ただでさえ荒れやすいアニメ実写化の、特にファンが濃い(偏見)あの『おそ松さん』の実写化で、SnowMan全員出演というアイドル箱売り怖いもの知らずの企画。
最初発表された時のネットの荒れようとジャニーズファンの悲喜交々、それでも見に行かなければという使命感。
予告を見ただけで分かる低予算。6つ子設定なのに同じカツラ被っているだけで全く顔が似ていない6つ子。並ぶと一人だけ身長が高いトド松役のラウール氏。
いや、これで『おそ松さん』の実写化は無理ある設定だろと誰もが考え、SnowMan好きの人しか喜ばない企画なのかなと思っていたが、さすが英勉監督。いや、これ無理がある設定だろを話の軸にするという逆転の発想で話をグルングルン自由自在(カオス)に進めていくストロングスタイル。
顔はSnowManのメンバーで「クズで童貞でニートの俺たち」には全く見えないのに、最終的に『おそ松さん』の実写映画を観た・・・というすごく満足度が高い作品となっていた。
ここから軽くネタバレありで書いていきたい。
これは「おそ松さん」ではなく、「おそ松さんの実写版」
初っ端からメタ発言飛び交いまくりである。
「実写化なんて無理だよ~」発言や十四松の「こんな動きもCG使わなきゃ駄目なんでしょ〜」と言いながらCGで袖がなびく。
アニメの実写化が評判悪いことや、そもそも実写化には無理があることを自虐することは最近のコメディものではそこそこあるが、本作が異質なのはそういう設定的に無理がある事を物語の軸に組み入れたこと。
“設定”
SnowManのメンバーが同じカツラ、色違いパーカーを着ることで6つ子になっている設定。
すなわち、同じくカツラをかぶり、色違いパーカーを着ると誰でも7人目の兄弟になれるという認知の歪みがある世界観を利用したのが本作であり、「いやそれは無理があるだろ!!!」というツッコミを「なっとるやろがい!!!!」で次々論破していく。「いやそれは無理があるだろ!!!」→「なっとるやろがい!!!!」の連打。
無理を通して道理を蹴っ飛ばす。がこんなにも合う作品も中々ない。
そもそも「これでいいのだ」の赤塚イズムを継承したアニメ『おそ松さん』はなんでもアリのギャグと、際どいネタやオマージュに走り過ぎた結果、欠番になってしまった回もあるほど自由なギャグ作品だったが、本作もジャニーズなのに大丈夫!?となるド下ネタ、変顔、なんでもありのギャグ。そしてメタ発言メタ演出メタ物語である。
本筋が「金持ち夫妻の死んだ一人息子がおそ松と似ている。だから養子にしよう」からの「実写だから気づかないかもしれないが、俺たち6つ子だから顔が似ている!誰が養子になってもおかしくない!」からの6つ子の中から優秀な1人だけが養子になれる!という超展開。
しかし、最初は養子になるために頑張っていた6つ子だったが、だんだんと目的がズレ初めてカオスな展開になっていくというものだが、そのズレ方が酷い(最高)
月9のような恋愛ものや、カイジや賭ケグルイのギャンブルデスゲームもの、B級アクションもの、七人の侍もの。そういう「お決まり」をネタにする全方位でジャンル映画に喧嘩売っていく展開で話が脱線していく。
さらに話が脱線していき、ループものや、ジョーカーもの、滝沢歌舞伎もの、ロボットものにまで発展していったと思ったら、家族愛ものに収集しかかってからの、今までの伏線を無駄に回収していくカオスな展開でラストを迎える。
いや、なんか綺麗に終わったけど、なんだこれ!?ってなるこの気持ち。長らく忘れてたけど、『おそ松さん』を見た時もこんな気持ちになったなと。
それにしても元々は「養子になる」という大きな目的の為に「東大に行く」「強くなる」「女性と喋れるようになる」「就職」「メジャーリーガー」「起業」しようと奮闘していく6つ子達だったが、段々と脱線して「どれだけ本筋に戻らず、寄り道していくか」が6つ子達の目的になっていったように思える。
明らかに終わらせ師の邪魔をしている。
しかし、「クズで童貞で社畜の僕」はその気持ちがよく分かる。
誰だってSnow Manの顔と身体になれるなら、一秒だって引き延ばしたいと考えるものだ。
つまりアニメの「おそ松さん」達は1秒でも長くSnow Manの顔と身体を味わいたい為に、本筋に戻らなかったのだろう。僕だって生まれ変わるなら岩本照の上腕二頭筋になりたい。
細かな所
- 「溶鉱炉に沈むチビ太」こっちみんなwwwwww状態。
- 実写で見るとミニスカート具合がすごいトト子ちゃん。そして高橋ひかるは可愛い。ツッコミ不在になりがちな所をキチンとツッコム事でどんな観客も手放さない。ストーリー展開を誰より円滑に進め、ヒロインの座もバリバリこなし、己も適度にギャグしつつ、物語をまとめる彼女。MVPか?
- イヤミはその歯のせいでセリフが半分くらい聞き取れないの何。
- 商店街のパチンコ屋前で下半身を脱ぐおそ松。パンフレット読むとリアル商店街でお尻出したらしく「誰かに見られたかもw」と書いてあって向井康二氏の役者魂を感じたね。
- 最初はオリジナルキャラの終わらせ師ってなんだよってなったけど、兄弟達がそれぞれ好き勝手にストーリーを進めていくのを(半ば強引に、時には力づくで、ソードマスターヤマト的に)軌道修正しようと頑張る様には応援したくなるし、好きになっていく。渡辺翔太のおじいちゃん化の足プルプルとか間とか好き。
- 『おそ松さん』の実写化舞台に携わる方が本作のプロデューサー菅原大樹であったり、脚本家が『LIFE!~人生に捧げるコント~』や『戦国鍋TV』土屋亮一だったり、監督が英勉だったり、布陣が完璧(英勉監督、『東京リベンジャーズ』が昨年大ヒットしたけど、賭ケグルイも忘れず作り続けて欲しい)
最後に
それにしても僕の中のSnowManって映画版『滝沢歌舞伎 ZERO2020 The Movie』以来だったので
なんか分からないけど凄いもの観た系ジャニーズのジャンルに入っています。これからもなんか分からないけど凄いもの観たなぁと思わせるような映画に出て欲しいし、生の滝沢歌舞伎いつかいきたい。
最後に一言
ハルちゃん(概念)、何もしてないのに車に轢かれて、爆発に巻き込まれて、死んだと思ったら娘を産んでたけど、自分の夫は空前の馬鹿になって、持ちビルが崩壊したの本当に可哀想。