしまう。
頭の奥の鈍い痛み。胃の不快感。止まらない吐き気。一日が体調不良で終わる絶望感。ゲロゲロである。
「3D酔い」というのは文字どおり、3Dゲームを遊ぶことで、頭痛や吐き気といった、いわゆる「乗り物酔い」と同じような症状が出てしまうことを指す。
「3D酔い」するかどうかは体質に依存し、酔わない人は酔う人の感覚がまったく理解できない。また、世の中全体では圧倒的にゲームで酔わない人の方が多い。
故に、ゲームは酔わない人が酔わない人に向かって作られているのが基本であり、その結果、酔う人にとって、現在のゲーム市場は地雷原の上の宝物庫。
酔う人はそれだけで遊べるゲームの幅が一気に狭まってしまう。
僕が最初に「3D酔い」を経験したのが『ドラクエ7』だった。
当時テリーのワンダーランドが大好きでそこからドラクエにハマった僕は『ドラクエ7』も発売日に購入して遊んだのだが、最初のモンスターに戦うまでが異様に長く、石板集めの為に街中などをグルグル回転させている内に、滅茶苦茶気持ち悪くなってしまった。当時は純粋に体調が悪くなっただけだと思ったが、今なら分かる。それが初体験だったと。
そこから『キングダムハーツ』や『ドンキーコング64』など面白いけど酔うせいで長時間プレイできないゲームが増え続け、香川県にいつ引っ越しても大丈夫なゲームライフを送るようになった。
「3D酔い」は年を取るごとに酷くなっていき、最近では『スーパーマリオ オデッセイ』で滅茶苦茶気持ち悪くなり、恐竜が出てくるステージであえなくマリオではなく僕の残機0
アクションゲーム全般が苦手になり、RPGが比較的好きになったのはそういう所が関係しているのかもしれない。遊べるゲームの幅が本当に狭い。
特に酔うのが一人称ゲーム。
アレは人が遊ぶようなものではないし、何より主人公のお尻を眺める事が出来ない。
友達の家にコントローラーだけ持ち寄って「007ゴールデンアイ」でワイワイするのが流行っていたけれど、僕はすぐにゲロゲロ酔ってしまうが「酔っている」と友達に知られたくないので必死に我慢していた。その結果体調が悪いので口数が減り、集中できないからゲームには負け続け、「最初はテンション高いのに、ゲームに負けるとすぐに機嫌が悪くなる面倒な奴」扱いされてしまい、最終的には家に呼ばれなくなってしまった。
トラウマ。
ゲームは好きだけど、酔い易いは本当に辛い事が多く、ゲームを動画で済ませる人を僕は安易に断罪することが出来ない。やりたくてもやれない人は多い。
それは猫好きなのに猫アレルギーと同じようなものであり
身長が150cmの人にプロバスケプレイヤーを目指すよう薦めるようなもん
好きと出来るが一致しない不運。
ゲームは好きだけど、ゲームを遊べない身体だから動画やインタビューなどでゲームに対する知識だけは増えていき、ゲームや実況プレイヤーに対しても『スラムダンク』の深津を解説するオジサンみたいになってしまうのだ。後方彼氏面とも言える。
SLAM DUNK 完全版 20
恐らく深津を解説するオジサンも小さい頃はバスケ選手を目指しただろうし、そのための努力も沢山したのだろう。それでも果たす事が出来なかった夢。それを若い子に重ねる。でも、時々それでいいのかと自問自答する事がある。虚しくなる時がある。
自分の夢は自分で叶えるべきものじゃないのかと。
恐らく独身である深津を解説するオジサンは時折、仕事帰りにバスケットコートのある公園に立ち寄り、入らないフリースローやドリブルの練習をして汗をかく。頭では完璧なのに身体は想像通りに動かない事にもどかしさを感じながらもその表情は少し嬉しそう。
そんな深津を解説するオジサンを遠くから見守りながら泣いている僕。
深津を解説するオジサンも冷静な解説だけでなく、その内には確かな情熱がある。
僕もゲームを動画で済ませるのではなく、プレイヤーとして遊びたい。
そんな想いを胸に今回、最恐に酔うゲーム『バイオハザード7 レジデント イービル』(以下バイオ7)を手に取った。『バイオ8』が出る前に『バイオ7』をクリアしてみたいのだ。
バイオ7は以前、一度遊んだことはあるが滅茶苦茶気持ち悪くなってしまい、車から降りて屋敷に入る前で脱落してしまった経験を持つ。
このバイオ7は本当に酔う要素の塊で
- 一人称ゲーム
- 画面が凄く暗い
- 視界も悪い
- ホラーゲームなので緊張感が常にある
- 狭い道が多い
- フレームレートが低い
開発陣から「プレイヤーを絶対に酔わせるぞ」という気概すら感じる。
こんな酔いの詰め合わせセットみたいなゲームなのにネットで調べても「PSVRモードが酔う」という一つ上の次元で酔っていて話が合わない。産近甲龍の大学に行けそうになくて悩んでいるのに関関同立の話を持ち出された時に似ている。
同じミスをしないよう、出来る限りの対策を練った。
- 雰囲気無視して画面を出来るだけ明るく設定する。
- テレビから2メートルくらい離れる
- サクサクプレイ出来るよう簡単な難易度で遊ぶ
- 酔い止めを飲む
- 画面を追わず、広く見る
- 異常が出てきたら即止める。そして治ったら続きやる。その繰り返し
やってみて分かったが、一度に30分が限界である。2分の1香川県である。
たまにゾーンに入ることがあり、気持ち良くなる事があるが、そこで油断して遊び続けるとその後気分が最悪になり後悔する。ドラッグしている人の気持ちがよく分かる。
酔い止めは結構効果がある。子供の頃は3D酔いするから酔い止め飲みたいと親に言っても「ゲームをやめろ!」と正論を叩きつけられるだけだったので、自由にクスリが飲める大人になってよかった。
そしてバイオ7の話。
ホラーゲームとホラー映画の最大の違いは「怖いシーンで目を向ける事が出来るかどうか」だと思っている。
ホラーゲームの場合、目を背けると死んでしまいやり直しになってしまう事があるため、背けることが出来ない。怖い、やめたい。
「すべては恐怖のために」という今作のキャッチコピーに忠実なホラー演出が散りばめられている。
単純なビックリ系やグロテスク系だけでなく、常に一人きりで行動する孤独感、得体の知れない物体が蔓延る場所を歩く生理的な不快感、そしてムカデなどの蟲たち。
扉を開けた先に何が待ち受けているか分からない不安感、明らかに敵わない強靭な敵に追われ続ける焦燥感、多彩な方法で恐怖を演出しており、同時にそれらの要素全てが酔いに繋がる。吐く。
そして主人公であるイーサン。
上記で書いたような圧倒的ホラー演出に対してイーサンは不屈の男である。
行方不明になった恋人を探すために、廃墟に立ち寄り、どう考えても人が死んでいるビデオ映像を見た後に怖気づいて帰る所かその場所に突入する精神の強さ。
手足を切断されても「マジかよ!」「畜生!」と言いながら回復薬ぶっかけるだけで全治するその肉体的強さ。
そんなただの一般人のくせに精神も肉体も強すぎる上に殺意マシマシで元凶を殺しに行く後半は遊んでいて爽快感すらある。
僕が酔って気持ち悪くなってプレイが雑になってもイーサンなら乗り切る事が出来そうな安心感。
バイオ7は主人公がイーサンだから最後までクリアできた気がするし、バイオ8の主人公もイーサンらしいので何とかなるかも感が出てきた。ありがとうイーサン。
そしてーーー何とかクリア。
素直に言って嬉しい。
ゲロゲロに酔うという難易度∞をクリア出来た事が頭が痛い中、嬉しさが溢れでる。
クリア時間は約9時間だったが、1日30分ほどしか遊べないので半月程かかってしまった。
ポイントとしては休日だと朝に遊んで酔ってしまうと一日が台無しになってしまうので、寝る前に遊ぶ事を心がけること。万が一気分が最悪になったら即布団にダイブして寝る。寝れば酔いは治る。これの難点は夢にバイオ7が出やすいという事ぐらいである。怖い。
あとは日々、三半規管を鍛えること。
「3D酔い」しやすいゲームはこれから増え続けるだろう。
ゲーム好きとしては諦めず適応していきたい。
深津を解説するオジサンのように。
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- メディア: Video Game