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これまでの30年とこれからの30年『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』感想

○○周年記念映画あるある。

オールスター&今までの要素全部入れ込むけど、尺が足りない&過去作の焼き直しで1つ1つがイマイチ物足りない奴。

【監督】 橋本昌和

 

クレヨンしんちゃん』30周年おめでとうございます。
1990年にコミック連載が開始、1992年4月にはアニメ放送がスタートしたクレヨンしんちゃん。子供の頃からあったコンテンツなのでもっと歴史があるように感じられたけど、「ホスト界の帝王」ROLANDと同じ歳だったんですね。

 

映画だけ見ても1993年の『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』から毎年公開し続けて今作で30作目。「ホスト界の帝王」ROLANDの名言に「年齢はただの数字」という言葉がありますが、毎年新作を観る事が出来るだけでファンとしては嬉しい。特に劇場版ポケモンみたいに、ポケモン配布や2バージョン商法などいやらしい事色々頑張ったけど、コロナ直撃したせいか、ゲーム本編との折り合いが難しいのか、ここ2年ぐらい劇場版制作の噂すら聞かないコンテンツを直で見ていると余計にそう思える。

 

 

しかし、クレしん映画も決して順風満帆ではなかった。

1作目の『アクション仮面VSハイグレ魔王』の興行収入22.2億円から年々下降傾向にあり、遂には1999年の『爆発! 温泉わくわく大決戦』で初の興行収入10億を割り込む9億円になるほど苦戦をしていた。*1

しかし、次の2000年公開『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』で11億円と初めて持ち上がった。それ以降はゲンを担ぐようにタイトルに「~を呼ぶ」のフレーズが付くようになったといわれている。

そして皆さんご存知の「クレヨンしんちゃんの最高傑作」と未だに言われる2001年公開『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』が14.5億円。

僕も大学の授業で教授がこの映画は凄いんだ!と言いながら授業中に見せられたけど、「なんで高い授業料払って映画観ないとダメなんだ……?TUTAYAで100円で観れるゾ」となった思い出。

オトナ帝国は興行収入以上に「クレしん映画は笑いあり、感動ありで大人も子供楽しめる」という和製ピクサー映画のような期待のされかたをし、それ以降の作品に影響、またの名を呪いになってしまったと思う。

 

そこから原恵一から水島努、更にムトウユージ増井壮一など監督交代などあったりしたが興行収入は10億円越えで安定していた。

しかし、個人的には水島努監督最後の2004年の『嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』以後の作品たち、

2005年の『伝説を呼ぶブリブリ 3分ポッキリ大進撃』

2008年の『ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者』

2012年の『嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス』

の三銃士を筆頭に駄作とは言わないもののうーんとなる出来の作品が増えたことと、原作者臼井儀人さんが2009年に亡くなられたこと。そして2012年の『嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス』が『爆発! 温泉わくわく大決戦』以来の10億円割れが発生したことで、「これクレしん映画ヤバくね?」という雰囲気があったと思う。

 

しかし、クレしん映画は再び盛り返す。

今まで1人の監督が連続して制作したのを交代制に変更になったのだ。具体的には2013年の『バカうまっ!B級グルメサバイバル』は橋本昌和が監督、翌年の『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』では高橋渉が監督になり、それ以降は二人が交互に監督する形になっていった。そして興行収入も13億、18.8億と上がり続け、特に『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』の評判が良かったのもあって、次の『オラの引越し物語 サボテン大襲撃』が興行収入22億9000万円とシリーズ最高記録を達成した。

そしてここ2年の『激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者たち』『 謎メキ!花の天カス学園』は大傑作で

 

www.shachikudayo.com

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特に去年の『花の天カス学園』は個人的2021年映画で一番好きな作品だった。

逆に言うとハードルが上がりまくったのが本作『もののけニンジャ珍風伝』である。

 

実際に観てこのハードルを残念ながら超えることができなかった印象。良作止まり。

野原一家中心の映画化と思ったら終盤からカスカベ防衛隊も活躍しだすし、久しぶりにおもしろい名前の癖がつよい敵の刺客が襲い掛かってくるし、巨大ロボは登場するし、ひろしの足の匂い攻撃はあるし、感動的な回想シーンはあるし、30周年らしいクレしん映画の全てを詰め込んだみたいな作品だったのは確か。

 

しかし、全体的にどっちつかずの中途半端感がある。

予告で散々煽ってた「子供の取り違え問題」はただの茶番だったし(みさえとひろしが少しでもしんのすけが自分達の子供ではないのでは!?と疑ってしまい子供を入れ替える展開にするとキャラ崩壊に繋がるから仕方ないが

もっと忍者学校の様子も見たかったし、今作で1番魅力的だったツンデレくノ一の風子ちゃん(CV雨宮天)の活躍をもう少し見たかった。そもそも忍術活劇のシーン自体少ない。家族愛のシーンは良いけど、今までの映画で散々擦られ続けてきたセリフとシーンでは?と思う所もあった。全体的に尺か足りねーって感じだ。

 

良い所もある。

珍蔵として忍者の里で暮らすことになったしんのすけ

彼は夢を見る。

家族から、友達から、みんなから「しんのすけ」と呼ばれ、愛されてきた軌跡が流れ出すシーン。オトナ帝国でのひろしの回想シーンのしんのすけverって感じでズルい。

目を覚ました彼は「オラは野原しんのすけだゾ」と駆けだすシーン。

彼は血のつながりとか実の親子とか関係なく、自分の脚で、己の手で望む居場所、家族を掴んでいく。良いっすね~。

 

これまでさまざまな困難を乗り越えてきたしんちゃんもまだ5歳児。

今回のしんのすけは寂しがり、そのまま泣いたりと過去作よりも子供っぽい。

ただ、寂しい時に「寂しい」と言える方が子供らしいし、しんのすけは子供らしくていいよねって思う。

 

あと、イケメン役に山田孝之さんが出演してるけど、パンフのインタビューで「実写だとイケメン役のオファーが来ないからとても嬉しかった」と答えてたのが面白かった。実写でもイケメン役オファーしてあげて!!

 

来年

来年はフルCGアニメーションになりそうですね。

どうしてもフルCGアニメって『STAND BY ME ドラえもん』とか大人になれよとか連想してしまい良いイメージはないけど、クレしん映画って30作もあって、そろそろ作るものなくなってきそうな危機感ってあると思うんですよ。マンネリ。

同じ長期劇場版アニメならコナンがあるけど、あれは原作が続いてて新キャラや新要素もドンドン増えていくから新鮮味も出せるし、ドラえもんはリメイクという道を選んだけど、クレしんはそうではない(原作は一応『新クレヨンしんちゃん』が続いてるけど

家族愛も友情も擦りに擦り続けているので、新しい要素として30作が終わって31作目からCGに挑戦するのはタイミングが良いと思う。個人的にはワンピースが『ストロングワールド』で大ヒットした翌年に、フルCGアニメ『ONE PIECE 3D 麦わらチェイス』として『トリコ 3D 開幕!グルメアドベンチャー!!』と同時上映した時は東映正気か!?ってなったからそれに比べると東宝はまだまだ正気よ。