新田真剣佑といえば筋肉である。鍛え抜かれたマッスルである。
それなのに彼の甘いマスクばかり注目され、演じる役もその方向ばかり。
眼鏡の貧弱キャラとか、頭脳派キャラとか。
何か違う。甘いマスクも素晴らしいが、それだけでは彼の魅力がイマイチ引き出せてない気がしてならない。クソクソ叩かれた実写『ジョジョの奇妙な冒険』でも虹村億泰役に新田真剣佑を選んだのは偉かった。
『カイジ ファイナルゲーム』では内気な性格で顔も今にも泣きそうな表情をしているのに着ているスーツは筋肉であまりにもぴっちぴち過ぎて、「これ後半で怒りと共に筋肉が盛り上がって服が破れる描写あるな」と思ってたのにそんなことなく作品が終わってしまい悲しくなってしまった。
そりゃ、新田真剣佑も日本ではなく海外を拠点に活動を始める訳である。
比較的細身の男性が好まれる日本より「海外行くなら筋肉持ってけ」という古来からの諺があるほど海外では逞しいマッチョが人気ある(海を渡った事がない人間の偏見)
そんな新田真剣佑の国内俳優活動の終わりが見えてきた2021年4月。
1つの「答え」を見た。
『るろうに剣心 最終章 The Final』の雪代縁役である。
(C)和月伸宏/集英社 (C)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会
本作では人間離れした怪力を発揮する雪代縁だが、「この筋肉ならそれぐらい出来そう」という説得力がある。そして雪代縁の中にある狂気さと孤独さを孕んだ甘いマスクは観ていてゾクゾクしてしまう。
(C)和月伸宏/集英社 (C)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会
これだ!と確信した。
僕が想像する雪代縁を実写化したら新田真剣佑その人だった。
新田真剣佑は雪代縁を演じるためにいたのだと思った。億泰ではなかった。
『るろうに剣心 最終章 The Final』の魅力は7割ぐらい新田真剣佑と言っても過言ではないので、ファンは是非観て欲しい。ここからは内容についてネタバレありで書いていきたい。
概要
和月伸宏の人気コミックを佐藤健主演&大友啓史監督で実写映画化した大ヒットシリーズ『るろうに剣心』完結編2部作の第1弾。原作では最後のエピソードとなる「人誅編」をベースに、剣心の十字傷の謎を知る上海マフィアの頭目・縁との戦いを描く。
原作との違い
- 個人的に「人誅編」で一番好きだった外印が実写だと映画1作目で武器商人武田観柳の下で護衛役というオリジナル要素で登場し退場してしまった為、今作では未登場。因みに「イケメンが仮面で顔隠す訳ねーだろ!!」という和月先生の魂の雄たけびも届かず、綾野剛が演じていた。
- 外印が未登場の為、屍人形を用意出来ないので原作で一番の衝撃シーンである薫殿の死亡シーンはなし。薫殿が三部作揃って囚われのヒロインというマンネリ展開になってしまった(これは京都大火編が悪い)
そもそも死亡→実は生きてましたは結構冷める展開であり、原作から不満でもあったのでここを変えてくれたのは良かった(映画だと尺もないので死亡→実は生きてました展開をやったとしても超高速になりそう)
ただ、襲撃した雪代縁が道場に死体袋持ってきた時は「えっ!もしかして薫死亡シーンあるの!?」って思ってしまった。恐らく原作の展開知っている人なら皆思ったんじゃないかな。
中身が刀狩りの張だと分かった時の「お前なの」感が凄い。
緋村剣心と関係する者皆傷つける事が雪代縁の目的の1つだとしても、刀狩りの張の死体では緋村剣心も反応が難しいと思う。そのためにわざわざ重たい死体を担いでいたと思うと…人誅って大変である。
映画では「剣と心を賭してこの戦いの人生を完遂する」という答えを見出さぬままに決着をつけてしまった。ただまぁ、「人斬りの罪を償えるか否か」は難しい問いであり、「答えは未だ見つからないが、それでも間違った道に進んでいるお前は止めなくちゃいけない」という解は原作より無難な気もするし、逃げにも感じてしまう。
答えのない問いかけに対して答えを出すのは大変ではあるが、例えその答えが間違っていると感じたり、ズレていると考えたり、消化不良だと見なしても作品なりに1つの「答え」を出すのは真摯な行為だと僕は思うので、原作が1つの答えを出したように映画でも同じでなくていいから映画なりの答え出して欲しかったな。
長い原作を2時間ぐらいの尺でどう調理するのかが実写映画のポイントだと思うが、無理して原作再現せずに和月先生が単行本のおまけで書いていた雪代縁をターミネーターキャラにして、剣心に恨みを持つ集団VS剣心達ではなく、雪代縁1人VS剣心達にして、「復讐の執念でどこまでも剣心を追い詰めにくる存在」にしたら尺的にもピッタリだった気もする。
それにしても雪代縁は姉を殺された恨みから自分を鍛える為に中国に行き、何度も死線を乗り越えてギャングのトップに上り詰め、万を期して日本に帰国して復讐相手の人斬り抜刀斎と戦うなんて主人公みたいな奴である。しかもその復讐相手が人斬りをやめ、温かい家庭を作っている最中なのが最近の復讐劇の作品にありそう。
妙にうざい。原作だと読んでいてうざいと思う事なんて皆無だけど、実写だと妙にうざい。本当に妙にうざい。京都大火編だと志々雄に「誰だテメェは!?」と困惑させてたのは面白かったけれど、今作でも本筋には無関係なのにやたら話に入ってきて、口だけは頼もしいのに何一つ活躍できないのにタフなのでやたら戦うシーンが長いのがうざい。大人なのに小学4年生みたいなテンションなのが浮いていてうざい。原作とは違い戌亥番神も映画1作目に出てしまったので中ボスとの戦いもない(乾天門という限りなく戌亥番神であり戌亥番神ではない童貞を殺すセーターみたいは服着ているオリジナルキャラクターは出てきたけど、戦う相手は斎藤一)
左之助、ボロボロの状態で最後駆けつけてきたのに、特に活躍もないまま終わってしまったのはギャグなのか。
志々雄といい雪代縁といい剣心の因縁の敵に戦いを挑んで、異常なまでのタフネスさを発揮するのは何なんだ。こわ…。
- 蒼紫様の退場の仕方は裏を考えてしまう
伊勢谷友介さんが大麻所持で逮捕されてしまいポスターから消えてしまった。ただ本編では登場するのだが、無名異との戦いの最中、瓦礫から老人守って映画からログアウトしてしまう。生死不明である。いや、生きているか死んだかだけでも教えて!?ってなる。代わりに操ちゃん演じる土屋太鳳が大活躍するのだが、これは伊勢谷友介さんが大麻所持で逮捕されたから撮り直したのか?とか色々考えてしまう。まぁ、土屋太鳳のアクションは本当に良かった。
あと、ヴェノム無名異なんてどう実写化したらいいんだ。ソニー呼んでくれ!って言われそうな案件も、いい感じに実写化に落とし込んでいて面白いので是非観て欲しい。
- 剣心の十字傷のつき方がOVA版なの良かった。
- 瀬田宗次郎再登場
今作のサプライズであろう瀬田宗次郎の再登場。
シンエヴァに続いて神木隆之介のサプライズである。しかも、剣心との共闘。
剣心に負け、生き方を探し「るろうに」になったと語る彼が振るうのは血刀ではなくその鞘。
この共闘のシーンは本当に良かった。映画を初日で観て良かった点でもある。
最後に
重力無視に飛び回る上下戦闘シーンは本作でも健在。冒頭の駅構内パルクール戦闘も素晴らしいし、けん玉アクションも新しくて良かった。
ただ同時に邦画アクションシーンは『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY』が一つの頂点だったなと思ってしまうというか、あの感動は未だに忘れられない。
今作は完結編2部作の第1弾で、第2弾の『るろうに剣心 最終章 The Beginning』で追憶編をやるらしいが、今作でも結構追憶編の内容やっていて、もう観た気がしてしまう。youtubeによくあるダイジェクト映画みたいなノリで追憶編観た気分である。
2020年の夏公開予定だったが、コロナの影響で延期。十分な余裕を持って年をまたぐ覚悟を決めたとパンフレットに書いてあったが、まさかまさかの公開して直後に再び緊急事態宣言である。本当に可哀想。
少しでも映画館に人が増えたらいいなと思いながらこの記事を終えたい。
最後まで読んで頂きありがとうございました。